大目標の安田記念に向け展望がひらけた
出世レースを象徴するように、勝った5歳カラテ(父トゥザグローリー)はこれが重賞初勝利(23戦目)。騎乗した菅原明良騎手(19)は、うれしい重賞初制覇(重賞挑戦3回目)。
種牡馬トゥザグローリー(14歳、父キングカメハメハ)は産駒の初のJRA重賞勝利でもあり(初年度の産駒)、オーナーの小田切光氏(父は小田切有一氏)にとっても初めてのJRA重賞勝ちだった。
重賞初勝利を飾ったカラテ(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規
カラテは、これまで一度も上位人気(1-3番人気)になったことがない不思議な成長過程を辿っているが、2歳新馬デビューが476キロ(遠征の輸送減りもあった)。それが、脚長のためスマートな体型に見せながら、今回の馬体重は530キロ(2走前は536キロ)。4歳後半から一気に本格化してこれで3連勝のまま、一気に重賞勝ち馬となった。
父トゥザグローリーは早くからトップグループで活躍したが、5歳時にも2つの重賞を制して通算【8-2-2-21】。タフな馬だった。カラテの通算成績は【5-0-0-18】。2着、3着がないあたりの成績は、父譲りかもしれない。今回は見るからに絶好調の上がり馬を感じさせる好気配だった。
好位追走となったレース全体の流れはきびしくなく「46秒6-(1000m通過58秒1)-45秒8」=1分32秒4。残り400メートルの標識あたりで前が詰まるシーンがありながら、「11秒6-11秒5」が刻まれた最後の追い比べで抜け出したから、目いっぱいの1分32秒4ではない。陣営が大目標と掲げた安田記念に向け、開花こそ遅かったがさらなる上昇も望めるだろう。
ファミリーは、輸入牝馬ロイヤルサッシュ(父Princely Giftプリンスリーギフト)から大きく発展する一族。祖母レイサッシュ(父パラダイスクリーク)は、名種牡馬ステイゴールドの半妹。3代母ゴールデンサッシュ(父ディクタス)は種牡馬サッカーボーイの全妹にあたる名牝系。
一旦は先頭に立った2着カテドラル(父ハーツクライ)は、前半はなだめて中団の後方で末脚を温存。自身の上がりは勝ち負けに持ち込んだ上位陣では最速の33秒5。最後に頭差競り負けたが、テン乗り田辺裕信騎手の好騎乗で持てる能力全開に近かった。きわめて脚の使いどころの難しいタイプで、これで東京芝コース【0-1-1-3】。いい脚が長続きしない死角がここでも出た印象はあった。得意の左回りでも直線の長い東京より、中京、新潟の内回りの方がより合うだろう。勝ったカラテと同じ、快走は伏兵評価の時ばかりなのは差し馬だけに仕方がない。
中団追走から外に回ってスパートした牝馬シャドウディーヴァ(父ハーツクライ)は、昨年の東京新聞杯2着馬。坂を上がったところでは勝てるか、と見えたシーンもあったが、同じハーツクライ産駒のカテドラルと同じように、高速上がりのレース「最後の600m11秒2-11秒6-11秒5」=34秒3となって、最後までは速い脚が続かなかった。これで全成績は【2-5-2-10】。カテドラルと同じように東京コースは合っている。ただし、脚の使いどころが難しいのも同じなのだろう。
人気の中心ヴァンドギャルド(父ディープインパクト)は好スタートを一度下げて流れに乗っている。レース前に入れ込みに近い気難しい一面を見せたロスもあったが、もっときつい流れを差し切った2走前の富士Sは1分33秒4(自身の上がり34秒6)。安田記念は1分32秒7(上がり34秒8)。今回はレース全体も速いペースではなく、1分32秒7(自身の上がり34秒2)。昨年の東京新聞杯や、他場マイル戦でもっと速い上がりを記録したこともあるが、ディープインパクト産駒の中では、そう切れるタイプではないのかもしれない。また、カテドラル、シャドウディーヴァと同じように、レースの流れに注文がつくのだろう。
4歳サトノインプレッサ(父ディープインパクト)、同じく4歳トリプルエース(父Shamardalシャマーダル)は、それぞれ持ち味を生かして圏内に善戦したが、上昇を期待された4歳馬とするとちょっと物足りなかった。
C.ルメール騎手にチェンジしてきたとなればトリプルエースの評価が高くなるのは仕方がない。現在の騎手界ではごく自然(当然)の流れでもあり、だいたいはそれが正解のことが多いが、今回に限ればさすがに人気になりすぎ…の死角はあったかもしれない。