休養をひとつの眠りととらえると面白い見方ができる
春眠あかつきを覚えずとうたった孟浩然という人物は、睡眠の効能をよく知っていたと思う。あかつきの春眠が奪われると、心の疲労がたまり、いらいらがつのる。その処方せんの一つに快い眠りがあり、その効能に記憶増進があるというから、春眠はおろそかにできない。眠いときには眠るのが一番、とても自然には逆らえないということになる。
では、春はなぜ眠いのか。季節が冬から夏へ変わる境目にあるこの時の自然の変化に、体がついていけないからだと言われている。徐々に自然環境の変化にあわせていくしかないということ。快い眠りは、そのために必要なことということになる。
見方をかえて、競走馬の休養をひとつの眠りととらえると面白い見方ができる。そこにどんな効能を見い出すか。それには、個々の事情が優先される。その事情を知ることで、そこから見えてくるものがはっきりする。生きものという観点から捉えることで、この休養の効果に思いを寄せ、ひいては、レースの行方を探ることができる。
例えば、中山記念。三連覇を狙うウインブライトは、ここが得意の舞台。この先に今年もドバイ、香港の国際レースがひかえていて、リフレッシュ効果を考えてのことだが、落馬負傷の松岡騎手からミナリク騎手への乗り替わりを、この休養期間でどう克服できているか。重賞初勝利がかかるミナリク騎手の意欲は想像に難くないが。
メジロドーベル以来20年ぶりに2歳女王のエリザベス女王杯優勝を達成したラッキーライラックは、暮れの香港ヴァーズ2着で復活を印象づけた。ステイゴールドの産駒オルフェーヴルの名を高めた馬だが、その全兄ドリームジャーニーを父に持つミライヘノツバサが最低人気でダイヤモンドSを勝ったばかり。この休養は、ラッキーライラックには追い風になっているように思える。
中山記念1800米は、マイル路線か中距離路線か、今後を占う試金石と思えるのが、4歳馬のダノンキングリー。皐月賞3着、ダービー2着の実力馬は、このレースの内容次第でこの先の進路が見えてくる。その瞬発力は、開幕週で威力を増している。
それぞれがテーマを見据えて休養を取ってきた。ここが正念場と思える馬に、より注目してみたい。
この時期まだ1勝の身で重賞を戦うものの行方が気になるが、阪急杯のクリノガウディーがその一頭。切れる脚が初の1400米戦でどう発揮されるか。マイル路線で好走するもあと一歩足りなかったが、一ハロン短くなって折り合いがつけやすいと考えられるとは陣営の狙い。
どちらも観客のいない静かな雰囲気の中、ひたすら目標に立ち向っていくだけだ。