先週の血統ピックアップ
・5/31 日本ダービー(GI・東京・芝2400m)
好位を追走したコントレイルが直線で外から伸び、サリオスの追撃を振り切って二冠を達成しました。福永騎手曰く「直線で遊ぶところがあった」。それでいてゴール前はサリオスとの差を広げており、底知れぬ能力を印象付けました。無敗の牡馬二冠達成は自身の父ディープインパクト(2005年)以来15年ぶり。ディープインパクト産駒は10世代で6頭のダービー馬が誕生したことになり、勝ち馬の数で父サンデーサイレンス、戦前の名種牡馬トウルヌソルのダービー記録に並びました。
コントレイルの馬体重は460kg。ディープインパクトの他の一流馬に比べると小柄な部類で、パドックでも決して目を惹く馬ではありません。2代父サンデーサイレンスはしなやかなバネを持つ細身の薄い馬体で、大柄でゴツい馬が目立つアメリカの一流馬のなかでは異質な存在でした。父ディープインパクトは引退レースの馬体重が438kgと、まるで牝馬のように華奢な馬体でした。コントレイルは大柄でも筋肉量が豊富なわけでもありません。だからこそ“サンデーサイレンス王朝”の正統な後継馬ではないか、という気がします。この系統が伝える軽さや瞬発力といったものを、その馬体やレースぶりから濃厚に感じ取ることができます。
秋は国内専念とのこと。血統的に長距離向きとはいえないのですが、能力の絶対値が高く、折り合いがつくので菊花賞でも勝ち負けに持ち込めるでしょう。天皇賞・秋に向かう場合はアーモンドアイと雌雄を決することになります。どちらもテレビではなくスタンドで味わいたい大一番です。
・5/31 目黒記念(GII・東京・芝2500m)
後方に控えたキングオブコージが直線で馬群を割って抜け出し、初めての重賞タイトルを手にしました。1勝クラス→2勝クラス→3勝クラス→重賞と4連勝。昭和末期の名馬タマモクロスを思い出させる出世ぶりです。
ダートの下級条件でくすぶっていたタマモクロスは、芝に転じてから出世街道を走り始め、ノンストップでGI馬に上り詰めました。キングオブコージもマイル戦を中心に使われていたころは冴えない馬でしたが、2000m以上に距離を延長したところ一変して走り始めました。
父ロードカナロアは芝1200〜1600mがベスト、ただし、配合次第でアーモンドアイやサートゥルナーリアのような2000m以上を苦にしない馬を出します。ヨーロッパのスタミナ血統サドラーズウェルズを抱えたロードカナロア産駒は、芝2400〜2500mで[3-1-0-1]。秋にはGI戦線で活躍しそうです。
今週の血統注目馬は?
・6/6 三木特別(2勝クラス・阪神・芝1800m)
芝1800mはどの競馬場でもディープインパクト産駒の成績が優れているのですが、阪神競馬場も例外ではありません。2010年以降、当コースで産駒が20走以上した63頭の種牡馬のなかで連対率29.2%は第3位。1位ジャスタウェイ(32.1%)は出走数28回、2位ホワイトマズル(31.0%)は42回ですが、ディープインパクトは699回。これだけ走ってなおこの連対率を維持しているのは非凡です。当レースにはティグラーシャが出走します。
過去、阪神芝1800mでは4回走って[1-3-0-0]。前走、京都芝2000mの御室特別は3着に敗れたものの、着差はクビ、ハナとわずかでした。デビュー以来8走して7回馬券圏内に入っている安定性が持ち味。今回も馬券の軸としての信頼性は高いでしょう。
今週の血統Tips
新型コロナウイルスの影響で中断していたヨーロッパ競馬は、5月11日にフランスで再開されました。そして本日(6月1日)、イギリス競馬がニューキャッスルで再開されます。順調ならば6月6日に英2000ギニー、7日に英1000ギニー、7月4日に英ダービーとオークスが行われます。上記の4レースはいずれも200回以上の歴史を誇る大レースで、二度の世界大戦でも中止されたことがありません(秋に行われる英セントレジャーは1939年に中止)。
先週、日本ダービーの種牡馬最多勝記録について触れましたが、英ダービーは19世紀のストックウェルが6回という記録を作っており、いまだに破られていません。英愛リーディングサイアー11回の現役種牡馬ガリレオが4回制しているので、あと2回で追いつきます。今年はモーグル(Mogul)という馬が前売り3番人気。英インターナショナルSとパリ大賞の勝ち馬で英ダービー3着馬でもあるジャパンの全弟です。チャンスはあります。