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香港の地で再び大仕事を成し遂げた“龍王”の血

  • 2020年12月14日(月) 18時00分

先週の血統ピックアップ


・12/13 阪神ジュベナイルフィリーズ(GI・阪神・芝1600m)
 好位追走のソダシが馬場中央から伸び、内から差を詰めたサトノレイナスをハナ差抑えて2歳女王の座に就きました。デビュー以来無傷の4連勝です。クロフネ産駒はこれまで、ホエールキャプチャとクロフネサプライズが2着、ベストクルーズとビーチサンバが3着となったことがあります。現1歳世代がラストクロップなので、ソダシは最後から2番目の世代となります。種付け頭数が少なく、受胎率も悪かったので、自身を含めて同期はわずか25頭しかいません。そのなかからこれだけの大物を出したのは立派です。

 クロフネ産駒は牝馬が走るイメージがありますが、じっさいそのとおりで、産駒を収得賞金順に並べると、上位7頭中6頭が牝馬です。父系を発展させる力は弱く、いまだにこれといった後継種牡馬が見当たりませんが、母の父としてはきわめて有能です。阪神ジュベナイルフィリーズの同日、香港カップ(G1・芝2000m)を制したノームコアは、クロフネ牝馬クロノロジストを母に持ちます。クロノロジストのもう1頭の娘クロノジェネシスは、2週間後に行われる有馬記念で人気を集めるでしょう。クロフネの血はわが国の血統を母方から力強く支えています。

・12/13 香港スプリント(香G1・シャティン・芝1200m)
 中団追走のダノンスマッシュが直線で外から差し切り、G1初制覇を香港の舞台で達成しました。芝短距離王国オーストラリアから多くのサラブレッドを輸入している香港は、スプリント路線のレベルがきわめて高く、過去にドバイ遠征でG1を制した馬が複数出ています。日本馬にとって香港スプリントは攻略困難な高い壁であり、2001年の初参戦以降、勝ったのはロードカナロアしかいませんでした(2012、13年と連覇)。掲示板に載った馬も、カナロアを除くと2014年のストレイトガール(3着)と2011年のカレンチャン(5着)の2頭しかなく、それ以外の25頭は6着以下に敗れています。ダノンスマッシュはわが国に7年ぶりの勝利をもたらしました。

 その父はかつて連覇を果たしたロードカナロア。父と同じくケイアイファームが生産し、安田隆行厩舎に所属する、という共通点もあります。ロードカナロアは2021年の種付け料が前年から500万円ダウンの1500万円となりましたが、産駒が香港スプリントを制したことは国際的に大きな価値を持ちます。今年2月には豪州デビューのタガロアが現地のG1ブルーダイヤモンドS(芝1200m)を勝ちました。来年7月のセレクトセールではロードカナロア産駒が海外馬主に落札されるケースが増えるかもしれません。

今週の血統注目馬は?


・12/19 ターコイズS(GIII・中山・芝1600m)
 登録馬の父のなかで中山芝1600mに強い種牡馬はキズナ。連対率39.1%は素晴らしく、2010年以降、当コースで産駒が20走以上した100頭の種牡馬のなかで断然1位です(2位アッミラーレは30.6%)。当レースにキズナ産駒は、マルターズディオサとクリスティの2頭が登録しています。メンバー構成は強力ですがいい競馬が期待できそうです。

今週の血統Tips


 朝日杯フューチュリティSは、2013年までは中山で行われ、2014年から阪神に舞台を移しました。小回りコースの中山時代に比べると、枠順の有利不利が減り、全馬公平に力を発揮できるようになったという印象です。ディープインパクト産駒は中山時代に1勝もできませんでしたが、阪神に移ってから3勝しています。6年間に3勝ですから2年に1回のペースで優勝しています。広いコースに替わってまぎれが少なくなり、同産駒の長所である末脚の威力を発揮しやすくなったからでしょう。

 今年、ディープインパクト産駒はレッドベルオーブとロードマックスの2頭が登録しています。前者は1番人気に推されることが濃厚で、後者は京王杯2歳Sで好内容の2着。いずれも有力です。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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