過去の成績は牝馬が断然優勢
夏のローカル重賞の札幌記念がGIIに昇格したのは1997年。それまで「牝馬」の活躍は少なかったうえ、ほぼ同時期に「クイーンS」が3歳以上の牝馬限定戦として札幌に移ってきたのに、GIIになっての23回、牝馬は47頭の出走で【8-4-4-31】。大活躍している。牡馬は全出走馬の85%に達する266頭の出走数で15勝なので、勝率も、連対率も、3着以内率も牝馬が断然上回っている。
理由は、距離と賞金が関係するが、もし3週前のクイーンS1800m(現在は小刻みな賞金別定)にGI級の牝馬が出走すると、ノームコアの負担重量は58キロ。ラッキーライラックは67キロを背負わされる。そこで実績ある牝馬の大半は「定量の札幌記念」を選ぶことになった。もちろん牝馬全体のレベルアップも重なっている。
今年も牝馬が人気を集めるが、この秋、牝馬全体には大記録がかかっている。グレード制導入後の「牡馬、牝馬」混合GIを、現牝馬陣は今年すでに4勝「高松宮記念1、2着、大阪杯1、2着、安田記念1、2着、宝塚記念1着」している。
過去の最多記録は2008年の年間5勝(ウオッカなど)だが、ここまで37年間に「牝馬は年間0勝-2勝止まり」のことが31回もある。今年は特別な年であり、この秋、アーモンドアイ、ラッキーライラック、ノームコアとクロノジェネシス姉妹、グランアレグリア…など、牡馬相手に勝機十分の馬がそろっている。さらには、北九州記念の結果が良好で、牝馬モズスーパーフレア、ジョーカナチャンなどがGI「スプリンターズS」挑戦となると、年間6勝以上の新記録達成が十分に可能になる。
秋に向けて好スタートを切りたい牝馬ラッキーライラック(父オルフェーヴル)のファミリーは、輸入馬の3代母ステラマドリッド(米G1・4勝)を起点に日本で大繁栄している。
アエロリット(17年のクイーンS、NHKマイルCなど重賞3勝)、ダイヤモンドビコー(ローズSなど重賞4勝、01年のクイーンS2着)など、海外も含めると牝馬に活躍馬が集中する牝系でもある。
この頭数で、この組み合わせなら、M.デムーロ騎手も自信満々に乗れるだろう。天候の心配もない。スパートのタイミングに気をつかうコースではないから、GI3勝のパワーを爆発させたい。
同じく5歳牝馬のノームコアは、ラッキーライラックとは2019年のヴィクトリアマイルで一度だけ対戦し、「クビ、半馬身、ハナ」の少差とはいえレコード勝ちして、切れ味で上回っている。2000mは【1-1-1-0】。3歳秋の紫苑Sでは1分58秒0のレースレコードで3馬身差の独走を決めている。最近はマイル戦中心だが、札幌OKのハービンジャー産駒で、宝塚記念圧勝のクロノジェネシスの半姉。非力ではなくラッキーライラックをマークする形になるとき逆転も可能か。
以下は、前走からの負担重量増を考えるとそう強気にはなれず、食い込みがあればGI【1-3-1-8】のペルシアンナイト、札幌【1-1-1-1】の上がり馬トーセンスーリヤ。札幌2歳S勝ち馬のブラックホール。侮れない伏兵はいるが、あまり手は広げられない。