チューリップ賞がアドマイヤキッスで、弥生賞がアドマイヤムーン。去年の今ごろはあの勝負服ばかりだったのに、今年はこればかり。たった1年でこんなに様相が変わるとはと、仲間たちとささやき合ったばかりです。
そして、ここぞというときにきっちり勝ってくれる武豊騎手。今や話題のひとつは、彼が間違いなくその2頭に乗ってくるかですが、まさかトライアルを勝った馬を反故(ほご)にすることはないでしょう。いやいや、まだまだトライアルは残っているし、そこでまたまた勝利したらどうするの?いつものことながら、彼がどの馬に騎乗するかは、春のクラシックレースお定まりのテーマになっています。そんなジョッキー、これまで出会ったことはありませんでした。
アドマイヤムーンの松田博調教師に、本番もこのコンビでしょうねと向けると、そんなこと彼に聞いてよと一笑されてしまいました。とにかく騎手を確保することも、この時期のポイント。武豊騎手に対抗する面々の中からこの人をと思えば、有力馬に前哨戦で騎乗依頼し、なるべく納得のいく結果を残してもらう。そして、その先もと約束をとりつける。調教師さんも、馬主さんの意向をくんで最良のパートナーを獲得しておかなくてはならず、頭の痛いところでしょう。
もっともこれは贅沢な悩みで、そこまでいかない陣営の方が圧倒的に多く、かくしてクラシック出走を確定づける戦いは、残り少ないところで厳しさを増していきます。
トライアルをトライアルと割り切るものは少なく、その結果がそのまま本番につながるとは、到底考えられません。それでも、本番を前に強ければ勝ってしまうのが競馬。その勝ち方が文句ないものかどうかの判断をするときです。取材の中で、その辺の感触をつかめるかどうか。とにかく、今は取材を重ねていかなければなりません。青と水色、ターフに踊る色彩を頭において。