これほど競馬史に新たな偉業を上書きするGIのつづいたシーズンが、かつてあっただろうか。
デアリングタクト、コントレイルという牝牡の無敗の三冠馬が誕生し、アーモンドアイが芝GI8勝の最多勝記録を樹立。ラッキーライラックが女王杯を連覇し、グランアレグリアが春秋マイルGIを制覇。そして今週のジャパンカップで、史上初めて3頭の三冠馬が激突する。
1970年代の競馬を見てきた人は、トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラスの「TTG三強」のどの馬が好きかで性格がわかる、などと言われた。「天馬」と呼ばれたエリートのトウショウボーイか、関西の期待を背負った「流星の貴公子」テンポイントか、それとも「苦労人」のグリーングラスか。
1980年代なかごろは、2年つづけて現れた三冠馬のミスターシービーとシンボリルドルフが、その対象となった。追い込み一辺倒で不器用なシービーか、それとも、プライドの高い「皇帝」ルドルフのどちらが好きか、と。
1980年代の終わりは、地方出身のイナリワンとオグリキャップ、長距離で強さを発揮したスーパークリークの「平成三強」が注目されたが、ほとんどの人がオグリ派だったので、性格診断の材料にはなり得なかった。
その後、1992年の天皇賞・春の「天下分け目の決戦」を戦ったメジロマックイーンとトウカイテイオーなどは、マック派とテイオー派が拮抗していたように思うが、直接対決はあの一戦だけだった。
2000年代後半のウオッカとダイワスカーレットの名牝二強も、圧倒的にウオッカ派が多く、平成三強のオグリのような立ち位置だった。
2010年代になり、16年の有馬記念と17年の天皇賞・春は、キタサンブラックとサトノダイヤモンドの二強対決として盛り上がった。この2頭は、かたや良血とは言えないブラックタイド産駒で、かたや超良血の高額馬と、対照的なプロフィールだっただけに性格診断の材料にはなったが、キャラクターとしての人気という意味では、オーナーが国民的歌手で、主戦騎手がスーパースターのキタサンがサトノを圧倒していた。
こう見ていくと、今週のジャパンカップで激突する、アーモンドアイ、デアリングタクト、コントレイルのように、馬券的な人気も、キャラクターとしての人気も明確に分かれる対決は久しぶりであることがわかる。
アーモンドアイにはゴールまでずっと加速していく、特別な強さがある。しかしながら、勝つときの強さと、負けるときの脆さに大きなギャップがある。そのあたり、ウオッカに通じるものがある。牝5歳、父ロードカナロア、美浦・国枝栄厩舎、シルクレーシング所有、ノーザンファーム生産、主戦・クリストフ・ルメール騎手。
デアリングタクトには、突出した瞬発力がある。ひたむきにゴールを目指す芯の強さは、牝牡の違いはあるが、オグリキャップの姿を彷彿させる。牝3歳、父エピファネイア、栗東・杉山晴紀厩舎、ノルマンディーサラブレッドレーシング所有、長谷川牧場生産、主戦・松山弘平騎手。
コントレイルには、自在性と、高いレベルで安定した総合力がある。かろやかな走りは父ディープインパクト譲り。老成した隙のない走りは、史上初の無敗の三冠馬シンボリルドルフのようだ。牡3歳、父ディープインパクト、栗東・矢作芳人厩舎、前田晋二氏所有、ノースヒルズ生産、主戦・福永祐一騎手。
3頭の個性はまるで異なり、それだけに、どれが勝つのか予想するのは難しくもあり、楽しくもある。どの馬が勝つにせよ、すごいジャパンカップになることは間違いない。
あなたがジャパンカップで単勝を買うとしたら、どの馬だろうか。
単勝人気は、コントレイル、アーモンドアイ、デアリングタクトの順か。
今、札幌の生家にいるのだが、もうすぐ帰京する。
最近、耳鳴りがひどくなり、電子体温計のピピッという音が聴こえず、自分でも心配になってきた。ストレスだろうか。介護関連のことに時間をとられ、あっちでもこっちでも〆切を延ばしてもらって申し訳なく思う。
先日、行きつけのカレー店のママさんに「ショートヘア、似合いますね」と言われた。事情を知らない人には、好き好んでこの頭にしているように見えるなら、それはそれでよし、としたい。