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【日経新春杯】「アドマイヤビルゴには武豊騎手に…」友道調教師が知る、近藤利一オーナーの思い

  • 2021年01月14日(木) 18時02分
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▲前走アンドロメダS優勝時のアドマイヤビルゴと武豊騎手 (C)netkeiba.com


アドマイヤの冠名で競馬ファンの間でもお馴染みだった近藤利一オーナー。2017年にはセレクトセールで史上2位となる6億2640万円(税込)でアドマイヤビルゴを落札しました。

残念ながらデビューを待たずして一昨年11月にお亡くなりになりましたが、生前には「アドマイヤビルゴには武豊騎手に乗ってほしい」とおっしゃっていたといいます。そこにはオーナーの熱い期待が込められており、新馬戦では約10年ぶりに武豊騎手がアドマイヤの勝負服に袖を通して快勝しました。

その思いを近くで感じていたのが同馬を管理する友道康夫調教師。厩舎のGI初制覇が同オーナーのアドマイヤジュピタでもあり、「義理人情に厚い方でした」と話します。不思議な運命が交錯するアドマイヤビルゴは今週17日、日経新春杯に出走予定。レースを前に伺いました。

(取材・構成=大恵陽子)

父のディープインパクトを知る武豊騎手に…


――セレクトセールで6億円超えで落札されたアドマイヤビルゴ。そのインパクトが強いですが、セリ前の印象はどうでしたか?

友道康夫調教師(以下、友道師) 体がちょっとコンパクトだったんですけど、すごく雰囲気のあるいい馬でした。歩かせるとすごく柔らかくてフットワークも良くて、第一印象は「すごくいい馬だな」というものでした。近藤(利一)会長や何人かで集まって話をした結果、「この馬が一番いいんじゃないか」という話になりました。

――高額馬を預かるというのは独特のプレッシャーなどもあるのでしょうか?

友道師 どの馬を預かってもプレッシャーはあるんですけど、特にこういう価値がついた馬がうちの厩舎に来てくれることは調教師冥利に尽きます。

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▲「イルーシヴウェーヴの2017」(のちのアドマイヤビルゴ)を競り落とした際の記念撮影 (撮影:田中哲実)


――デビューする前から価値がついているような感じですものね。アドマイヤビルゴと言えば、近藤オーナーが生前、「武豊騎手に乗ってほしい」と話されたというエピソードも有名です。

友道師 アドマイヤビルゴが2歳でまだ牧場にいる頃、「父ディープインパクトに乗ったことがあるのは武豊騎手しかいないから、調教でもいいからアドマイヤビルゴに乗って、ディープと比べてどうかを聞いてほしい」とおっしゃいました。

――オーナーにとってディープ産駒の一番の傑作について評価を知りたかったんですね。

友道師 そう、一番の馬なので、ディープと乗り味がどうかって意見を聞きたいって言っていました。それをできるのは武豊騎手しかいなからって。

――デビュー前に武豊騎手は調教に騎乗しましたが、ディープインパクトと関連した話はありましたか?

友道師 ディープは今でも別格ですよね。アドマイヤビルゴはちょうど1年前にデビューしたんですけど、体も小さかったのでデビューまでじっくり慎重にいきました。できれば近藤会長がまだ生きている時にデビューさせたかったんですけど、それができなくて亡くなってからのデビューになりました。

 その時でもまだ小さくて、調教でもそんなにすごい動きではなかったので、「うん…? これ、ちょっとまだ早いかな」っていう思いがありました。完成していけば良くなっていくとは思ったんですけど、「なんとか競馬に行ってがんばってほしいな」っていうくらいでした。武豊騎手も同じ感触だったと思います。

――ところが、レースでは2番手から抜け出して快勝。いい意味で期待を裏切ってくれましたね。

友道師 あの内容を見て「これで勝つんだったら能力あるね」って新馬戦の後に話したのを覚えています。近藤会長が亡くなられた後、12月に香港でアドマイヤマーズも勝っていますし、こうして新馬戦も勝たせてもらって、近藤会長の最後の後押しがあったのかなってつくづく感じました。競馬に対してすごく熱い気持ちを持っていた方なので、それが通じたのかなって。

――厩舎のGI初制覇も同オーナーのアドマイヤジュピタで2008年天皇賞・春でしたね。

友道師 開業前からすごくお世話になりました。私が調教師試験に合格した頃は今とは違って開業まで1年以上待つ人も結構いて、実際に合格後1年半経ってもいつ開業できるか分からない状況で馬も集められませんでした。

 当時、松田国英厩舎で技術調教師として夏は札幌競馬場にいて、全休日の月曜日を利用して牧場に行っていました。ノーザンファームに行った時にちょうど近藤会長もいらしていて、牧場の方から「挨拶するか?」と。ペーペーどころか開業前の調教師で、「まだいいです」とお断りしたんですけど、「せっかくだから」と言われて挨拶をさせていただきました。名刺をお渡しして、立ち話をしたくらいでした。

 その翌週くらいに新井仁調教師がお亡くなりになって、急に11月に開業できることが決まりました。そうしたらノーザンファームから電話がきて、「近藤会長が面倒見てやると言っているから、電話しなさい」と。そうして、開業時から馬を預けてくださいました。義理人情に厚い方でした。

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▲オーナーへの思いを語る友道調教師、写真はアドマイヤマーズでの香港マイル優勝時 (撮影:高橋正和)


大阪杯を目標に、日経新春杯で決めたい重賞初V


――アドマイヤビルゴは2戦目の若葉Sもあっさり快勝しました。

友道師 新馬戦後に放牧に出して、すごく良くなって帰ってきました。調教でも動きがすごく良くなっていて、「新馬戦の時とは別馬になっているから」と武豊騎手にレース前に話していました。

――若葉Sの勝ちっぷりから次の京都新聞杯も期待を抱きましたが、コロナの影響で騎手が土日で競馬場間の移動ができなくなり、武豊騎手の騎乗が叶いませんでした。

友道師 皐月賞も行けたけど、そこは使わずにダービーに行こうって話だったんです。京都新聞杯も期待はしていたんですけどね、残念ながらコロナの影響で…。騎乗した藤岡康太騎手は調教に一番乗っていますし、レースも上手く乗ってくれたと思います。

――悔しい4着でしたね…。夏休みを経て秋に帰ってきての成長ぶりはどうでしたか?

友道師 2走前のムーンライトハンデの前に武豊騎手と「大きくなっているね」と話していたんですけど、馬体重は全然変わらずで。前走も「かなり大きくなっているから数字も増えているな」と思ったら減っていたんですよね。

 でも、見た目はボリューム感が出てきました。父のディープも見た感じはそんなに小さいイメージはなかったですけど、新馬戦の時が一番体重が重たかったんですよね。なんか、そのへんもよく似ていますね。

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▲新馬戦優勝時のアドマイヤビルゴ (C)netkeiba.com


――ここ2戦は着差こそ大きくないですが、確実に勝っている感じを受けます。

友道師 武豊騎手の話だと、3〜4コーナーで手応えが怪しくなるところがあるらしいです。調教でもそういうところがあって、今までは「この馬の特性かな」と思ったけど、武豊騎手と「調教から教えるようにした方がいいんじゃないか」という話になりました。

 やっぱりお坊っちゃまで、みんなヨシヨシしているから(笑)。ちょっとガツンと調教した方がいいかな、と思います。明日の1週前追い切りも藤岡康太騎手に乗ってもらってしっかりやろうと思います。(※取材日:1月6日)

――日経新春杯も武豊騎手とコンビを組む予定で、その後も近藤オーナーの遺志を継いでコンビを組み続けるのでしょうか?

友道師 はい、大前提として武豊騎手に乗ってもらいたいと思っています。距離は2000m前後くらいがいいと思っていて、一応いまのところですが、大阪杯を目標にしています。そのためにも日経新春杯は期待しています。

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