金色のたてがみが輝く尾花栗毛のバビット(ユーザー提供:モカピーさん)
ディープインパクトが無敗の三冠馬に輝いた2005年菊花賞。アドマイヤジャパンは、逃げるシャドウゲイトと共に3番手以降を約10馬身離してレースを運び、残り100mまで先頭で粘って2着でした。長距離レースでたびたび起こる大逃げは、波乱の予感と興奮を与えます。
今年、コントレイルが15年ぶりの無敗の三冠馬を目指して挑む菊花賞で、逃げ馬の1頭と目されるのはバビット。逃げて重賞を連勝中の尾花栗毛の牡馬はいったいどんな馬なのでしょうか。「気に入った馬を見つけると喜んじゃう」という憎めない可愛さをもつバビットについて、管理する浜田多実雄調教師に伺いました。
(取材・構成:大恵陽子)
※お忙しい中、電話取材にご協力いただきこの場をお借りして改めてお礼申し上げます。
セントライト記念も「うわ、勝っちゃった!」
――ラジオNIKKEI賞、セントライト記念と重賞連勝中のバビットについて今日はお伺いできればと思います。すごく人気の高い馬ですよね。
浜田多実雄調教師(以下、浜田師) 1つ勝つごとにファンが増えているっていうのは私も感じています。
――トレーニングセールで購入されたとのことですが、第一印象を教えてください。
浜田師 「悪くないかな」って程度でした。オーナーが気に入られて、私も実際に見たらソエは出ていましたけど動きは悪くありませんでした。下あごが引っ込んでいる「カケス」で、馬の世界ではハミ受けが悪いと言われるんですけど、あれだけ動けたら、「1つくらい勝てたらいいなぁ」という感じでした。とにかく、私たちの仕事は「1つ勝たないと」という部分があるので。
――JRAで走り続けるには、まずは1勝を挙げないといけませんから、そこが最初の目標になるんですね。2歳5月のトレーニングセールの時点でソエが出ていたとのことで、デビュー戦は11月、京都芝1800mでした。
浜田師 母の父がタイキシャトルで気性が前向きだったので、短距離も考えたんですけど、オーナーとお話をして「まずは距離のあるところから走らせて、ダメなら短くしよう」ということになりました。
――結果、3戦目となる芝2000mで初勝利を挙げると、続く早苗賞(1勝クラス)も逃げて連勝しました。
浜田師 早苗賞は内枠に行きそうな馬がいたので、逃げる予定ではなかったんですけど、その馬が出遅れてスローで逃げて勝つことができました。ソエの痛みがまだあったので、早苗賞を使ったら放牧に出そうと考えていたんですけど、ここを勝てたのでラジオNIKKEI賞を意識したんです。3歳5月で芝の中距離を2勝していたら、メンバー的にも面白味のある重賞じゃないかなと思いました。
――ところが、ラジオNIKKEI賞では前走に続き騎乗予定だった団野大成騎手が直前のレースで落馬負傷し、急遽内田博幸騎手に乗り替わりとなりました。
浜田師 検量室でバビットの特性をお伝えすると、内田騎手からは「馬のリズムで行けばいいんですね」と。
――その言葉通りスイスイ逃げて、上がり3Fも最速をマークして5馬身差で勝ちましたね。
浜田師 ビックリした感じの方が大きかったですけど、嬉しかったです。でも、次のセントライト記念はそんなに自信がなかったんです。ラジオNIKKEI賞が