♪やる気スイッチ、君のはどこにあるんだろう〜?♪そんなフレーズを使った個別塾のCMがかつてありましたが、思わず脳内で再生したくなる走りの馬が高知競馬にいます。ウォーターマーズ、セン6歳。JRAで3勝を挙げるも、その性格からなかなかレースで結果を残せず、昨夏に高知に移籍しました。
そこで出会った西川敏弘騎手は渾身の追いっぷりが魅力的なジョッキー。高知移籍後は約半年で重賞2勝、13戦して未だ馬券圏内を外さない堅実な走りをするようになりました。ウォーターマーズのやる気スイッチを探し当てたかもしれない!?西川騎手とのお話です。
馬が心底疲れる走りをまだ見せていない
先週16日(日)、重賞・だるま夕日賞(高知、1600m)。西川騎手はスタートから出ムチを入れると、1600mの最初から最後までずーっとウォーターマーズを追い続けました。4コーナーは距離ロスをなくすため砂の深いインコースを通ると、先頭に立っていたサクラレグナムを直線半ばで捕らえ、スペルマロンの追撃をアタマ差退けて重賞2勝目を挙げました。
▲重賞2勝目を挙げたウォーターマーズ(提供:高知県競馬組合)
「やった!やったー!」
西川騎手は目を輝かせて喜びました。
「サクラレグナムとスペルマロンが出遅れたのはすぐに分かって、ウォーターマーズは4番手のいい位置が取れたので『ひょっとしたら?』と思いました」
大晦日の高知県知事賞(2400m)では一旦は先頭に立ち、勝ったかと思ったところをスペルマロンに差し返されて2着。しかし、今回は先頭に抜け出してもある程度しっかり走っているように見えました。
「メンコをしたんです。調教はすごく真面目やのにレースでは全然真面目じゃないから、『怖がる面があるから、逆にメンコを着けてみたらどうでしょうか?』って(大関吉明)先生に言って着けてもらったら、大正解!よかったぁ〜真面目に走ってくれました」
抜け出して遊ぶこともあれば、何かを怖がったり物見をすることもあるといいます。
「前走の黒潮スプリンターズC(1300m)もゴール100mくらい手前で何を見たのか分からないけど、急に首を上げてしまって。それでもう止めてしまったんですが、今回はそれがありませんでした」
騎手歴約33年、通算3000勝超えの西川騎手でさえ「スタートからフルパワーで行ってもつ馬なんて今まで経験したことないです。それでも最後はまた伸びますし、物見をする余裕もあります。ハフハフして『心底疲れました』って感じの姿を見たことがなくて、本気で走ったらどれだけ走るねん!と、能力が未知数です」と目を丸めます。
▲かつて騎手会長も務めた西川騎手。昨年は地方通算3000勝を達成し、NARグランプリ特別賞を受賞
素質も性格もお母さん譲り!?
実は、ウォーターマーズの母ウォーターポラリスも性格が少し難しい馬でした。1999年、武豊騎手を背に新馬勝ちし、3歳(現2歳)時にはフェアリーS(GIII)で2着と素質を秘める一方、古馬になってもムチが入ると尻尾を振って嫌がる素振りを見せることがありました。
ウォーターマーズはお母さんが秘めていた高い素質も性格もしっかりと受け継いだのでしょう。
一部ファンの間ではウォーターマーズが出走時、「西川騎手の体力がどこまでもつかも見どころ」と言われるほど、スタートからゴールまで追いっぱなしですが、最近は「この馬に乗るようになってちょっと体力がついてきたかなって思います」と50歳になったいぶし銀は笑いました。
「距離は短い方が追う時間が短く済みますが、ウォーターマーズにとっては1600m以上がいいのかなと思います。高知の馬場は距離が長くなれば上がりが遅くなるというのが定番。上がり勝負の1300mや1400mよりも1600m以上に答えを求められるのかなって思います」
実際、重賞2勝はともに1600mでした。一方で、前走のように1300mの重賞でも2着など距離を問わず堅実に走ることも確か。次走は3月10日(火)、黒船賞(JpnIII、1400m)を予定されています。
「どういう流れになるか分からないですけど、できればパサパサの良馬場で前が止まるような馬場になってほしいですね。ウォーターマーズは砂が少々深くても大丈夫です」
JRA勢も参戦するため、例年通りであれば序盤からペースが速くなるでしょうが、1周まるまる追い通しの西川騎手の熱意に応えて、ウォーターマーズのやる気スイッチが入ることを期待しています。
▲ウォーターマーズのやる気スイッチが入ることを期待しています!(提供:高知県競馬組合)