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【兄弟対談】「年に何回かやってくる、康太騎手が手が付けられなくなる日」/藤岡康太騎手 第3回

  • 2021年01月21日(木) 18時02分
with 佑

▲大ブレイクの可能性を秘める康太騎手、お兄ちゃんにガチ相談!? (撮影:桂伸也)


佑介騎手の弟・藤岡康太騎手をゲストにお招きしての兄弟対談。第3回となる今回は、ディープな話へと進んでいきます。デビュー時から「センスがある」と評判だった康太騎手。GI勝利も早々に果たし、大ブレイクをいまかいまかと待っているうちに……。大爆発のきっかけを、 教えて! お兄ちゃん!!

(取材・構成=不破由妃子)

※本コラムは昨日公開予定でしたが、都合により本日の掲載とさせていただきます。

「家族5人のなかで、康太が一番芯が強い」


──佑介さんといえば、よく後輩ジョッキーから相談を受けているイメージがありますが、やはり康太さんも困ったときはお兄ちゃん?

康太 ん〜、よく後輩の相談に乗っているのは知っていますし、話を聞いてほしいなと思うこともある反面、やっぱり兄弟ならではの照れ臭さがあって話しづらいですね。もともと藤岡兄弟は、ベッタリの兄弟ではないので。

佑介 康太を見ていて「悩んでるんかな」と思うこともあるけど、普通の後輩のように、気軽に「なんかあったんか?」とは言いづらい。俺がちょっとでも違うことを言おうものなら、「そうじゃない!」って反撃されそうやから(笑)。

──康太さんに反撃される佑介さんなんて想像がつかない(笑)。

佑介 いやいや、康太を怒らせたら大変なんですよ。ホントに怖い(苦笑)。僕はものすごくムカつくことがあっても、ご飯を食べるか寝るかすれば「ま、いっか」ってなるんですけど、康太はそうじゃないし。

 とにかく両親を含めた5人家族(藤岡家は3兄妹)のなかで、康太が一番芯が強いというか、我が強いというか……“自分”というものが強いんです。相談事にしても、誰かに話すことで悩みが軽減することってあると思いますが、康太はそういうタイプじゃない。

康太 そう、自分で考えたいタイプ。考えてみれば、相談も含めて、めちゃめちゃ深い話って人にしたことがないかもしれない。悩んだり迷ったりしても、結局答えを出すのは自分だと思っているから。

with 佑

▲康太「考えてみれば、めちゃめちゃ深い話って人にしたことがないかも」 (撮影:桂伸也)


「康太は数少ない華のあるジョッキー、だからこそ…」


──そうなんですね。芯の強さはともかく、康太さんは柔らかいイメージがあるから、「怒らせたら大変」というのは、なんか意外な一面でした(笑)。ジョッキーとしての康太さんには、いつか大爆発するんじゃないか…というイメージがあります。先ほどお話に出た2016年こそ落馬負傷で流れが途絶えてしまいましたが、佑介さんから見て、大爆発につながるスイッチはどこにあると思いますか?

康太 僕もそれは知りたい。教えてお兄ちゃん(笑)!

佑介 反撃はナシで(笑)。「コレ!」というものが掴めて、自信を持って乗り出したときじゃない? トップジョッキーあるあるだけど、調子がいいと勝てる馬は全部勝つ。

 でも、康太の場合、どう乗っても無理やろっていう馬でも勝たせてくる日がある。そうやって手が付けられなくなる日が年に何回かあるよな。ただ、それが長持ちしない。一日で終わったりする(笑)。

康太 エネルギーが…(苦笑)。でも、確かにそういう日があるんだよなぁ。ゲート裏の時点で「今日、勝ちそう」とか思ったり。

佑介 俺はそういう波があんまりなくて、コンスタントにコツコツ勝っていくタイプやと思うけど、康太の場合はガーッと勝つから、そのぶん目立つんだよね。

 あと、勝ち方が鮮やか。それって、ジョッキーとしてすごく大事なことだと最近すごく思う。無難に乗って勝つことも大事だけど、やっぱり華やかな勝ち方は見ている人にインパクトを与える。そういうのって、やろうと思ってできることじゃないからね。その最高峰にいるのがノリさんでさ。

with 佑

▲佑介「康太はガーッと勝つから目立つ、だからこそ…」 (撮影:桂伸也)


──いわゆる「華がある」っていうやつですね。

佑介 そうです。康太は、そういう勝ち方ができる数少ないジョッキーのうちのひとりだと贔屓目なしに思うので。ただ、なぜ自分が勝てたのか、その理由をちゃんとわかっていないと武器にはならない。

康太 難しいこと言うねぇ。

佑介 俺も自分に足りないところだと思ってるんだけど、たくさん勝っているジョッキーって、「なぜ自分が勝てるのか」をみんなわかっているような気がする。セルフプロデュースができているというか、「自分の武器はこれで、こう乗ったから勝てたんだ」という確固たるものがあるんだと思う。それがわかっていないと、波がくるのを待つしかないわけで。

康太 ああ、そういうことか。

佑介 俺も康太もそれがわかれば、もうひとつ上のステージに行けるのかなって。

康太 鮮やかな勝ち方ができるという評価は、勝っているときは聞こえがいいけど、そうじゃないときは「不可解な負け方」だと捉えられてしまうことが多々あって。そういうレースを減らして、安定的に勝ち星を挙げつつ、なおかつ鮮やかに勝つときは誰よりも鮮やかに…。それが理想なんだけどね。

 今、自分に足りないのは、とにかくコンスタントに勝ち星を挙げること。今はそれができていないので、そのためには何が必要なんだろうっていつも考えてる。

佑介 ちゃんと悩んでるなぁ。

康太 はい、地味に悩んでます(苦笑)。どちらかといえば、きっかけ云々ではなく、質を上げたいという思いがある。今のままの自分に、大爆発のきっかけが訪れるとも思ってないしね。ケガがあったにせよ、波に乗れていないということは、何かが間違っているということ。その何かを見つけて、変えていかなければと思ってるよ。

(文中敬称略、次回へつづく)
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JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

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1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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