今年南関東と兵庫以外の地区では三冠馬もしくは二冠馬が誕生した
12日に佐賀で行われたロータスクラウン賞は、単勝1.3倍の断然人気に支持されたトゥルスウィーが早め先頭から後続を寄せ付けず完勝。1400mの飛燕賞では3着に敗れていたが、1800〜2000mで争われる佐賀三冠では圧倒的な強さを発揮。佐賀が現在の三冠の体系になったのが2018年で今年で4年目だが、2019年のスーパージンガに続いて、牝馬が三冠馬となった。
今年の地方競馬の三冠を振り返ると、南関東、兵庫は混戦だったが、それ以外の地区では三冠馬もしくは二冠馬が誕生した。
もう1カ所、三冠馬が誕生したのはホッカイドウ競馬。昨年、第1回として行われたJBC2歳優駿を制したラッキードリームが、ホッカイドウ競馬史上6頭目の三冠馬となった。一冠目の北斗盃(5月13日)が、全日本2歳優駿(10着、12月16日)以来の今年初戦で、二冠目の北海優駿(6月17日)、三冠目の王冠賞(7月22日)と、今年ここまでに出走したのは三冠の3レースのみ。それをすべて勝ったというのはまず“あっぱれ”でしょう。
ラッキードリームで残念だったのは、王冠賞で三冠を達成した約1カ月半後の9月4日、管理していた林和弘調教師が亡くなられたこと。体調を崩されていたことは以前から聞いていて、王冠賞を現地取材したときにも表彰式には姿があったが、立っているのがかなりつらそうな様子だった。三冠のうちどのレースが難しかったかという問いに、「一冠目の北斗盃」と答え、その後の二冠は自信を持って臨めたという話が印象的だった。
北斗盃は、ラッキードリームがそれまで一度も経験していない門別の内回り1600m。門別の外回り、内回りは、直線の長さが違うだけでなくコース特性が異なり、得意不得意が顕著に現れる。ラッキードリームの場合、ライバルのリーチが同厩舎だったこともレースを難しくした。それでもラッキードリームは直線を向いて先頭に立ち、リーチを1馬身差で振り切った。さらにラッキードリームは、主戦の石川倭騎手が前日のレースで落馬負傷。急遽乗り替わりとなった五十嵐冬樹騎手が、その難しい代役を見事に果たしたという三冠初戦でもあった。
岩手の三冠は、先週の
当コラムで取り上げたとおり。2歳時から重賞5連勝で二冠を制していたリュウノシンゲンが三冠目の不来方賞は3着。芝路線を中心に使われていたマツリダスティールが大差圧勝という、陣営も驚きの強さを見せた。
金沢では、2歳時に門別から転入し、金沢無敗だったアイバンホーが北日本新聞杯を大差で圧勝。続く石川ダービーは突然のゲリラ的な風雨の中、ビルボードクィーンとの直線一騎打ちをクビ差で制した。北陸・東海・近畿交流のMRO金賞はスタートで出遅れ、位置取りを上げていったら、かかってしまい、その勢いのまま1周目のスタンド前で先頭。兵庫のシェナキングに3コーナー過ぎでつかまると直線一杯になって3着に敗れた。金沢は三冠という定義はあいまいで、3歳限定の4つ目の重賞、サラブレッド大賞典にはアイバンホーは出走しなかった。
高知では1400mの黒潮皐月賞を制したハルノインパクトは、その後の二冠は距離延長が課題とされたものの調教で克服。地方全国交流で他地区から4頭の遠征馬を迎えた高知優駿(1900m)は、2着の地元馬に3馬身差をつける完勝で二冠制覇。三冠が期待された黒潮菊花賞(1900m)は地元馬限定で、単勝1.1倍の断然人気に支持された。しかし他馬の厳しいマークに遭って惜しくもクビ差2着。最初の二冠が不良馬場だったのに対し、黒潮菊花賞は稍重だったという、馬場状態の違いも微妙に影響したようだった。
名古屋では中央未勝利から転入したトミケンシャイリが、移籍後は負けなしのまま一冠目の駿蹄賞、二冠目の東海ダービーを圧倒的な強さで勝利。ただ東海地区の三冠はいま微妙な状況にある。先の二冠に加え、笠松の岐阜金賞を加えて“東海三冠”と言われることもあるし、2年前までは名古屋の秋の鞍で“名古屋三冠”と言う関係者もいた。ところが今年、笠松競馬の開催がストップしていたため岐阜金賞は休止。一方、秋の鞍は昨年から地方全国交流の1400m戦となって短距離路線に舵を切ったため、三冠とするには微妙な立ち位置になった。これには岩手のダービーグランプリが2019年から大幅に時期が繰り上げられたことが関係するのだが、これについては話が複雑になるので、また別の機会に譲る。
そして今年名古屋は、西日本地区持ち回りの西日本ダービーの舞台となり、このコラムが公開される9月14日の実施。ただ西日本ダービーの出走馬は、西日本地区の各競馬場でデビューし、他場に移籍した経歴のない馬に限定される(一部例外あり)ため、中央デビューのトミケンシャイリには出走資格がない。地元名古屋所属馬では二冠ともトミケンシャイリの2着だったブンブンマルが出走したが、さて結果はどうだっただろう。
南関東と兵庫は、三冠に中央と交流のダートグレードが含まれるため三冠達成は容易ではない。
兵庫の三冠では二冠目が中央交流の兵庫チャンピオンシップで、しかもおよそ1カ月、1カ月という間隔で行われるため、地元の有力馬が兵庫チャンピオンシップをスキップすることもめずらしくない。今年、一冠目の菊水賞を制したシェナキングも兵庫チャンピオンシップは回避。兵庫ダービーでは直線先頭に立って一旦は勝ったかに思われた。しかしゴール前は内外離れて3頭横一線、ハナ、ハナという写真判定の結果は、大外を追い込んだスマイルサルファーが勝ち、シェナキングは惜しくも2着。それでもシェナキングはその後、前述のとおり金沢に遠征してMRO金賞を制した。
南関東の一冠目・羽田盃は、ホッカイドウ競馬デビューでJBC2歳優駿ではラッキードリームにクビ差2着だったトランセンデンスが5番人気で勝利。二冠目の東京ダービーは、2歳ダートチャンピオンのアランバローズが1番人気にこたえて逃げ切った。とはいえ2着ギャルダルは12番人気、3着ブライトフラッグは10番人気で、3連単43万円という波乱の決着だった。
二冠の勝ち馬がともに回避し、中央勢優位で迎えたJpnIのジャパンダートダービーだったが、重賞初挑戦で12番人気の伏兵、船橋のキャッスルトップが逃げ切って見せた。そのキャッスルトップは、9月15日の川崎・戸塚記念に出走。あらためて真価を問われる一戦となる。