▲今週からはスタッフさんも登場!厩舎の絆が試される!? (撮影:桂伸也)
ダービー連覇を果たした名手であり、卓越した騎乗技術で多くのホースマンのリスペクトを集めてきた四位洋文騎手が引退して、早1年以上が経ちました。今の肩書は新人の“調教師”。馬から降りた名手の“競馬”へのこだわりは、新たな形で「馬作り」「人作り」「厩舎作り」に着々と活かされています。
netkeibaでは1か月にわたり“四位厩舎特集”を実施。今週からは、四位厩舎のスタッフさんも登場。アンケート取材で飛び出す様々なホンネ……四位厩舎の絆が試されます!
※取材・構成=不破由妃子(四位調教師)、大恵陽子(スタッフ)
開業初日から欠かさない魅惑の“差し入れ”
──今回、四位厩舎のスタッフ11名に緊急アンケートを行いました。「四位厩舎特集」第3回からは、それぞれの回答をご紹介していきますが、その前に、まずは四位調教師に質問です。スタッフのみなさんから、どんな調教師だと思われていると思いますか?
四位 まだよくわからないと思っているスタッフが大半じゃないですかね。出てくるとすれば、「もっとうるさい人だと思ってた」とか、「意外とおとなしい」とか…。この間、若いスタッフに「先生は優しいですね」って言われたんですよ。「今だけだよ」って言ったんですけど(笑)。
──まだ猫を被っているわけですね(笑)。今回、スタッフのみなさんに、四位さんへの要望もお聞きしました。どんなリクエストが上がってくると思いますか?
四位 なんだろう…。厩舎で必要な物があれば、すぐに用意しているし、厩舎のスタッフの休憩所にはお菓子や飲み物も充実してるし、コンビニで甘いものも差し入れしてるし…。文句ないんじゃないですか(笑)?
──毎日、スタッフさんのために差し入れをしているんですか? それはどういった理由から?
四位 藤沢(和雄)先生がね、毎日厩舎にパンなんかを差し入れしていて、僕もやりたいなと思っていたんです。スタッフには毎日、朝早くから馬房の掃除、調教と精力的に頑張ってもらっていますし、調教の合間にでも軽食をとってもらうことで人馬のアクシデントも防げるのでは? という考えなんです。
疲れてくると集中力が落ちますし、馬主さんからお預かりした愛馬に人間のイージーミスでケガをさせるわけにはいきませんので、糖分をチャージしてもらって、集中力を高めてもらっています。
パンだったりドーナツだったり、僕もいろいろ考えて買って行くんだけど、この前、すごく雨が降っている日があって、そういう日は仕事も大変だから、いつもより高いコンビニスイーツを買って行ったんです。そうしたら、あっという間になくなった(笑)。
▲スタッフさん想いの四位調教師 (撮影:桂伸也)
さて、ここからは四位厩舎のスタッフさんが登場。下記のアンケートにホンネで答えていただきました!
【アンケート項目】
●四位調教師からの紹介文
(1)プロフィール:ニックネーム、年齢、担当馬、馬を育てるうえでのポリシー
(2)四位調教師はどんな先生ですか? イメージと違ったところなどはありますか?
(3)四位厩舎ならではと思うことは何ですか?
(4)四位調教師へのご要望があったら教えてください!
【伊藤強調教助手(攻め専)】
●伊藤雄二元調教師の息子さんで、技術的にも人間的にも信頼しているホースマンです。若い頃から伊藤雄二厩舎にはお世話になっていたので、彼との付き合いも長く、開業したら一緒に…という思いはずっとありました。ただ、彼も調教師試験を受けていることを知っていたので、そんななかでウチの厩舎に誘うのは失礼かなとも思いましたが、どうしても力になってほしかったのでお願いしました。ふたつ返事で「いいよ」と言ってくれて、本当に感謝しています。
(1)先生からは「強くん」と呼ばれています。49歳で、先生とは同年代です。攻め専で、厩舎の馬には満遍なく乗りますが、おもに厩務員さんが担当されている馬に乗ることが多いです。先生がお馬さんたちに対してすごく愛情を持っていらっしゃるので、同じような気持ちで「馬に優しく、でも厳しいところは厳しく」というポリシーでやっています。
(2)すごく愛情を持って馬に接してらっしゃいます。大体はイメージ通りでしたけど、仕事で接してみて「本当に馬が好きなんだなぁ」というのがより分かりました。ひと言で表すと「馬が大好きで、愛情を持っている方」です。
(3) ザクッと同じ調教メニューではなく、1頭1頭の個性を見抜いて工夫していると思います。僕たちもそれに対応していかないといけないな、と思っています。
(4)これからみんなで盛り上げていきたいなと思っていて、僕たちはそれをできる限りサポートするだけです。差し入れのお菓子はみんな喜んでいます(笑)。馬にもスタッフにも優しいですね。
【井上泰平調教助手(攻め専)】
●同世代ということもあり、彼のことも20代の頃から知っていました。僕の合格と石坂先生の定年が重なったので、早々に「ウチの厩舎にきてください」とスカウト。快く引き受けてくれました。実は、お互いの子供同士が幼馴染で、昔から家族ぐるみのお付き合いをしています。大学時代に馬術をやっていただけあって、技術については言うまでもありません。事務関係の仕事なども引き受けてくれて、本当に助かっています。
(1)「泰平くん」と呼ばれています。先生と同い年で、誕生日も僕が1週間早いくらいで、先生の娘さんと僕の息子が同い年、同じ幼稚園。さらに妻同士も同い年です。開業のときからタイミングナウはずっと乗っています。調教に乗る上では、「当たり前のことがちゃんとできるように」ということを心がけています。
(石坂正厩舎(解散)では活躍馬にも乗られたのではないですか?)ジェンティルドンナに乗っていました。賢い馬で、走り始めるとちゃんと言うことを聞くんです。でも、GI馬も未勝利馬もみんな同じように扱って、同じように乗るというのは変わらないです。
(2)先生はイメージ通りで、きめ細かな方です。ただ、僕が思った以上に馬を可愛がっていて、そこはちょっとビックリしましたね。
(3)ジョッキーだったこともあり、追い切りのメニューを直感で判断されていて、臨機応変でいいのかなと思います。たとえば「1週前は一杯に追う」などパターンを決めている厩舎も多いですが、四位厩舎では、その日の朝に「この馬は今日はこれくらい」と伝えられます。馬によってはレースの週でも強めに追い切ったり、逆に58秒くらいに抑えておくこともありますね。
(4)全休日の月曜日も厩舎にいらっしゃるので、ちょっと息抜きしてほしいなと思います(笑)。「先生が休んでいてもちゃんとやるから、心配しないでください」と言いたいところですが、馬が好きなんでしょうね。1頭ずつ扉を開けて喋りかけたり触ったりというのを全頭にやってらっしゃいます。同い年ですけど、タフで元気がいいなぁと思います。
【森茂樹厩務員】
●もともと田所厩舎に所属されていたベテランの厩務員さんです。すごく明るい職人さんで、若いスタッフにイジられながらも(笑)、すごく楽しそうに仕事をしてくれています。四位厩舎の雰囲気が明るいのは、森さんのおかげかもしれませんね。ベテランですから、厩舎のありとあらゆることをわかっていて、なんでも積極的にやってくれるのが本当にありがたい。非常に頼りになる存在です。
(1)普通に「森さん」と呼ばれています。59歳で、担当馬はタイミングナウとグリージャです。この世界に入って44年が経ちますが、自分の気が若いせいか、若いスタッフもみんな気さくに何でも言ってくれます。
(2)開業されるまで話したこともなかったんですけど、調教師としても人間としてもすごく尊敬できる先生ですね。調教師なのに、同じ目線で話をしてくれます。素晴らしい厩舎に入ることができたなと思っています。
(3)やっぱり「馬を愛していること」です。みんな馬を愛していて、みんなで頑張ろうという感じなので、それを少しでも手助けできればいいなと思います。
(4)要望なんて全然! 何もないですよ。このままみんな健康で、厩舎が長続きしますように。それだけですね。
また四位調教師から、先日定年で退職された下川鉄男厩務員へのメッセージもいただきました。
「ベテランならではの味なのか、ちょっと気性の悪い馬でも穏やかにしてしまう腕の持ち主でした。短い間でしたが、いつも厩舎の水撒きをしてくれていた下川さんの姿を忘れません。長い間、JRAの競馬を支えてくださった方のひとりです。本当にお疲れさまでした。最後にご一緒できてうれしかったです」
(文中敬称略、次回へつづく)