▲いま大注目の杉山晴紀調教師(C)netkeiba.com
この春、無敗の二冠馬となったデアリングタクト。管理するのは杉山晴紀調教師、38歳。厩舎を開業して5年目の新進気鋭の調教師です。圧倒的な強さを見せる3歳牝馬を育てる一方、今週24日にはケイティブレイブで帝王賞(JpnI、大井2000m)制覇も目指します。デビューから管理する3歳牝馬と、すでにGI馬だった5歳時に引退厩舎から引き継いだダート馬。対照的な2頭がより力を発揮できるよう、どんな調教をしていったのでしょうか。さらに、話はいま注目のケイティブレイブ&長岡禎仁騎手コンビにも及びます。
(取材・構成:大恵陽子)
※このインタビューは電話取材で行いました。
経験を積みながら…突然迎えた厩舎開業
――デアリングタクトでオークス制覇、おめでとうございます。無敗の二冠馬誕生もさることながら、とても強いレース内容でした。
杉山晴紀調教師(以下、杉山師) ありがとうございます。内に閉じ込められて、1〜2コーナーで接触があったり、まぁまぁ激しいマークに遭いましたね。直線も外に出させてもらえなくて、全体的に見て「よく勝ったな」っていうのが本音です。レースを使うたびに想像を超えた力を出してくるので、改めてすごい馬だなって感じます。
――現在は夏休みですか?
杉山師 6月2週目に福島県のテンコートレセンに行きました。少しゆっくり休んで……と言っても、10月に秋華賞があるので、多少リフレッシュさせますが、逆算すると、あんまり緩ませずにいきたいと思っています。秋華賞の前にステップレースを挟むことはもちろん視野には入れていますが、そのまま行くかどうするか、現時点ではまだハッキリとは決めていません。栗東トレセン近郊の宇治田原優駿ステーブルに戻ってきた時の様子を見て具体的な予定を決めたいと思います。
――デアリングタクトは個人経営の長谷川牧場生産ということでも話題になりました。杉山厩舎の管理馬は他にもいろんな個人牧場の生産馬が集まっていますね。
杉山師 おかげさまで、いろんな馬主さんや牧場さんから声をかけていただいて、ありがたいです。
▲秋の活躍に期待がかかるデアリングタクト(C)netkeiba.com
――しかし2016年10月の開業は急遽だったんですよね?
杉山師 突然でした。通常は技術調教師を1年経験して開業なんですけど、馬房の空きがなく「2年待ってほしい」と言われていました。ところが、日吉正和調教師が勇退されることになって、1年待たずして開業することになりました。
――調教助手時代の多くを過ごした武宏平厩舎では調教師の補佐業務をかなりされていたとか?
杉山師 武先生からはいろいろな業務を任せていただいていたので、毎日の調教メニューやどのレースに使うとか、ジョッキーの手配をしていました。晩年、武先生はご病気をされて、その間は馬主さんへの連絡もさせていただいたり、毎週牧場に馬を見に行って、トレセンとの入れ替えの段取りもしました。
――調教助手時代には2009年菊花賞を制覇したスリーロールスの調教も担当されていたとのことですが、当時の経験がいまに生きていることはありますか?
杉山師 一つの成功体験を(スリー)ロールスでさせてもらったんですけど、あくまで馬が違うので、その日その日で「この馬には何がベストなのか」っていうのを考えながら調教しています。馬は本来、集団動物なので、落ち着いた環境でトレーニングができるよう基本的にはみんなで一緒に調教しています。あとは1頭1頭、ステージやキャラクターが違うので、それぞれに合わせて細かくメニューは組んでいるつもりです。そういったことの先に「一番いい状態で競馬に臨めること」があるのかなと考えています。
最低人気2着! フェブラリーS激走に隠された起爆剤
――24日の帝王賞に出走予定のケイティブレイブは目野哲也厩舎の解散に伴い、2018年3月に転厩してきました。実績のある古馬を引き継いで調教していくというのは、2歳新馬を育てるのとは様々な違いがありそうです。
杉山師 そこはやっぱり違いますよね。ケイティブレイブについて声を掛けていただいた時は楽しみもありましたけど、GIを勝っていた馬なのでプレッシャーの方が強かったです。明け5歳で、ちょうど脂が乗ってきた充実期。GIを勝って当たり前っていう状況でした。
――引き継いだ当初はどんな風に調教を進めていかれたんですか?