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2020セプテンバーセールを総括する

  • 2020年10月01日(木) 18時00分

昨年の実績を上回るのは確実で、コロナ禍でも嬉しい誤算


 9月22日〜24日の3日間、北海道市場で開催されたセプテンバーセールは、最終日も活発な取引が続き、上場馬183頭(牡79頭、牝104頭)のうち、146頭(牡66頭、牝80頭)が落札されて、総額6億6627万円(税込み)を売り上げ、売却率は3日間で最も高い79.78%に達し、平均価格は456万3493円と、健闘した。

 その結果、3日間を通じての合計では、上場馬601頭(牡250頭、牝351頭)中、451頭(牡196頭、牝255頭)が落札されて、売却率は前年比1.26% 増の75.04%、売却総額は、前年の同市場を6億1336万円上回る22億1122万円、平均価格は牡594万2245円、牝410万4078円、合わせて490万2927円と、いずれの数字も昨年を大きく塗り替えた。セプテンバーセールは昨年、新設された新しい市場だが、セレクション、サマーの各市場で買い切れなかった購買層がまだかなりいて、依然として引き続き根強い需要があることを証明したといえるだろう。

 3日間を通じての最高価格馬は、前回紹介した370番アートリョウコの2019(牡鹿毛、父ヴァンセンヌ、母の父タイキシャトル)の2750万円(税込み)。周知の通り、セリ2日前の中山「セントライト記念」を半兄バビットが制した直後という絶好のタイミングで上場された同馬は、600万円からどんどん価格が急上昇して、2500万円まで上り詰めた。すでに母アートリョウコはこの世にいないとのことだが、兄に続いて同馬の活躍にも期待がかかる。

 2番目の高額馬は189番ロアジスの2019(牡栗毛、父シニスターミニスター、母の父Medaglia d'Oro)の2530万円(税込み)。販売者は(有)上水牧場、飼養管理者は(有)パイオニアファーム。落札者は犬塚悠治郎氏。

生産地便り

初日22日の最高価格馬であるロアジスの2019


 また牝馬の最高価格馬は、128番ヘイローフジの2019(鹿毛、父イスラボニータ、母の父キングヘイロー)の1815万円(税込み)であった。販売者、飼養管理者ともに(有)協和牧場、落札者は(株)カナヤマホールディングス。

生産地便り

牝馬最高価格馬のヘイローフジの2019


 今回も、地方競馬馬主会の補助馬購買が多数見られ、兵庫県8頭、石川県9頭、神奈川県(個人名)が10頭、千葉県(個人名)が15頭と、市場を下支えした形である。またJRA日本中央競馬会も、来春のブリーズアップセールを目指してJRA育成馬を15頭購買し、日高ではセレクション9頭、サマーセール44頭と合わせて68頭を購買したことになる。

 なお、これまでの3市場を合計した売り上げは、115億2239万円となり、10月19日、20日に予定されているオータムセールを待たずして、昨年の年間売上総額118億1145万8000円に迫るところまできている。これにオータムセールの売り上げが加算されるので、昨年の実績を大きく上回るのは確実となった。今年は5月のトレーニングセールが中止のやむなきに至り、コロナ禍の社会情勢の下、市場の景気が懸念されていたが、大方の予想を裏切る好結果が続いている。

 以下、余談を少し。去る9月26日付け北海道新聞日高版に、セプテンバーセールの概要を伝える記事が掲載されていた。昨年から新設された同セールの結果を数字で伝えた後に、最高価格馬について触れており、こともあろうに、馬名と生産者名が全く別の名前になっていたのであった。正しいのは浦河町の部分だけで、生産者名はNさん、馬名はSの2019と紹介されていた。その後に続く価格は2750万円と正しく表記されていた。

 北海道を代表する新聞社の記事としては、ちょっとあり得ないようなミスだと感じた。正しくは浦河町、(有)大北牧場のアートリョウコの2019の2750万円が正しいわけだが、誤って伝えられたNさんの上場馬は275万円(本体価格250万円)で、桁がひとつ違う。

 ではなぜ、このようなミスが生まれたのかが謎なのだが、私の推測では、主催者が配布する「市場取引成績表」2日目分を見た記者が、この日に最高価格馬が出ていることを知り、パラパラとめくり始めて最初のページの一番下にNさんの上場馬の名前と275万円という落札結果を発見したので、これがたぶん最高価格馬であろうと即断したのではないかと考えている。

 2750000という表記だから、27500000とではパッと見た感じが酷似していて、間違えやすくはあるだろう。しかし、Nさんの上場馬の前の馬は165万円、その前の馬は314万円。さらに1頭置いてNさんの上場馬の4頭前は880万円である。

 普通は、目を数頭分、上にずらすだけで自分の間違いに気が付くはずだ。しかも同じページには1265万円という落札馬さえいる。この時点で確認していれば、よもやこれほどの誤認は生まれなかったものと残念に思う。

 単なる凡ミスとは、とても看過できない。最高価格馬を輩出した大北牧場にも失礼だし、もっと言えば、誤って伝えられたNさんに対しても甚だ失礼な話だからである。

 当該記事が掲載されたのは26日、そして訂正記事が載ったのは29日になってからのことだ。この3日間に、Nさんの元には祝福の電話がかかってきた可能性もある。事情をよく知らない親類縁者や友人知人などから「おめでとう」と言われても、これは迷惑以外の何物でもない。大新聞にあるまじき大チョンボと言わざるを得ない。訂正記事を出したのは当然としても、そもそもこんなミスは、普通は起こるわけがないのである。

 改めて、メディアの取材の在り方について考えさせられた気がする。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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