脚の速すぎるラッキーライラックに危険の香り?(c)netkeiba.com
宝塚記念は脚の遅い馬が有利。
競馬は脚の速さを競う競技であり、こう言ってしまうと奇異に感じるかもしれませんが、そういったレースは確かに存在します。その代表格が(過去10年)『1〜3着馬の上がり3ハロンタイム平均』が35秒0の有馬記念であり、そしてそれ以上に遅いのが35秒5の宝塚記念なのであります。
■宝塚記念(過去10年)1〜3着馬の上がり3ハロンタイム
2010年1着ナカヤマフェスタ 35秒8
2010年2着ブエナビスタ 36秒3
2010年3着アーネストリー 36秒6
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2011年1着アーネストリー 35秒1
2011年2着ブエナビスタ 34秒5
2011年3着エイシンフラッシュ34秒7
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2012年1着オルフェーヴル 34秒7
2012年2着ルーラーシップ 35秒4
2012年3着ショウナンマイティ35秒0
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2013年1着ゴールドシップ 35秒2
2013年2着ダノンバラード 36秒2
2013年3着ジェンティルドンナ35秒9
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2014年1着ゴールドシップ 35秒2
2014年2着カレンミロティック35秒8
2014年3着ヴィルシーナ 36秒3
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2015年1着ラブリーデイ 34秒8
2015年2着デニムアンドルビー34秒0
2015年3着ショウナンパンドラ34秒7
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2016年1着マリアライト 36秒3
2016年2着ドゥラメンテ 36秒1
2016年3着キタサンブラック 36秒8
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2017年1着サトノクラウン 35秒4
2017年2着ゴールドアクター 35秒4
2017年3着ミッキークイーン 35秒5
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2018年1着ミッキーロケット 35秒8
2018年2着ワーザー 35秒3
2018年3着ノーブルマーズ 36秒1
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2019年1着リスグラシュー 35秒2
2019年2着キセキ 35秒8
2019年3着スワーヴリチャード35秒7
上がりのタイムが遅い=宝塚記念のレベルが低いという意味ではなく、そういった質のレースもあるのだと認識してください。天皇賞(秋)やジャパンカップのように、上がり3ハロンを33秒台で勝つような馬ではなく、34秒、35秒になるような厳しい流れで好走するような馬に有利なレース。すなわち宝塚記念は『脚の遅い馬が有利』なレースという論法です。
競馬がタイムトライアル競技でない以上、『脚が遅い』というのは必ずしも欠点でありません。たしかに上級クラスで走る馬は大抵速い脚を持つものではあるのですが、それがすべてだと言うのなら、生涯1〜3着好走時の上がり平均が35秒3であったゴールドシップの強さはどう説明できるのでしょうか。
一般論として『脚が遅い馬』は上がりの速いレースには対応できませんし、『脚の速い馬』は上がりのかかるタフな流れに音を上げてしまいます。だからこそ二極化した現在の競馬において、適性考察が重要になってくるのです。
ちなみに天皇賞(秋)やジャパンカップの『1〜3着馬の上がり3ハロンタイム平均』は34秒ソコソコ。これらのレースと宝塚記念は同じGIでも対極に位置すると考えられ、ゴールドシップが宝塚記念を得意とし、東京GIを苦手としていた解はここに求めるべきだと考えています。
では、どういった馬が上がりのかかるタフな流れに強いのでしょうか。そこでひとつの基準として考案したのが、出走予定の各馬『1着〜3着時の上がり3ハロン平均』タイムというものです。今回も1頭ずつ調べていったので、それを一覧にしてみましょう。
ラッキーライラック 34秒0
ペルシアンナイト 34秒1
クロノジェネシス 34秒2
ワグネリアン 34秒2
トーセンカンビーナ 34秒3
アフリカンゴールド 34秒4
アドマイヤアルバ 34秒4
カデナ 34秒4
サートゥルナーリア 34秒4
ブラストワンピース 34秒4
キセキ 34秒6
グローリーヴェイズ 34秒7
トーセンスーリヤ 34秒8
ダンビュライト 35秒0
モズベッロ 35秒0
スティッフェリオ 35秒3
レッドジェニアル 35秒3
メイショウテンゲン 35秒7
※不良馬場などによる異常値を緩和するため、最速値と最遅値を除いての平均(トリム平均)
この数値が遅ければ遅いほど良いという話でもありませんが、こうして数値を出すと、どうしても気になってしまうのは平均34秒0で好走しているラッキーライラックの存在です。
過去には上がり32秒8の驚速でエリザベス女王杯(GI)を差し切った馬。一時の不調期はともかく、好調期も上がり34秒を切るレースで勝利し、34秒以上を要すレースで惜敗という傾向がハッキリと現れています。
速すぎる馬、34秒0のラッキーライラックを筆頭に、今年も速い脚を使える馬が上位人気を占めることになりそうな宝塚記念。ウマい馬券ではここからさらに踏み込んで宝塚記念を解析していきます。印ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論に ぜひご注目ください。
■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、『ラップギア』と『瞬発指数』を構築し、発表。2008年、単行本『タイム理論の新革命・ラップギア』の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。『ラップギア』は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。