いよいよ今年も残すところあと数日となった。改めて今年1年の拙稿を読み返してみたが、何とも“暗い話題”が多かったことに愕然としてしまう。年明け早々から「笠松競馬の存廃問題」で始まり、最後は「広島県馬主会の30万円サラブレッド問題」で締めくくる1年。敢えて色をつけるならば、「ダークグレイ」といったところか。生産地不況脱出の糸口がなかなか見えないまま、今年も終わろうとしている。昨年と大きく異なるのは、この年末に存廃問題と直面する地方の競馬場がないことだが、いずれも状況が改善しているとはとても言いがたい。あくまで、今のところは「嵐の前の静けさ」に過ぎないのかも知れない。
それにしても、暖冬予想とは裏腹に、この12月はまさに異常気象とも言うべき異例の寒さである。北海道でも例年ならば1月末から2月初め頃が寒気のピークだが、今年はすでに12月のうちから極寒を迎えている。度々襲来する台風並みに発達した低気圧のせいで、暴風雪波浪警報などが発令され、地吹雪が舞う。
もっとも、この寒さは日本列島のほぼ全体を覆っていて、各地の競馬場でもその影響が出ているようだ。年末年始の開催を控えた岩手では、折からの大雪と低温のせいで、日々の調教にも支障を来たしているらしく、今日電話で話した盛岡のある調教師によれば「いつになく故障馬が多くて困る。出走馬を確保できるかどうか不安だ」とのこと。とりわけ、盛岡競馬場は大変な積雪になっていて、調教コースの除雪が追いつかないほどだとか。例年、岩手はこの時期、在厩馬の仕上げに苦労させられることが多いそうだが、今年はそれが特に深刻らしい。おまけに「売上げ確保」のため、主催者が急遽今年度内(2006年3月まで)に1開催6日間の延長を決めたことにより、1月の開催が3日間延びて、当初予定の翌週14〜16日までとなったため、「今のうちからこんなに寒いのだから、来月は果たしてどんなことになるか」と厩舎関係者は一様に表情を曇らせているらしい。ちなみに、残りの3日間は来年3月末に実施することになるという。
さて、先日、広島県馬主会に50頭まとめ買いされたサラブレッドたちは、すべてが27日までに生産牧場から移動し、約束通りに馬代金も支払われたとのこと。たとえ30万円であっても、この時期の各生産者にとっては貴重な「現金収入」である。振込み先を農協以外の金融機関にしたり、甚だしい場合は、直接日高軽種馬農協の窓口まで馬代金を受け取りに現れる生産者もいたという。
生産者救済?となったかどうかは何とも判断の分かれるところだが、こうしたこと(馬主会単位での安価なまとめ買い)が問題視されるほどに、今の日本ではサラブレッドの過剰生産が深刻だということである。そして、同じ30万円のサラブレッドを販売した生産者の中でも「台所事情」は牧場によってかなり異なる。他の生産馬は順調に売りさばき、いよいよ売れ残った1歳馬を捨て値で処分した、という牧場ならばまだしも、他の生産馬もほとんどが赤字販売を強いられ、しかしまだ売れ残りを抱えている生産者が、この際1頭でもよけいに「口減らし」をするためにやむを得ず今回の話に乗った、という例も現にあり、実に様々なのである。
最後になったが、先日、ついに私も一眼レフのデジカメを購入した。拙稿に来年から写真を添付することになり、必要に迫られての導入である。市場風景や、その他日高を中心にした生産地の出来事を写真付きで紹介できると、また一段と説得力も出てくる?かも知れない。まず手始めは、1月2日の「浦河神社騎馬参拝」の様子を紹介する予定だが、フィルムカメラしか使ったことのない私に果たしてこの「文明の利器」が使いこなせるかどうか。
ともあれこの1年間、ご愛読いただき、まことにありがとうございました。皆様、どうぞ良いお年をお迎え下さい。