西野さんと愛馬トリビューン(提供:西野美穂さん)
人と遊ぶのが大好き! 天真爛漫な愛馬
奈良県葛城市の新庄乗馬クラブに、元競走馬のトリビューン(セン10)という馬がいる。JRAの競走馬時代にはシェイク・モハメド殿下の所有馬として走り、現在は株式会社大市珍味の取締役社長でもある西野美穂さんがオーナーとなっている。
「トリビューンは人が大好きで、天真爛漫です。まるで小学生の男の子を見ているような感じですね(笑)」
と西野さん。出会った頃からその性格は変わらない。Twitterには、馬場内に設置されている飛越用の障害の影に西野さんが隠れ、それを見つけた後に嬉しそうに飛び跳ねるトリビューンの動画がアップされている。(※
西野美穂さんTwitterの動画はこちら)
「いないいないばあが大好きなんですよ。飛び跳ねた後にまた戻ってきてもう1回やって! というのをエンドレスで繰り返しています(笑)。可愛いですけど、乗っていても同じような感じの動作をするので、怖い時もありますよ(笑)」
小学生の頃から乗馬に親しんできた西野さんだが、トリビューンのように人と遊ぶ生き物というイメージを馬に対して全く持っていなかったという。
「大学で馬術部にいた頃に携わっていた元競走馬たちは、カリカリしていて人に対して噛むとか蹴るとか攻撃的だったりとか、ビクビクしていたという印象が残っています。それがトリビューンと出会って、元競走馬のイメージが変わりましたね」
西野さんが初めて馬に触れたのは、前述した通り小学生の時だった。
「確か5年生か6年生だったと思います。父親の経営する大市珍味の工場の近くに乗馬クラブがあったのですが、習い事が長続きせえへん子で、でも子供動物好きやし、そこに連れていったら大人しなるやろと親は考えたみたいですね」
両親の作戦は見事的中し、西野さんはすっかり乗馬に嵌った。
「大きい動物が好きだったんです。小さい頃から近所にいた大型犬のセントバーナードにくっついていったりしてましたから。当時は触れ合える動物の中の1番大きい版を見つけて、大喜びだったのだと思います」
大きい動物が好きだったという西野さん(提供:西野美穂さん)
以来ずっと馬に乗り続け、大学でも馬術部に入部。
「どんな障害でも向かっていっていました。今思えばよくあんな高い障害を飛んでいたなと思いますけど(笑)。障害の手前で馬に急に止まられて自分だけ飛んでいったり(笑)、落馬も日常的にあって、多分1週間に1回は落ちてました。幸い怪我はしなかったのですが、あの頃は何も怖いものはなかったですし、例え怪我をしてもすぐ治るという自信もなぜかありましたね」
といった具合にバリバリの体育会系の学生として充実の日々を過ごし、障害飛越競技の試合である程度の結果を残した。
「関西学生(障害馬術大会)では馬のおかげで個人優勝させてもらいました。ただ全日本学生(賞典障害飛越競技)では全く成績が上がらなかったですけどね」
大学を卒業した西野さんは、馬に乗り続ける道を選んだ。
「何か勘違いしちゃったのでしょうね(笑)。馬の勉強をしたいとそのままオーストラリアに飛んで、向こうでかなり有名なトレーナーの厩舎に2年半ほどお世話になりました」
その厩舎のある牧場の中で馬と寝食をともにしながら、試合があるたびに馬と一緒に馬運車で出かけていき、オーストラリア全土を回った。
「ほぼ毎週末競技会という生活でした」
だがオーストラリアでは、厳しい現実に気付かされ、壁にぶち当たった。
「自分にセンスがないのを改めて感じました。皆、家の庭で馬を飼っていて、仕事や学校から帰ったらすぐに馬に乗るとか…。馬ととても近い生活をしている人が山のようにいて、体が馬に馴染んでいるような、うまい人たちが本当にたくさんいるんです。何でこの人たちはこんなにうまいんやろと思って。やっぱり自分にはセンスがないのかなと考えていたところに、父親にもうええやろと無理やり日本に連れて帰られたと言いますか(笑)」
日本に帰国してみると、父が経営する大市珍味への入社手続きが既に完了していた。新規事業の立ち上げとも重なったこともあって、西野さんはしばらく馬から離れ、仕事に打ち込んできた。そして2018年、西野さんは大市珍味の取締役社長に就任する。
「そのあたりから週末に時間が取れるようになったので、また馬に乗ってみようかと思いました」
知人が経営する新庄乗馬クラブに通うようになった西野さんに、天真爛漫なトリビューンとの出会いが待っていた。
ふたたび馬に乗ることになった西野さんを待っていたのは…(提供:西野美穂さん)
(つづく)
▽ 大市珍味 HP
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