空前の好況に沸いた今年の1歳馬市場
朝晩の冷え込みがだんだん厳しくなってきた10月19日と20日の両日にわたり、新ひだか町静内の北海道市場を会場に、日高の1歳市場としては今季最後となる「オータムセール」が開催された。
折から、日高地方では道立静内高校で新型コロナウイルスによるクラスター感染が発生し、予断を許さない状況となったものの、セールの方は予定通りの日程で開催に漕ぎつけた。秋晴れの好天に恵まれ、2日間を通じて購買登録者は1004名(前年比203名増)に達し、ひじょうに活気のある市場となった。
会場の様子
好天に恵まれ比較展示も賑わいを見せた
セール全体の成績は、上場頭数が466頭(牡187頭、牝279頭)、うち落札されたのは365頭(牡154頭、牝211頭)、売却率は78.33%(前年比4.25%増) と、オータムセール史上、最高の数字となった。
売却総額は、12億5994万円(税別)。平均価格は345万1890円(牡413万5714円、牝295万2796円)。さすがに前回のセプテンバーセール(9月22日〜24日)の平均価格445万7206円からは約100万円の下落だが、昨年のオータムセールとの比較では54万3452円の上昇であった。
初日19日は、新規の申し込み馬、そして2日目は、今年の過去の1歳市場に一度上場され主取りに終わった馬の再上場馬である。初日は242頭(牡85頭、牝157頭)が上場され、191頭(牡72頭、牝119頭)が落札された。2日目は224頭(牡102頭、牝122頭)の上場で、174頭(牡82頭、牝92頭)の落札であった。売却率は初日が78.93%、2日目が77.68%とほぼ同じである。
最高価格馬は牡牝ともに、初日の新規申し込み馬から出た。牡は174番オーシャンレディーの2019(鹿毛、父パドトロワ、母の父アグネスタキオン)の1122万円(本体価格1020万円)。販売者・(有)増本牧場、飼養者はエバグリーンセールスコンサインメント。落札者は長谷川成利氏。
牡馬の最高価格馬オーシャンレディーの2019
オーシャンレディーの2019落札時の様子
牝馬では、198番コウユーノミチの2019(鹿毛、父エスポワールシチー、母の父キングヘイロー)の1210万円(本体価格1100万円)が最高価格馬であった。販売者は(株)アフリートファーム。飼養者はクラックステーブル。落札者は犬塚悠治郎氏。2日間を通じて、本体価格が1000万円の壁を超えたのはこの2頭のみである。
牝馬の最高価格馬コウユーノミチの2019
今回のセールでも、活発な購買を下支えしたのは、各地方競馬の補助馬購買であった。新たに今回は、岩手県馬主会が加わり、14頭(牡12頭、牝2頭)で総額8580万円を落札した。さらに兵庫県馬主協会が6頭(牡4頭、牝2頭)、石川県馬主協会が12頭(牡1頭、牝11頭)と、ここまでで32頭である。これらに加えて、千葉県馬主会や神奈川県馬主協会、岐阜県馬主会、佐賀県馬主会に所属する個人馬主が2日間で計40頭を落札し、合わせると72頭になる。馬券売り上げが好調な地方競馬の現況が背景にあることは間違いなく、これら補助馬以外にも多数が地方競馬向けとして数多く落札されていた。
今回のオータムセールの売り上げ12億5994万円と、セレクション、サマー、セプテンバー3市場の売り上げ104億7490万円に加えると、合計117億3484万円となり、主催する日高軽種馬農協の市場売り上げとしては史上最高額となる。
今年は、全国的な新型コロナウイルス感染拡大により、5月のトレーニングセールが中止のやむなきに至ったことから、生産地では先行きを不安視する声が圧倒的に多かったが、例年よりも1ヵ月遅れで8月下旬のサマーセール前日にずれ込んだセレクションセールからようやく始まった各市場は、いずれも前年の数字を大きく上回る空前の活況を呈し、これで予定していた1歳市場の日程を全て終えることとなった。
オータムセールを振り返って、日高軽種馬農協の木村貢組合長は「今年セリがずっと開催できなくて、セレクションからセリの好調がずっとオータムまで続いてきたと考えています。地方が2歳馬の競馬に力を入れるようになったことも活況の要因だろうと思います。やはり全国の競馬が止まらなかったこと、とりわけ地方の馬券の売り上げが伸びてきていることが若馬の競馬をやりたいというかねてよりあった要望がこういう結果になったと思います。コロナに関しては徹底した感染予防に努めてきましたし、購買者の方が感染を気にされて数が少し減るのではないかとの危惧もありましたが、多数の方々にお越し頂きました。今回、オンラインによる参加も試験的に実施しましたが、今後のセリ運営の一つの手法であることは間違いないですね。購買者登録も1004名に達し、前年より203名増えました。私としては嬉しいの一言ですね。100点満点のセールでした」とコメントしていた。
さらに年間を通じて「春以来、半年間はしんどかったのですが、セレクションを1ヵ月ずらしてようやく開催に漕ぎつけ、サマーと日程がくっついたことで思わぬ相乗効果も生まれたと思います。ただしこれがずっと今後も続くかどうかは不透明ですが、セプテンバーが終わった時点で過去最高売り上げになりそうだとは感じていました。セプテンバーが終わっても購買者の方々からまだ馬が買えていないという声が聞かれたので、オータムに関しても数字が伸びてくれるだろうという希望はありました。ただひとつコロナのクラスターが発生したのは想定外でしたが、ただ結果良ければすべて良しと考えております。来年は五輪があるので制限された中での競馬開催になりますし、市場日程もまたその影響を受けることになりそうです。サマーとセプテンバーの棲み分けをどういう風に割り振りするかが今後の課題ですね」と総括した。
当初は前年比で7割か8割の数字を上げられたら良しというような予想であったらしいが、いざ蓋を開けてみれば、空前の好況に沸いた今年の1歳馬市場であった。コロナ禍という特殊な要因が背景にあるので来年以降の市況に関しては何とも予測が難しいが、生産地にとっては馬の売れる好景気がさらに続いてくれることを期待したいところだ。