東京・中山競馬場共に勝ち鞍を持つウインブライト(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規
今週から、今年も始まる中山芝1800m重賞短期集中大特集。その象徴とも言える1番手は、古馬G2の中山記念。1999年までは2回中山の3週目、弥生賞後の施行でしたが、2000年に2回中山の初週に組み込まれてからは、待ちに待った春競馬の幕開け、いかにも中山巧者が有利そうなイメージの重賞になりました。
たしかにその認識は間違ってはいません。2000年以降、中山記念の出走馬、延べ258頭を“該当レース前に中山競馬場で勝ち鞍を持っていた馬”と“中山勝ち鞍を持っていなかった馬”に分けてみましょう。
勝ち鞍あり 163戦【17-11-12-123】勝率10% 単勝回収率92%
勝ち鞍なし 95戦【 3- 9- 8- 75】勝率 3% 単勝回収率15%
やはり中山競馬場に勝ち鞍を持つ馬の優位は明らかです。
しかしさすがに中山巧者が集う中山記念、出走馬の2/3ほどが中山勝ちの条件をクリアしており、これだけではあまり有用なデータとは言えません。それでもうひと要素、ここからさらに“該当レース前に東京競馬場で勝ち鞍を持っていた馬”と“東京勝ち鞍を持っていなかった馬”に分けてみます。
勝ち鞍あり 110戦【14- 5-10-81】勝率13% 単勝回収率127%
勝ち鞍なし 53戦【 3- 6- 2-42】勝率 6% 単勝回収率 19%
このレベルのG2を勝ち切るには、中山適性だけでは不十分であり、東京でも勝てるぐらいの能力や多様性が求められていることが分かりますね。中山記念というレース自体、スローペースになりやすいことも影響しているのでしょう。
これら2つを統合し、該当レース前に“中山と東京競馬場共に勝ち鞍を持っていた馬”と“中山と東京競馬場共に勝ち鞍を持っていなかった馬”に分類した場合、下記のようなデータが検出されることになります。これならかなり有用なデータになったと言えるのではないでしょうか。
勝ち鞍あり 110戦【14- 5-10- 81】勝率13% 単勝回収率127%
勝ち鞍なし 148戦【 6-15-10-117】勝率 4% 単勝回収率 16%
そこで今年の特別登録馬と照らし合わせてみたところ、前者に分類されるのはウインブライト、エンジニア、ダノンキングリーとマルターズアポジーの4頭。後者に分類されるのはインディチャンプ、ゴールドサーベラス、ソウルスターリング、ペルシアンナイトとラッキーライラックの5頭となりました。
ちなみに中山と東京競馬場どちらにも勝ち鞍のない馬は2000年以降、44戦【1-2-3-38】勝率2% 単勝回収率4%と、散々な成績。2018年の1番人気5着ペルシアンナイトや3番人気8着ヴィブロスをはじめ、トゥザグローリー、レッドデイヴィス、リーチザクラウン、リルダヴァルなどの人気馬を多数そろえても1勝止まり(2004年のサクラプレジデント)というのは、これも特筆に値するデータではないでしょうか。今年の該当馬はペルシアンナイトだけですが。
■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、 『ラップギア』 と 『瞬発指数』 を構築し、発表。2008年、単行本 『タイム理論の新革命・ラップギア』 の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。 『ラップギア』 は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。