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【マーメイドS】重賞初制覇! “無駄に引っ張ること”をしない藤懸貴志騎手の好騎乗

  • 2021年06月22日(火) 18時00分
哲三の眼

初の重賞制覇を成し遂げた藤懸貴志騎手 (C)netkeiba.com


マーメイドSは、10番人気シャムロックヒルが勝利! 鞍上は先月のオークスで注目を集めた藤懸貴志騎手、ついに初の重賞制覇となりました。その好走ぶりに哲三氏も「まさにナイス騎乗!」と拍手。駆け引きの中での動きにも注目しながら今回のレースを振り返ります。

(構成=赤見千尋)

いかにスピードに乗ったまま走らせるか


 マーメイドステークスは10番人気だったシャムロックヒルが逃げ切り勝ち。鞍上の藤懸(貴志)君はまさにナイス騎乗! 初の重賞制覇、おめでとうございます。

 斤量50キロという軽ハンデを活かした思い切りのいい騎乗で、気持ちよく逃げたように見えますが、ラップを見るとしっかりとしたペースを刻んでいます。見た目は思い切りのいい競馬をしているけれど、きめ細やかな、繊細なところは残しているなと。ハンデ戦だから勝てたという部分もあるとは思いますが、それだけではないものもあり、とてもいいレースでしたね。

 今回のレースを見ていて、メンバーの中でも一番損になることをしていないと感じます。何が損になるのかと言えば、このコラムでもよく話しているように、『無駄に引っ張ること』です。特に阪神の内回りの2000mでハンデ戦ですから、いかにスピードに乗ったまま走らせるかということが重要であり、無駄に引っ張ってスピードを落とすと再びスピードに乗せるまでにロスが生じるわけです。

哲三の眼

「一番損になることをしていない」と哲三氏 (C)netkeiba.com


駆け引きの中で、抑える扶助操作が少ない


 藤懸君は無駄にスピードを落とすことがなく、スピードに乗った中で落としたいところを落としてコントロール出来ていました。それが道中のラップにも出ているわけで、後ろにいる馬群のライバルのジョッキーたちとの駆け引きの中で、抑える扶助操作が少ないんですよね。今回はハナに行っているからというのはもちろんありますが、オークスの時もそういう風に見えました。あの時は16番人気だったハギノピリナに騎乗して、後ろからのレースでしたが道中無駄に引っ張ってスピードを落とすところがないなと。道中でスピードに乗っているので直線も加速しやすい状況で入って、結果的に3着に好走して大きなインパクトを残しました。

 最近の藤懸君は、そういう風にいい意味で目につく騎乗が多いと感じます。オークスで頑張って結果を出して、GIを勝ちたい! 重賞を勝ちたい! という欲がもっと増えたと思いますし、今回初の重賞制覇というところで、今まで以上に応援してもらっている声が聞こえやすい環境になるはずです。

 僕自身もそうでしたが、普段のレースや特別レースを勝ったりしても「おめでとう」と周りから言っていただきますが、重賞を勝つとお祝いの言葉の数も違うし重みも違って、競馬サークル以外からも聞こえてくると思います。そういうところで、次もまた頑張りたいと強く思えるいい環境になるのではないでしょうか。

 藤懸君は普段の調教も上手いですし、坂路でしっかり時計を刻んで走らせる術があるので、そういう部分が今回活きたかなと。いろいろと研究しているなと感じますし、この夏競馬でもまだ勝てるチャンスが出て来ると思いますから、またいいアピールをして欲しいなと思います。

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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