スマートフォン版へ

見えてきた1兆円超え

  • 2021年04月06日(火) 18時00分

バブル以来の9000億円超え 背景には“巣ごもり需要”


 地方競馬全国協会より2020年度(2020年4月〜2021年3月)の開催成績(速報値)が発表された。総売得額は9122億8711万460円で、前年度(7009億7169万1780円)対比130.1%という大幅アップ。9000億円を超えたのは、バブル景気末期の1991年度に史上最高を記録した9862億3944万9300円以来のこととなった。

 地方競馬の売上はバブルのピーク後、景気の後退とともに下がり続け、2011年度には3314億3768万2700万円と約1/3まで落ち込んだ。この間、地方の競馬場は廃止が相次ぎ、史上最高の売上を記録した当時に“地方競馬30場”というキャッチフレーズで言われていたのが、現在稼働している競馬場はちょうど半数の15にまで減っている。

 それにしても年間の売上総額が3千億円台になった当時は、9千億円台という時代は二度と来ないだろうと思っていた。なにしろバブル経済という異常とも言える状況下でのことで、しかも前述のとおりその後に地方競馬は“廃止ドミノ”ともいえる状態になったのだ。

 しかし2012年度以降は右肩上がりに転じた。2015年度以降は前年比で毎年10%前後の増加となり、2019年度には前年比116.2%まで上昇。2020年2月末からは過去に経験したことのない無観客での開催となり、年度を通じてコロナ禍という状況で過ごした2020年度が、冒頭のとおり前年比130.1%という大幅な伸びとなったことには驚くばかり。「世がコロナでなかったら」という仮定での比較はできないが、地方競馬には“巣ごもり需要”がプラスに働いたと考えられる。

 主催者別で見ると、ばんえい、北海道、高知、佐賀で前年比150%以上を記録。さらに主催者から正式にリリースがあっただけでも、ばんえい、北海道、浦和、船橋、川崎、高知、佐賀で、単年度の売上で過去最高を記録した。

 中央競馬では売上のピークとなった97年には4兆円を突破。その後はじわじわと後退し、2011年には2兆2900億円余りにまで落ち込んだ。それでも2012年から回復基調となり、20年には2兆9800億円余りまで回復した。とはいえピーク時との比較ではまだ74.6%。

 一方、地方競馬の20年度は、前述のとおりピーク近くまで売上を伸ばしたということでは、ネット投票の普及と巣ごもり需要による伸びしろがかなりあったと考えられる。

 さて、21年度の地方競馬は、91年度に記録したピークを上回り、初の1兆円超えとなるのかどうか。前年比で109.7%以上の伸びとなればそれが達成される。

 ぼくはまったくやっていないのだが『ウマ娘』なるゲームが人気になっていて、そこからリアルの競馬に興味を持つファンが増えてきていると聞く。馬券の売上は、そうしたところにまだまだ伸びしろはあるかもしれない。しかし青天井ではない。たとえ1兆円を超えてもどこかで頭打ちになることは間違いない。そうしたときに、かつてのように売上が長く低落するのを抑えるためにはどうすべきか。上昇を続けている今から備えておく必要はあると思う。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング