芸能界のサラブレッド・小堺翔太が地方競馬の魅力を語る!
競馬記者、元ジョッキー、アナウンサー、タレント、お笑い芸人など各界の競馬好きによって構成される「地方競馬アンバサダー」が思い思いのスタイルで楽しむ、地方競馬の魅力を隔週で発信!
この文章を書いている前日にジャパンダートダービーが行われた。結果は12番人気、船橋のキャッスルトップの逃げ切り勝ち。初めての重賞制覇がJpnIという大仕事をやってのけたのは仲野光馬騎手。ケガ等もあり今までの勝ち鞍は決して多くないが、その職人的な騎乗でコアな南関東のファンを魅了してきた。
思えば大井初勝利も10番人気だったヒシサイレンスで挙げたもの。道中のズブさがネックで追いっぱなしになる馬で追い込みを決めて、ファンをアッと言わせたのだった。あの時『仲野にやられちゃったな…』とパドックで声をかけてきた競馬ファンのオジサマはなぜかちょっと嬉しそうだった。
競馬場のパドックには人との垣根を超えさせる魔力がある。同じレースを語り合い、前のレースを反省し合う仲間がいるかと思えば、話したことはないけれどお互いに闘いあっている“同士”の顔なじみがいたり…。おうち競馬で感じるどことない寂しさは、この不思議なコミュニティの温もりを感じられないことから来ているのかもしれない。そして、地方競馬にはそんな競馬ファンを包み込む魅力的なパドックが沢山ある。
南関東の競馬場にも通うようになった頃、初めて川崎競馬場のパドックに立った時、馬との距離の近さにとにかく驚いた。JRAの競馬場でも大満足していた私は、目の前の手が届くような位置にいる名馬と名手たちにとても興奮した。
忘れられないのは2011年・川崎記念でフリオーソを間近に見た時のこと。単勝1.0倍の断然人気。負けられない戦いに挑む彼の集中力。メンコとバンテージが紫色で揃えられていてオシャレで、王者の余裕のようなものも感じられた。レースでも5馬身差、貫録勝ちだった。
2011年川崎記念を制したフリオーソ
温かく迎えてくれたのは高知競馬場のパドック。いつものように立って馬を見ていたら、声をかけられた。高知の言葉。でもそれが「座って見た方がいいよ」と教えてくださっていると気が付いた。
よく見ると周りのファンの方もほとんど皆、座って馬を見ている。現地のファンの方の会話がなんだか心地よく、穏やかな空気に包まれるパドック。声をかけてくださったお父さんは『永森(騎手)の凄さ』や『光る赤岡(騎手)の腕』について教えてくれ、以来、私が高知へ行くたびに握手をして笑顔でお話をしてくださるようになった。お元気だろうか。また高知へ行ったときには、パドックに座って一緒に馬を見たいと思っている。
姫路のパドックには手書きの出走表。「シ」とか「ン」の文字のクセの強さ。濁点の位置にも特徴が。何とも言えない趣がある。水沢の砂のパドックも味があってよかったけれど、今、キレイに直されている最中らしい。全国で唯一の右回り、佐賀のパドックもまた見に行きたいな…
厳しい状況が続いている。今年の川崎記念やかしわ記念、カジノフォンテンの強さを皆で称えたかった。ジャパンダートダービー『仲野がやってくれたなあ…』ってあのオジサマと語りたかった。寂しさは湧いてくる。けれど、これを乗り越えて、またそれぞれのパドックでそれぞれの顔なじみと競馬の話をしながら心置きなく楽しめる日が来ることを心から願っている。
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