▲兄弟対談最終回、最後のテーマは「2020年の総括と2021年の展望」 (撮影:桂伸也)
藤岡康太騎手をお招きしての兄弟対談も今回が最終回。最後のテーマは「2020年の総括と2021年の展望」です。「去年は苦しかった」という康太騎手とは対照的に、キャリアハイをマークした佑介騎手。今それぞれが思っていること感じてることを吐き出し、さらには「明確な目標は持つべきなのかどうか」について持論を展開。兄弟ならではの本音トークは、最後まで目が離せません!
(取材・構成=不破由妃子)
兄の助言を踏まえて見つけ出した目標は…!?
──さて、最終回では、2020年の総括、そして2021年の展望を。
康太 2020年は全然ダメでしたね。毎年言っているような気もしますが(苦笑)。
佑介 去年の康太は、勝てへん時期が長かったよな。毎年、ちょこちょことそういう時期があるけど、去年はとくに長かったような気がする。春先もそうやったし、夏も苦しんでいたし。
康太 秋になって、ちょっとよくなってきたかな…と思ったら、11月の2週目から丸々1カ月勝てなかった(12月は6勝)。さっきも言ったけど、メンタルなのか、乗り方なのか、何かが間違っているということ。それを見つけて、とにかくコンスタントに勝ち星を挙げられるようになりたい。
──佑介さんは、年間68勝で全国リーディング11位。キャリアハイの順位でしたね。
康太 68勝か。上半期のペースが強烈だったから、もっと勝っているのかと思ってた。
佑介 5月までに40勝くらいしていたからね。いかに下半期が勝てへんかったかということ。それまでの秋のように外国人ジョッキーが乗りにきていなかったことを思えば、後半戦は相当物足りない。
──でも、「勝ち星を増やして、常にリーディングの上位に名前を連ねる」という計画は、見事に実行されましたよね。それは本当にすごいなと思って。
佑介 実行はしましたが、そもそも「GIの騎乗依頼をたくさんもらうこと」が目的でしたから、それは叶いませんでしたけどね。ただ、リーディング上位にいることの効果は多々感じました。今まで乗れなかった馬主さんの馬に乗れたりとか、けっこうあったので。だから、物足りなさを感じる一方で、手応えもありました。
秋以降、「なんか元気ないな」とか「最近勝てへんな」とかよく言われたんですけど、それほど成績が悪くないのにそう言われるということは、自分が目指しているところにちょっと近づいてきているのかなって。
康太 どういうこと!?
佑介 2018年だったかな、めっちゃ勝っている時期があって、「絶好調やな!」ってよく言われたんだよ。確かにリズムはよかったけど、そのときに「これくらい勝っても、絶好調やな! って言われない存在になりたいな」と思ったんだよね。
去年、勝ち星自体はその年とそれほど変わらないのに、「最近、勝ててないな」って言われたということは、周りのイメージが変わりつつあるのかなって。
──ある程度、勝っているのが普通の存在になりつつあるということですよね。
佑介 そうです、そうです。そうだとしたら、ひとつ階段を上れたのかな、悪くないなって思ったんです。
だから、今年の展望としては、ひとつ階段を上ったところで「最近、よう勝ってるね」って言われるくらい勝ちたいのと、あとはやっぱり去年は大きいレースにあまり乗れなかったので、GIにより多く乗ること。最近のGIは、決まったジョッキーに依頼が集中するようになってきているので、まずはそこに入っていきたいですね。
康太 答えが明確やなぁ。今、話を聞いていてすごいなと思った。僕の目標はね、いつも一緒なの。「もっと勝ちたい」「もっと上手くなりたい」「ケガをしない」……以上(笑)。やっぱり、もっと明確な目標を持ったほうがいいのかなぁ。教えて、お兄ちゃん(笑)。
佑介 実際に2020年の総括、そして2021年の展望があるかどうかはともかく、なにかを聞かれたときに、なんでもパッと答えられることは大事だと思うけどな。
こういう取材でもそうやけど、たとえば調教師さんに「この馬どう思う?」って聞かれたときとかもね。言霊じゃないけど、口に出すことで心が決まることもあると思うから。
康太 キャリアハイを達成したいとか、もっと重賞を勝ちたいとか思っていることはあるけど、目標としては小さいなと思ってしまう。現状が現状だから仕方がないとはいえ、これだけ勝っている人たちがいるなかで、それが目標なんて今の俺って小さいなって。
だったら、そういうことを目標として掲げるのではなく、ひとつひとつ積み重ねていったほうがいいんじゃないかって思ってしまうんだよね。
佑介 康太らしいというか、なんというか(苦笑)。まぁ、俺の青写真通りにいけば、なかなか旬がこなかったから『with 佑』に呼ぶタイミングがなかった→満を持して呼んで、いろいろしゃべった→しゃべったことによって解放されて、2021年大ブレイク! っていうね。
康太 いいね(笑)。じゃあ1年後、今度は旬のジョッキーとして『with 佑』に呼んでもらえるくらいの成績を残す! これを明確な目標にしよう(笑)。
▲ふたりで出した目標は「旬のジョッキーとして登場すること」 (撮影:桂伸也)
父・藤岡健一調教師に気を遣わせないために!
──ぜひぜひお待ちしております! あとはおふたりにとって、お父さまとのタッグで大きいレースを勝つというのも大きな目標ですよね。
康太 そうですね。
佑介 親父自身が喜んでくれるのはもちろんですが、オーナーさんとか牧場の方とか、親父とのつながりを通して僕らを応援してくださっている方もいて、僕らのどちらかが親父の厩舎の馬で大きいところを勝てば、そういう方たちも喜んでくれると思うんです。そういう方たちの思いに応えるためにも、勝ちたいなという気持ちがあります。
康太 そうだよね。僕は師匠(宮徹厩舎)の厩舎でも大きいレースを勝てていない。だから、師匠の厩舎と親父の厩舎で大きいレースを勝つこと、それは確かに目標だな。
佑介 調教師としては、バランスが本当に難しいと思う。ただの師匠と弟子であれば、なんぼ乗せても「面倒見のいい師匠やな」ということで理解を得られるけど、親子だとそうはいかない。どうしても、「親だから乗せてる」と思われてしまうことがあるからね。だから、周りが思っている以上に、親父は気を遣っているんじゃないかな。
▲2016年に行った藤岡健一調教師との父子対談 (C)netkeiba.com
康太 まぁそれはあるやろうね。
佑介 親父が堂々と俺たちを乗せるためには、「佑介、康太でいい」じゃなくて、「佑介、康太に乗ってほしい!」と言われるようなジョッキーにならないと。前に親父と対談したとき、「お前らが“武豊”だったら、どれだけ楽だったか…」って言ってたし(笑)。
康太 豊さんはレジェンドですから! でも、親父の気持ちはわかるし、「乗ってほしい」と言われるジョッキーを目指したい。
佑介 そうだよな。今日はありがとう。久しぶりにこんなに康太と話したわ。
康太 こちらこそ、ありがとうございました。1年後にまた呼んでもらえるように頑張ります!
(文中敬称略、了)