▲ドゥラメンテで2015年のダービーを制した際のミルコ騎手 (撮影:下野雄規)
先日のNHKマイルCをラウダシオンで見事勝利したミルコ騎手。自身にとっては同レース連覇という、二重の快挙となりました。GI勝利の喜びの声は、後日お届けいたします。
今回はミルコ騎手が過去に騎乗した名馬を語る「ベストパートナー」。間もなくダービーというタイミングに合わせ、2015年のダービーを制したドゥラメンテを、2週にわたって振り返ります。
クラシックの本番からコンビを組んだ、ミルコ騎手とドゥラメンテ。迎えた皐月賞。「これは絶対に届かない…」、誰もがそう思った4コーナーから、衝撃すぎる伸び脚で勝利。一冠目を力で勝ち取ったコンビは一気に主役へと躍り出て、ダービーへと駒を進めます。
(取材・文=森カオル)
※このインタビューは電話取材で実施しました。
芝での強さは、今も変わらずNo.1ホース
──今月振り返っていただきたい『ベストパートナー』は、間もなくダービーというタイミングに合わせまして、いよいよドゥラメンテです。
ミルコ いやぁ、ドゥラメンテはすごい馬だったねぇ。芝での強さは、それまでに乗った馬のなかで間違いなくNo.1だったけど、今でもそれは変わらない。
いっぱいいい馬に乗せてもらってきたけど、2400mでは今も一番強いね、あの馬が。ただ、初めて乗ったときは、「普通だな」と思った。乗った瞬間はね。
──そうなんですね。初めて騎乗されたのは、確か皐月賞の最終追い切りでしたね。
ミルコ そうです。関東まで乗りに行きました。背中自体は、すごい馬っていう感じじゃなかった。
でも、そのあとキャンターに行ったら、もうすごい跳びで。切れもすごくて、「この馬、ヤバイ!」って興奮しました。それからはもう、ずーっと楽しみ楽しみって思ってたね。
──調教以前に、同じレースで走ったこともなかったわけですが、ドゥラメンテのレースぶりについてはどんな印象を持っていましたか?
ミルコ 競馬を見る限り、まだ少し子供っぽいのかなと思ってた。でも、皐月賞に出ると決まったら、(武)豊さんとかみんなが「あの馬は強いよ」って教えてくれましたね。
やっぱり未勝利、500万とすごくいい勝ち方をしていたから。調教でもビックリしたけど、実際に皐月賞で乗って、さらにビックリしました、僕。
──4コーナーでは大きく膨れてしまいましたが、本当に強かった。
ミルコ あの4コーナーは…、まぁ馬がまだ若かったこともありますね。僕、4コーナーのところで外に出したくて、ちょっと動かしたんだけど、馬も早く動きたかったみたいで。でも、まさかあんなに飛んでいくとは思わなかったね。
右回りは皐月賞が初めてだったかな。確かコーナーを回り切る前に、早めに左手前に替えちゃったから、バランスが崩れて真っ直ぐに行っちゃいましたね。直線じゃなくてコーナーだからね。あんなスピードで手前を替えたら、バランスを維持するのが苦しくなるね。
──普通の馬なら万事休すといったところです。前ともだいぶ離れてしまいましたし。
ミルコ うん、ヤバかった。絶対に届かないと思ってた。(福永)祐一くんの馬(リアルスティール)もすごくいい馬で、あのときもいい競馬をしてました。中山の直線は310mでしょ? これは絶対に届かない…と本当に思ったね。
──誰もがそう思ったはずですが、最後の1ハロンでビュン! と伸びて。あの脚は衝撃でしたね。
ミルコ いやぁ、あの脚は忘れられないね。ホントに楽勝だった。乗ってた僕が一番ビックリしたかも。
▲「万事休す」からの皐月賞勝利 (撮影:下野雄規)
ダービー直前の葛藤…「もうやめて!」
──皐月賞は、サトノクラウン、リアルスティールに次ぐ3番人気でしたが、皐月賞のあの勝ちっぷりで、俄然“一強”ムードが高まりましたね。
ミルコ 僕、ものすごく緊張してましたね(苦笑)。ネオユニヴァースのときは、まだそれほどプレッシャーがなかった。なぜならまだ若かったし、短期免許で乗りにきていた頃だったから、レースの週の水曜日にきて調教に乗って、あとは競馬に乗るだけだから。
でも、ドゥラメンテのときはJRAのジョッキーになっていたから、毎週毎週水曜日、木曜日と調教に行くでしょ? その度にマスコミがいっぱい集まってきて…。みんな「楽勝でしょ? ダービー絶対に勝つでしょ?」みたいな感じで、本当につらかった。「もうヤダ!」と思ってたね(苦笑)。競馬に絶対はないのに。
──それはもう、ダービーで本命馬に騎乗する騎手の宿命のような…。
ミルコ そうかもしれないけど、ホントに「もうやめて!」って思ってた(苦笑)。だって、2400mのスタートはお客さんの目の前だし、いろいろ不安がありましたからね。ホントにプレッシャーがすごかった。
──そんななかで迎えたダービー。レースにはどんな思い出がありますか?
ミルコ テンションが高かったし、前半も折り合いが難しかったね。あとはまた4コーナーが…。岩田くん(2着サトノラーゼン)が内に行ったとき、僕、ちょっと焦ってましたね。もうちょっと我慢したかったけど、思ったより早く動くことになりました。
──それでもアッサリと前を捕らえて、着差以上に圧倒的な内容でした。
ミルコ うん、ムチ一発だけでレースレコード。楽勝だったね。スムーズだったら、もっと速く走れていたと思う。
──そういえばあのダービーでは、ミルコ騎手ならではの力強いガッツポーズがなかったような。
ミルコ ガッツポーズはあんまりしたくなかった。強かったのは馬で、僕がどうこうで勝ったわけじゃないから。あとは皐月賞のとき、「ミルコさん! ガッツポーズ早いよ!」って怒られたし(笑)。
──皐月賞のガッツポーズは、確かに早かった(笑)。
ミルコ そう、それもあって…(苦笑)。それに、ダービーはやっぱり夢の舞台。ゴールの瞬間も、いろんなことを考えてましたね。だから、ガッツポーズのことはそんなに考えられなかった。一度勝っていたとしても、やっぱりダービーは特別。ダービーだけは違うね。
▲自身2度目のダービー制覇を果たしたミルコ騎手 (撮影:下野雄規)
(次週の後編へつづく)