▲お互いの存在があるから頑張れる…知られざる“盟友”の絆 (撮影:下野雄規)
5月16日の東京9RでJRA通算1400勝を達成したクリストフ・ルメール騎手。武豊騎手の記録を上回る、史上最速での達成となりました。今週末の宝塚記念ではクロノジェネシスの騎乗を控え、さらなる注目を集めています。
そこで今回、ルメール騎手にゆかりのある競馬関係者3名が登場し、それぞれのテーマからその魅力を証言。
最後に登場するのは、盟友・M.デムーロ騎手です。JRAジョッキーになる前からの、20年来の友人。共にJRAのジョッキーとなり、どんな時も支え合ってきたふたりの絆に迫ります。
(取材・構成=不破由妃子)
クリストフの活躍にジェラシーはないです
──クリストフ・ルメール騎手の1400勝達成を記念した今回の特集ですが、最後は盟友であるミルコ騎手だけが知る「クリストフ騎手の素顔」に迫っていきたいと思っています。かれこれ20年近いお付き合いになりますよね。
デムーロ 本当に仲良くなったのは日本で乗るようになってからだけど、僕は若い頃からけっこうフランスに乗りに行っていたので、当時から挨拶はしていました。フランスでは、外国人ジョッキーはなかなか受け入れられないというか、はっきり言ってけっこう嫌われてました(苦笑)。
なかなか馴染めなくて、すごく大変だった。でも、クリストフは当時からちょっと違ってました。同じ年だったこともあって、すぐに話をするようになって、「この人、フランス人ぽくないな」って思ってた。
──日本にきてからは、どんなお付き合いを?
デムーロ コロナの前は、よくご飯を食べに行ってましたよ。
──確か、踊りに行ったりもしてましたよね。
デムーロ そう! クリストフは踊るのが大好き。「ミルコ、おいでよ!」って、何度も呼び出されました(笑)。あとは、旅行に行ったり、釣りに行ったり。お正月は毎年のように一緒にいたしね。そうそう、今度一緒にバイク(自転車)で山に登るよ。
──おふたりで?
デムーロ そう、ふたりで。ホントにプライベートでも仲良くしていて、そういうときに僕たちはいろんな話をします。
去年、僕がなかなか結果を出せなかったときは、すごく心配してくれて、たくさんアドバイスをしてくれました。僕が離婚して子供と会えなくなったときも、「子供と話せてる?」「大丈夫?」ってすごく気にかけてくれて。すごく優しい人です。
▲「いつも気にかけてくれる、すごく優しい人」とデムーロ騎手 (撮影:下野雄規)
──いまや、なんでも話せる存在なんですね。
デムーロ そうです。ライバルなのはレース中だけで、ホントに友達。大事な存在です。今でも困ることがけっこうあるから、そういうときはお互い「どう思う?」とか相談したり。
──愚痴を言い合ったり?
デムーロ はい(笑)。僕はすぐに熱くなるから、競馬のあとも自分の気持ちを出してしまうけど、クリストフは出さない。だから、怒らないイメージがあると思うけど、僕の前ではけっこう気持ちを出すよ。ちゃんと怒ってるし、イライラしてるときもある(笑)。
──心を許している証拠ですね。
デムーロ 彼が上手くいかないときはすごく心配するし、僕が上手くいかないときはすごく心配してくれる。最近は心配されることが多くて悲しいけど(苦笑)。
そういえば、JRAの免許を取って、今週からデビューというときに、クリストフが騎乗停止になったでしょ? Twitterを触ってしまって…。
──いきなり1カ月の騎乗停止でしたね。
デムーロ あのときはすごく落ち込んでいて、とっても心配した。一緒にデビューしたかったから、僕もつらくて悲しくて…。今でもあのときの気持ちは忘れられないね。
──今回、史上最少騎乗回数での1400勝達成となったわけですが、クリストフ騎手の活躍については、どう受け止めていますか?
デムーロ 僕ももっと結果を出したいと思っているけど、クリストフの活躍にジェラシーはないですね。クリストフが勝つと僕もうれしくなるし、もっともっとたくさん勝ってほしいと思う。
1400勝もね、僕のほうが日本に乗りにきたのは早かったから、なんで僕のほうが先じゃないの? と思うけど(笑)、彼はすごく上手いからしょうがない。結果を出せないのは、僕が悪いね。もっと上手くならないと、クリストフのように活躍できない。頑張らなくちゃ! と思わせてくれる存在です。
(文中敬称略、了)