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【シンザン記念】スピード能力で上回り、積極策で押し切った一戦

  • 2021年01月11日(月) 18時00分

真価が問われるのはこの次のレースだろう


 今年最初の3歳重賞を制したのは、メンバー中もっとも大きな馬体536キロの牡馬ピクシーナイト(父モーリス)だった。時計は「46秒3-47秒0」=1分33秒3。

 馬場差はあまりないと思える5日の「京都金杯1600m」が、前後半バランス「46秒9-46秒2」=1分33秒1であり、初めて中京で行われたシンザン記念なので過去のレースとの比較は難しいが、みんな浅いキャリアで古馬マイル重賞の常連と差のないタイムなら、マイル重賞としてレベルは低くない。

 新種牡馬モーリスは、その産駒がJRA重賞初勝利。2着に追い込んだのも500キロの牡馬ルークズネスト(父モーリス)。モーリス(父スクリーンヒーロー)は、昨2020年のファーストシーズンサイアーランキングでドゥラメンテ(父キングカメハメハ)と大接戦の2位だった。

 この2頭の新種牡馬は、2019年の新種牡馬ランキング1位だったキズナ(父ディープインパクト)、2位エピファネイア(父シンボリクリスエス)とともに、期待の次代のチャンピオンサイアー候補である。この4頭、昨2020年の2歳総合種牡馬ランキングは、常勝のディープインパクトとさして差のない「2位ドゥラメンテ、3位モーリス、4位キズナ、5位エピファネイア...」だった。

重賞レース回顧

モーリス産駒のピクシーナイト(c)netkeiba.com


 勝ったピクシーナイトは、差し切った新馬1400m、出負けして伸びた秋明菊賞1400mと違って好スタートを決めると、主導権を握る積極策。「46秒3→58秒1→」のペースは土埃(つちぼこり)の上がる芝を考えると決して楽なペースではないが、後続のマークを受けた後半600mを「11秒6-11秒6-12秒0」=35秒2でフィニッシュ。苦しくなったはずの最後もほとんどラップが落ちていない。

 母ピクシーホロウ(父キングヘイロー)の3勝は1500m、1800m2勝。祖母ラインレジーナ(父サクラバクシンオー)の半弟ダノンカモン(父シンボリクリスエス)は、ダートのマイルを中心に1400-1900mで9勝。さらにその半妹クィーンズバーン(父スペシャルウィーク)は阪神牝馬Sなど1600m以下で4勝。どちらかというあまり距離は延びない方がいい一族かもしれない。今回は快速というより、パワフルなスピード能力で上回っていた。(真価は)「この次ですね(福永騎手)」のコメント通り、距離適性、スケール判明は相手が強化する次回だろう。

 突っ込んで2着のルークズネストは、勝ち負けに持ち込んだ馬の中では上がり最速の34秒8。鈍ってはいない勝ち馬を追い詰めたから価値がある。配合はもうすっかり一般化したサンデーサイレンスの「4×3」。輸入牝馬の祖母サミットヴィル(父Grand Lodgeグランドロッジ)は、芝8Fの英GIII1着、GI2着。2005年のエリザベス女王杯16着。マイラータイプと思えるが、道中、折り合いを欠きながらそれでも直線伸びている内容と、欧州型のファミリーから2000m級も大丈夫だろう。

 バスラットレオン(父キズナ)は、勝ったピクシーナイトをマークする形で伸びきれず、最後に少し鈍って3着。1分33秒7(上がり35秒5)なら少しも悪い内容ではないが、新馬快勝のあと、相手が強化したこともあるが「0秒3、0秒5、0秒5、0秒4」差の善戦続きになってしまった。前走のGIを1分32秒8で激走(4着)した目に見えない疲れがあったかもしれないが、詰めの甘さが課題となった。

 人気の中心となった牝馬ククナ(父キングカメハメハ)は、スタートは悪くなかったが土埃の舞うタフな芝コンディションを苦にしたのか道中の行きっぷり一歩。途中で外に出す余裕がなくなった。それでも馬群を割って上がり34秒9で差を詰めて1分33秒8。悲観する内容ではないが、ちょっと非力で力の要る馬場は合わない心配を思わせた。

 最近10年、2011年マルセリーナ(桜花賞)、2012年ジェンティルドンナ(桜花賞などGI7勝)、2016年ジュエラー(桜花賞)、2018年アーモンドアイ(桜花賞などGI9勝)が出走していたこの重賞レース。ククナは評価を上げることはできなかったが、2011年のマルセリーナはこのレースを3着、2016年のジュエラーは2着であり、ジェンティルドンナ、アーモンドアイは別格。ククナの桜花賞路線の評価が下がったわけではない。

 人気上位馬では、3番人気のロードマックス(父ディープインパクト)が残念ながら15着に沈んだが、果敢に先行したというより、行きたがって厳しいペースを追走する形になったのが失速の原因。1400mの京王杯2歳Sを追い込んで2着したように、タフな馬場でのマイル戦はきつかった。現状では1200-1400mの方が合うだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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