▲園田、姫路競馬の名物アナウンサー・吉田勝彦さんについて改めてその存在の大きさを語ってくれました。
1月9日、園田、姫路競馬の名物アナウンサー・吉田勝彦さんが、64年にも及ぶレース実況人生にピリオドを打ち、園田競馬場で引退式が行われました。もちろん小牧騎手も駆けつけ、最後の『吉田節』を堪能。「吉田さんは、僕の軌跡をずーっと見てくれていた人」という小牧騎手。改めてその存在の大きさを語ってくれました。(取材・文:不破由妃子)
定番のキャッチフレーズ「泣き虫だけど、弱虫じゃない」
──今回は、昨年12月のエイシンヨッシーでの勝利について、こんな質問から。「エイシンヨッシーの2勝目、おめでとうございます! 強かったですね! デビューから手綱を取る馬での勝利は特別でしょうか? 上のクラスでの手応えも含めてお聞きしてみたいです」。
小牧 そりゃあ特別やね。どんな馬でも勝てばうれしいけど、ずっと乗ってきた馬は余計にね。
──12月22日の昇級初戦は着順こそ8着でしたが、最後まで伸びていたし、悲観する内容ではなかったと思います。いきなりクラスにメドが立った一戦だったかと。
小牧 そうやね。あのレースは展開が向かなかった。ペースが遅かったからね。それでも最後まで止まってないし、展開ひとつやなと思った(クラス2戦目となった1月18日の京都8Rは、最内から先行して4着)。感触としては、2勝クラスでも十分にやれる。力があるのは間違いないし、慣れたら絶対にいい競馬ができるわ。それにしても、早く片目を開けたいね。
──そうですね。ファンはその瞬間を今か今かと待ってます。さて、1月9日には、園田、姫路競馬の名物アナウンサー、吉田勝彦さんの引退式に出席。花束を渡していらっしゃいましたが、やはり込み上げてくるものがあったのでは?
小牧 そうやねぇ。なんせ僕がデビューしたときから、ずっと見てくれていた人やから。
──園田での実況キャリアは64年で、ギネスにも認定された偉大な方。なにしろ、今年61歳になる川原正一騎手が生まれる前から、兵庫一筋でレースの実況をされてきたんですものね。
小牧 そうやで。僕がデビューしたとき、すでに50歳手前だったんやから。
──「泣き虫だけど、弱虫じゃない」。これが吉田さんならではの小牧さんのキャッチフレーズですよね。
小牧 昔からね。もう定番や(笑)。
──この言葉には、小牧さんをずっと見続けてきたからこその愛を感じます。
小牧 うん。18歳でデビューしたときはもちろん、重賞を初めて勝ったときも吉田さんが実況してくれたし、JRAに移るまでの僕の軌跡をずーっと見てくれていた人だから。まぁなんでも知ってるよね。一緒にお酒を飲む間柄でもあったし。
──吉田さんは、アナウンサーでありながら、朝の厩舎作業もお手伝いされていたそうですね。その合間にジョッキーと話をすることで、性格をつかんでいったとか。
小牧 そういう時代は、僕は全然知らんねん。年代が違うと思う。たぶん、吉田さんがもっと若い頃の話だと思うよ。僕が園田で乗っていた頃には、もうそういうことはしていなかったと思う。確か40代の頃に目の病気をして、右目が不自由だったはずやから。
──そうなんですね。引退式の前後に、個人的にお話されたりしたんですか?
小牧 いや、あの日は吉田さんが忙しそうだったから、僕はスッと帰りました。ファンの人たちもたくさん残っていて、対応してらしたからね。あんまり邪魔したらアカンなと思って。
──引退に際し、ユーザーからも質問がきていまして、「騎手とアナウンサーは、繋がりがありそうでないのかなと思っていたのですが、吉田さんは特別なのでしょうか? 騎手の心理をも解説するような実況ですが、実際に騎手心理を突いていたのでしょうか?」。
小牧 確かに吉田さんは、「今、こう思ってるんじゃないかな…」と心理を読みながら実況していたと思うよ。ズバリ、言い当てられたときもあったし、もちろん全然違うときもあったけど(苦笑)。ただね、交流があるからこそ出てくるフレーズは間違いなくあったと思う。なんにせよ、「本当にお疲れさまでした」という気持ちでいっぱいやね。園田にとっては大きな存在やった。
──寂しいですが、小牧さんとの交流はまだまだ続いていくと。
小牧 もちろん。80歳を超えているけど、本当に元気やから。今まではなかなか時間が合わんかったけど、これからはまた飲みに行きたいな。
「本当にお疲れさまでした」という気持ちでいっぱいやね。