師も絶賛のレース運びで次走への展望を大きく広げた
3連単、3連複を筆頭に、日経新春杯の式別の最高配当が計「6通り」も塗り替えられる大波乱の結果となった。
波乱を呼びそうな下地はあった。史上初めての中京コースでの施行。2400mではなく距離は2200m。ハンデ戦とはいえ、GIIながら重賞勝ち馬が4頭しかいない組み合わせ。
波乱の使者となった団野大成騎手とショウリュウイクゾ(c)netkeiba.com
勝ったのは、回避馬が出て出走可能となった53キロの軽ハンデ馬ショウリュウイクゾ(父オルフェーヴル)だった。この5歳牡馬の伏兵は、第1回の特別登録馬22頭中、出走順位22番目の条件馬だった(3勝クラス)。
テン乗りでショウリュウイクゾを重賞初制覇に導いたガッツポーズの団野大成騎手(20)は、自身も17度目の騎乗で新成人の記念となる重賞初勝利だった。
芝コースは3コーナーから4コーナーにかけて土煙の上がるタフなコンディション。団野騎手(ショウリュウイクゾ)は外枠14番だったこともあるが、終始、人気のアドマイヤビルゴ(父ディープインパクト)、ヴェロックス(父ジャスタウェイ)を芝状態の良くない内側に置き、その外で流れに乗る正攻法。(たまたまそういう位置関係になっただけだが)まるで老獪なベテラン騎手のイン閉じ込め策のようなすごい騎乗だった。
「あのレース運びはパーフェクト」と絶賛した佐々木昌三調教師は、次走は2月の京都記念を視野に入れ、「また、団野騎手で行きたい」と早くも展望をかかげたといわれる。
レース全体の流れは「60秒7-(11秒9)-59秒2」=2分11秒8。ごくふつうの2200mらしいバランスだったが、3コーナーから4コーナーにかけ、かなり芝が飛んでいた。最初からずっとインを通った人気上位の3頭は目に見えないスタミナロスがあった。
2着に強襲したタフな6歳牝馬ミスマンマミーア(父タニノギムレット)は、公営当時から再三JRAの芝に挑戦して好走例があり、また、ダートのビッグレースにも出走するなど秘める素質に期待された馬。JRAに転じてオープン入りを果たしたのは昨20年5月の烏丸S(3勝クラス。京都2400m)。3番人気でインに突っ込み、上がり最速の34秒6。外から猛然と伸びた1番人気のショウリュウイクゾに勝っている。
今回は最後方追走から、直線は思い切って大外に回り、ただ1頭だけ上がり34秒台の末脚を爆発させた松若騎手の好騎乗に負うところ大だが、ショウリュウイクゾが勝つなら、ミスマンマミーアが台頭してまったく不思議はなかったことになる。
1番人気のアドマイヤビルゴは、十分に間隔を空けての一戦なのに、当日の馬体重はデビュー以来最少の428キロ(マイナス4キロ)。500キロ級の大型馬のマイナス4キロなど増減のうちに入らないが、体重が減ることが少ない冬場で細く映ったのは誤算。好スタートから理想の好位のインを確保したのも、この日の馬場に限れば正解ではなかった。ムダ肉のつかないシャープな体つきは長所に近い特徴だが、小柄なトップホースだったステイゴールドとは体型も身体能力もタイプが異なるように思える。もう負担重量56キロ以下で出走できる評価の馬ではなく、今後は馬場コンディションと、負担重量がカギになる。
2番人気でアドマイヤビルゴと同じようなレースをして、同じように失速して9着のヴェロックスは、最初から好スタートのアドマイヤビルゴを徹底マークの作戦。自在脚質でどんな位置でもレースのできる川田騎手のお手馬だが、これまでは自分のリズムを大切にすることがテーマで、人気のライバルを徹底マークするようなレースをした経験はほとんどなかった気がする。今回は、前半からヴェロックスと川田騎手のリズムが微妙に合っていなかったように映った。勝ちみに遅いこういうタイプがもっとも難しいのだろう。
3番人気のダイワキャグニー(父キングカメハメハ)は、外から先手を主張したミスディレクション(父ミスキャスト)の2番手を確保したあと、勝負どころ(3コーナー)からのインの芝が良くないことを前半の未勝利戦で分かっていた内田博幸騎手は、できるなら少しでも外に回りたい様子を見せたが、馬群はバラけなかった。ハンデ頭の57.5キロで内々を通らざるを得ない展開になっては、身上の粘り腰不発は仕方がない。
難しい馬場状態で、波乱の結果はハンデ戦なので納得だが、今季の上昇が期待された4歳馬がそろって凡走したのはちょっと残念だった。