3月14日に行われた中京5レースでのメイショウシンタケ (ユーザー提供:モエロウエクラさん)
11日の小倉2レースでは、メイショウシンタケが逃げ切り初勝利。鞍上は福永祐一騎手でした。同レースを振り返り、相性がいいだけではないと明かす哲三氏。今回は“ゲートを出す技術”に焦点を当て詳しく解説します。
(構成=赤見千尋)
どうしたらゲートを出せるのか…研究していた現役時代
今回注目したレースは日曜日の小倉2レース。4番人気だったメイショウシンタケが逃げ切りで初勝利を挙げました。
メイショウシンタケはすごくいい馬だなと感じていて、以前から注目していました。ゲートで出遅れることが多いのですが、これまで7戦して(福永)祐一君が騎乗した2回は逃げているんです。
3戦目で祐一君が初めて乗って、2200mで逃げる形になり、最後はちょっと距離が長いのかなという感じで5着でしたが、そこから3戦ともやっぱりゲートは出ていないんですよね。
こういう場合、祐一君とは相性がいい、手が合うという風に言われますが、それだけではない技術があると思っていて。僕も現役時代はどうしたらゲートを出せるのかということをすごく研究して、僕なりの答えに辿りつくことが出来ました。ゲートを出すという技術は、ただその場の雰囲気だけで出るわけではないですし、扉が開くタイミングに合わせることは重要ですが、合わせたからといって出るわけじゃないんです。
相性がいい、手が合う…それだけではない技術がある (C)netkeiba.com
僕が思っているのは、このコラムでも何度か話していますが、セッティングというところが大事だと。その馬のセッティングにどう合わせようかということは、ジョッキーみんな考えていることだと思いますが、でもそのセッティングがどういう理論なのか、馬の動きはどういうメカニズムで、どの脚から出せば出やすいとか、どこに重心を置けばその脚から出やすくなるかとか、そういう動きが理解出来ていることが重要だと思っています。
「レース一つ一つに対しての気持ちが強いなと」
祐一君はゲートを出すということに関して、たくさんのパターン、たくさんの選択肢を知っていて、そしてそれが一方通行ではなく、理に適っていると感じます。
午前中の早いレースで、未勝利戦ですが魅せる競馬ですよね。ゲートが出なくて勝ち切れなかった馬をすんなり出して勝ったら、関係者も嬉しいでしょうし、馬券を買っている方にもさらに存在感をアピール出来たのではないでしょうか。
やっぱり気持ちが違うと思うんです。未勝利戦やGIということは関係なく、レース一つ一つに対しての気持ちが強いなと。技術が高いのはもちろんですが、馬が上手く走れていないことに対して、どうすれば上手く走らせられるのかというところをしっかり考えているなと感じます。
先週は勝ち星を量産して、いつも以上に目立っていたように思いますが、結果だけではなく、競馬の内容も良かったです。ゲートを出す技術は見て真似は出来ないし、同じ馬に乗っても他のジョッキーはどう出しているかわからないと思いますね。
今回もよくよく見てもそんなに出そうとしているように見えないんですよ。よくゲートを出そうという時、ジョッキーが押して出そうとするイメージがあると思いますが、そういう感じじゃないんです。みんなが出せない馬を出すんだから、本人も面白いでしょうし、勝ち負けだけじゃない面白さを未勝利戦で見せてくれて、さすがだなと思いました。
日曜日の函館のメイン、五稜郭ステークスは、上位3人(池添謙一騎手、横山武史騎手、武豊騎手)のコーナリングがさすがでしたね。3着だったけれど(武)豊さんの3コーナーの騎乗ぶりは、馬場状態を考えたコーナリングで、回って来る位置を見ていただくと、ちょっと内をすくって来るけれど、内をすくうよっていうことを馬にも見せ過ぎず、普通にコーナーを回っているような感じでした。こういう騎乗は次に活きて来ると思います。
五稜郭ステークスを制したモンブランテソーロ (C)netkeiba.com
ちょっと雨が降って馬場が重くなって来ていたこともあって、トップジョッキーたちのゲートやコーナリングの違いが見え過ぎるくらい見えたなと。特に北海道と小倉が印象的で、「そりゃGI勝つよね」って思いました。夏競馬でこういう技術を見せてもらえたので、またGIの舞台でも見たいなと楽しみになりました。