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JRA育成馬展示会が急遽中止に

  • 2020年04月16日(木) 18時00分

騎乗供覧は例年通り実施、良血馬が順調さをアピール


 去る4月14日(火)に予定されていたJRA日高育成牧場の育成馬展示会が、急遽中止になった。それが決定したのは、12日(日)午後のことで、私宅に連絡が入ったのは13日午後である。JBBA日本軽種馬協会からのFAXによる通知であった。

 天下のJRAである。平時ならば、2日前に慌ただしく中止を決定し、前日に知らせるなどという措置は取らないはずだが、今の新型コロナウイルス騒動が各方面にどれだけ混乱を招いているのかが窺える。

 しかし、展示会は中止になっても、各馬の調教進度を確認する上で欠かせない騎乗供覧は、日高育成牧場に隣接する1600mダートコースにて例年通り実施されると知り、開始時刻を確認して現地に行ってみた。

 JRA関係者と、近隣の育成牧場や生産牧場のスタッフなどほんのわずかの見学者が来ていただけ。本州方面からの調教師や馬主の来場もお断りしている、とのことであった。

生産地便り

騎乗供覧の見学者は数えるほどしかいない


 本来ならば、自らの手がけた生産馬との再会を楽しみに多くの生産牧場が家族連れで訪れ、またブリーズアップセール前の下見を兼ねて馬主や調教師の姿も大勢見られる行事だが、今年に限ってはいささか様子が違う。改めて、新型コロナウイルス感染拡大の深刻さについて考えさせられた。

 騎乗供覧は、映像収録のために、アナウンスもいつも通りに行なわれた。開始時刻は午前10時20分。今年は牡2班で計13組25頭、単走が1頭いる他は全て2頭併せである。また牝馬は、2班14組だが、単走が何頭かいるのでこちらも25頭だ。

 1班は1〜8組で編成され、12頭〜13頭がグループで馬場入りする。いつもと雰囲気が違うことに対してやや過敏になっている馬もいて、まだデビュー前の若い2歳馬であることが伝わってくる。

 各馬は、常歩でゆっくり馬場入りした後、軽めのキャンターで隊列を組みながら向こう正面まで移動し、そこから2頭ずつスタートする。左回りのコースを徐々にスピードを上げ、コーナーを回り直線に入った残り400m(2ハロン)地点から計測を始める。最初の1ハロンは概ね13秒台で、しまいの1ハロンはもう少し加速して11秒台〜12秒台で追う。騎乗者は大半がJRAの育成スタッフだが、一部には例年通り、BTC育成調教技術者養成研修第37期生たちが騎乗し、1年間の訓練の成果を見せていた。

生産地便り

隊列を組んでの馬場入り


生産地便り

BTC研修生(右)が訓練の成果を発揮する場でもある


生産地便り

BTC研修生(右)の懸命に追う初々しさが印象的


 とはいっても、まだまだ半人前なので、併せ馬の内側で騎乗し、外側を併走する育成馬にはJRAスタッフが騎乗している。それでも、ハロン12秒台、11秒台のスピードに対応しながら騎乗姿勢を維持しつつ、懸命に追う初々しい姿が印象的であった。

 北海道トレーニングセールでは、毎年、平均するとかなり速いタイムを計測しているが、JRA育成馬の場合はそれほどタイムを出さない。むしろ、騎乗者とのコンタクトや走行フォーム、バランスなどをより重視しているため、無理に速い時計にはならないようにしている。

 なので、この騎乗供覧のタイムは、後々の実戦にはさほど結びつかないのだが、一応の結果について簡単に触れておくと、牡馬の最速は、1班1組目に登場したサブラタの2018(父リーチザクラウン、清水牧場生産)とアドバンスクラーレの2018(父ドゥラメンテ、那須野牧場生産)の出した2ハロン23秒7。また終いの1ハロンでは1班3組目のダンスフェイムの2018(父ルーラーシップ、新井昭ニ牧場生産)の11秒3が最速タイムであった。

生産地便り

牡馬最速の班であるアドバンスクラーレの2018(左)とサブラタの2018(右)


生産地便り

牡馬の1F最速のダンスフェイムの2018(右)


 牝馬では4班4組目に登場したトウカイライフの2018(父ブラックタイド、広富牧場生産)の23秒5が最速で、さらに1ハロンでも同馬の11秒2が最も速かった。牡牝を通じて全50頭中でも、このトウカイライフの2018の走破時計が最速である。

生産地便り

全馬通じて最速タイムを出した牝馬のトウカイライフの2018(右)


 因みに本馬の半姉ルーチェデラヴィタはキズナ産駒のJRAブリーズアップセール出身馬で、現3歳。栗東・西村真幸厩舎に所属し、デビュー戦、2戦目を連勝し現在6戦2勝の成績を残している。本馬にも姉に続く活躍の期待がかかる。

 なお、今年のブリーズアップセールは、コロナウイルス感染拡大に配慮し、中山競馬場でのセールは取り止めになり、28日〜30日の3日間、メールによる入札方式での売却へと変更された。

 また、来る5月12日に開催予定であった北海道トレーニングセールも、仄聞するところによると、札幌競馬場での開催は中止されることになったと伝えられる。こうして徐々に生産地関連でもコロナウイルス感染拡大の影響が出てきている。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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