12番人気キングレイスターで鮮やかな勝利を飾り、ついに900勝にリーチ! 今週の『太論』では、「まさか勝てるとは思わんかった」という衝撃の勝利をじっくりと振り返るとともに、勝利の陰にある厩務員さんとの絆にも言及。「こんなにうれしいことはない」と小牧騎手。はたしてその言葉に込められた思いとは──。(取材・文:不破由妃子)
※このインタビューは電話取材で実施しました。
厩務員さんの喜んでいる顔を見るのが何よりや
──キングレイスターでの勝利(9月20日・中京8R・3歳上1勝クラス)は、衝撃かつ鮮やかでした。12番人気とは思えない強さでしたね。
小牧 強かったねぇ。馬の調子がすごくよかった。しっかり馬を仕上げてくれた厩舎のおかげやね。正直、勝てるとは思っていなかったけど(苦笑)。
──スタートからまったくロスのない競馬で、終いの脚を最大限に引き出した印象です。
小牧 キングレイスターに限らんけど、どんなに人気がなくても常に一発は狙っているからね。でもまぁ、今回は自分でも上手いこと乗れたと思う。いい競馬やった。ファインプレーや(笑)。レースの前に新聞を見ていたら、「大橋厩舎はダ1900mでNo.1」ていう記事があってね。そういえば、キングレイスターも1900mで勝ってるなぁなんて思いながら、じっくり記事を見てたんですわ。まさか勝つまでは…とは思っていたんやけど、ホントに勝ったね(笑)。
──さっそくレースを振り返っていきたいのですが、後方からの競馬はプラン通りだったのですか?
小牧 そうやね。いつもよりスタートはよかったんやけど、前が速かったので無理せずあの位置に。外を回りたくなかったから、できるだけ内を選んで。
──プラン通りのコース取りだったんですね。
小牧 プラン通りというか、それを心がけて乗りました。それくらいせんかったから、一発は狙えんからね。そうしたら、なんせ4コーナー手前の時点で手応えがよくて。
──それは見ていてわかりました。ただ、前とはだいぶ離れていたので、どうかなと思っていたら…。
小牧 伸びたねぇ。ただ、いつの間にか抜け出したっていう感じで、最後までわからんかった。とにかく馬が動いてくれた。動いてくれたから、ああやって割ってくることができた。なんかいい感じやね、人間も。しっかり馬を動かせた実感があるわ。
──一発狙っていたとはいえ、小牧さんにとってもビックリな勝利?
小牧 うん、ビックリやった。ジックリ乗って最後の脚を生かすのがいいんちゃうかとは思っていたけど、今回は展開もよかったね。わからんもんやで、競馬は。なんせ乗ってみなわからん。こういうことがあるから、1頭でも乗っておかなアカンちゅうことやねんな。
──キングレイスターといえば、新馬のときからコンビを組んで、当時から「乗り味がいい」と評価していた馬。断続的にではありますが、4年にわたって騎乗されてきて、結局ここまでの2勝はどちらも小牧さん。なんだかうれしい1勝ですね。
小牧 ホンマやねえ。キングレイスターに限らず、ずっと僕を乗せ続けてきてくれた厩務員さんでね。そういうのもあって、今回の勝利は本当にうれしかった。なんせ厩務員さんの喜んでいる顔を見るのが何よりや。馬主の伊藤正男さんには、園田の頃からお世話になっていてね。厩務員さんは、伊藤さんのお身内なんですわ。昔からずーっと応援してくれていて、ホンマにありがたいと思っています。最近はなかなか騎乗馬が集まらんなか、こうやって乗せてくれてね。しかも結果を出せたわけだから、こんなにうれしいことはないわ。
──なんだか目頭が熱くなるお話です…。そういう人と人との繋がりも、競馬の大きな魅力のひとつだなと改めて感じます。先週はもう1頭、月曜日のラデツキーも際どい競馬でしたね(9月21日・中京7R・3歳上1勝クラス・3着)。
小牧 一瞬、勝つんかと思ったわ。
──芝2200mの金山特別にも登録がありましたが、今回はダートを選択したんですね。
小牧 うん。相手関係とかを考えてね。やっぱりダートのほうがいいかもしれんなぁ。ダートは芝ほどペースが上がらないから、速い脚が足りないこの馬にとっては競馬がしやすい気がする。前はね、ちょっとでも砂を被ると嫌がる面があったけど、この前の感じだとそのあたりは成長してたわ。すんなり行ける形が一番いいんやけどねぇ。見ての通り、行くまでが大変やから。
──スタート後の出ムチを見ていればわかります。
小牧 せやろ? ゲートもあんまり上手ではないしね。まぁいろいろと条件がつくけど、勝ち負けできる力があるのは間違いないから、引き続き注目しとって。
──注目といえば小牧さん、いよいよ900勝にリーチです。
小牧 ついにリーチやね。まぁ与えられた馬で一生懸命に乗るだけや。さっきも言ったけど、なにが起こるかわからんのが競馬やから。いざチャンスがきたときに逃さないよう、体調だけは整えて乗っていきたいね。