待望の国内GI勝利
父子制覇を果たしたダノンスマッシュ(C)netkeiba.com
昨2020年と同じような「重馬場」になり、先手を主張したモズスーパーフレア(父Speightstownスペイツタウン)の前半は、昨年が「34秒2」、今年も「34秒1」。ほとんどリプレイのような展開になったが、今年は雨が降り続いていただけに、かなり走りにくいコンディションだった。
上位6着までに入線した馬のうち、4歳馬は惜しい2着だった1番人気レシステンシア(父ダイワメジャー)だけで、あとはみんなベテランに近い6歳馬だった。厳しいレースを戦い抜いてきた経験が明暗を分けるレースだったのだろう。
勝った6歳牡馬ダノンスマッシュ(父ロードカナロア)は、12月の香港スプリントG1に続いてJRAのGI初制覇。重賞8勝目となった。この高松宮記念は挑戦3回目での待望の国内GI勝利であり、2013年の父に次ぐ父子制覇でもあった。父ロードカナロアも1番人気だった4歳時の挑戦ではキャリアに勝る古馬に屈したが、本物になった5歳時に勝っている。
種牡馬としてのロードカナロア(父キングカメハメハ)は、初年度産駒が3歳に達した2018年以降、今年を含めて総合サイアーランキング「7→3→2→2」位。昨年の2位はディープインパクトのまだ約半額の総賞金獲得額だったが、今年はここまで重賞勝利数も、賞金獲得額もそう差のない2番手につけている。
重賞10勝(うちGI9勝)のアーモンドアイ、重賞4勝(うちGI2勝)のサートゥルナーリア、そして重賞8勝(うちGI2勝)のダノンスマッシュなど、大物産駒の突出した活躍が種牡馬ランキング上位に貢献してきた印象が強く、ここまでGII、GIII勝ち馬は必ずしも多くはない。実際、現4歳、3歳世代の成績はもう一歩のようなところはあるが、ダノンスマッシュのように、5歳、6歳になって本物になる産駒が出現したのは大きい。やがてチャンピオンサイアーの座を争う種牡馬となるだろう。
ダノンスマッシュは互角のスタートから中団の外につけ、好位の外に控えた1番人気のレシステンシアを射程に入れて進む理想の展開になった。なだめて進むほど手応えがあったので、直線に向いて川田騎手は進路を選べる余裕があった。直線残り300m、セイウンコウセイ(父アドマイヤムーン)と、レシステンシアの間に生じたスペースを衝き、レシステンシアと併せ馬の形にしたのが絶妙の騎乗。ダノンスマッシュの1分09秒2の中身は「34秒9-34秒3」の前後半バランスであり、追い込み馬ではないが、スパート態勢になって追って伸びる。この馬場で上がり34秒3は最速タイだった。
一方、再加速できる脚もあるとはいえ、レシステンシアは先にスパートして振り切りたいスピード型。今回の自身の中身は「34秒7-34秒5」=1分09秒2。後半3ハロンの数字とは別に、懸命に追った最後はダノンスマッシュを追い詰めているから惜しかった。この馬場なのでスパートの合図に反応できなかったのが、4歳牝馬と、経験豊かな6歳牡馬の差なのだろう。浜中騎手はこの日、芝の7Rで差しにくい馬場を読み早めにスパートして新人の古川奈穂騎手に差し返され、9Rでも早めに先頭に立って失速。たまたまではあるが、巡り合わせ(流れ)が悪く、メインは逆にちょっと慎重になったか。首差2着は残念だが、4歳のレシステンシアは1200mでもスピード能力は一枚上。スプリント戦なら差す形になっても平気。活躍の場はさらに広がった。
3番人気で3着の6歳牡馬インディチャンプ(父ステイゴールド)は、好スタートから中団で流れに乗り、ダノンスマッシュの内を追走。ただ、馬群のバラける展開でも、そういう距離でもないから、外に回ることはできなかった。直線、巧みに内のスペースからスパートして一旦は先頭に立ったかと思えたが(画面の角度もある)、ゴールの瞬間は明らかに劣勢で「首、首」差の3着。ふつうの馬場なら絶妙ともいえるコース取りだったが、内寄りが悪化していた馬場が味方しなかった。1分09秒3なので良馬場の1200mも大丈夫とはいい切れないが、初距離1200mをこなしてみせた。さすがにGI馬だった。
先行した5番人気のラウダシオン(父リアルインパクト)は、超ハイペースでもないのに失速するのが早かった。これは重馬場の巧拙というより、タフなレースになってトップクラスの古馬相手の厳しいスプリント戦の経験不足が出てしまったのだろう。良さの生きる高速レースではなく、1分09秒も要するパワー(底力)勝負になったのがつらかった。同じ4歳牝馬マルターズディオサ(父キズナ)の敗因も同様と思える。
インの好位にいて残り300mあたりまで争覇圏で頑張っていた4番人気のライトオンキュー(父Shamardalシャマーダル)は、残り1ハロンで急に失速。レース後、鼻出血だったことが発表された。