先週の血統ピックアップ
・10/3 スプリンターズS(GI・中山・芝1200m)
好位のインを追走したピクシーナイトが直線で豪快に抜け出し、初のGIタイトルを獲得しました。2着レシステンシアにつけた「2馬身差」は1200mのGIとしては優秀で、過去10年間の当レースでは昨年のグランアレグリアと並んで最大です。3歳牡馬の勝利は98年のマイネルラヴ以来久々。開催時期が秋の中山に移行してからは初めてです。
父モーリスはこれがGI初勝利。スプリントタイプの種牡馬ではありませんが、母ピクシーホロウがキタサンミカヅキ(東京盃2回、東京スプリント)と同じ「キングヘイロー×サクラバクシンオー」なので、1200m戦への適性があります。モーリス自身がそうであったように、産駒も晩成傾向を感じさせるタイプが目に付き、3歳夏に上昇してきた馬は軽く扱うことはできません。
「母の父キングヘイロー」については当欄で繰り返し触れていますが、ディープボンド、アサマノイタズラ、メイショウムラクモ、ヴァイスメテオール、ジョーストリクトリ、キングズガードなど次々と重賞勝ち馬を出しています。ピクシーナイトは3歳秋の時点ですでにこの強さですから前途洋々です。
・10/3 凱旋門賞(仏G1・パリロンシャン・芝2400m)
人気薄の4歳牡馬トルカータータッソが中団追走から差し切って優勝、ドイツ調教馬が10年ぶり、通算3回目の凱旋門賞制覇を成し遂げました(他の2頭は1975年のスターアピールと2011年のデインドリーム)。
勝ち馬は昨年のドイツ年度代表馬で、これまでにベルリン大賞(独G1・芝2400m)、バーデン大賞(独G1・芝2400m)などを制しています。とはいえ、前走までドイツ国外で走った経験がなく、ここ最近のドイツ調教馬は以前ほど国際レースで活躍していない現状を踏まえると、評価するのは難しい馬でした。
道悪が大きな助けとなったのは間違いありません。ドイツは年間のサラブレッド生産頭数が1000頭に満たないのですが、それでいて定期的にこうした大物を送り出すのですからさすがというべきでしょう。
父アドラーフルークはサドラーズウェルズ系で、2020年の独リーディングサイアー。トルカータータッソ自身はアルヤ=アレグレッタ3×4という鮮やかな全姉妹クロスを持ちます。アレグレッタは名牝アーバンシーの母で、名種牡馬ガリレオやシーザスターズの2代母としても有名です。トルカータータッソはこの2頭の血を持たず、それ以外のラインを使って全姉妹クロスを実現しています。
今週の血統注目馬は?
・10/10 六社S(3勝クラス・東京・芝2400m)
東京芝2400mと相性のいい種牡馬はルーラーシップ。2011年以降、当コースで産駒が20走以上した38頭の種牡馬のなかで、連対率28.7%は第1位という優秀な成績です。このレースにはウォーターパルフェ、キタサンバルカン、タイセイモナークの3頭が登録しています。いずれも休み明けなので仕上がり具合に注意が必要です。
今週の血統Tips
秋の中山・中京開催が終了した時点の2歳種牡馬ランキング(中央)を見てみると、今年は大混戦です。収得賞金は1位ドゥラメンテ、2位ドレフォン、3位シルバーステートの順。ドレフォンとダイワメジャーは重賞を勝っています。勝利数もドゥラメンテが13勝とトップに立っており、12勝でドレフォン、ロードカナロア、ハービンジャー、ディープインパクトの4頭が並んでいます。
ディープインパクトは序盤こそ出脚が鈍かったものの、徐々にエンジンが掛かり、9月以降[8-3-0-4]という成績。一気に先頭集団に並んできました。“38戦12勝”という成績の素晴らしさは、ドレフォン(90戦12勝)、ドゥラメンテ(113戦13勝)、ロードカナロア(76戦12勝)、ハービンジャー(83戦12勝)と比較すると一目瞭然です。アベレージが段違いです。
例年通り秋競馬で追いつき、突き抜ける展開が見えてきました。新種牡馬のなかにも高いアベレージをマークしている種牡馬がいます。キタサンブラックです。“38戦10勝”という数字は、ディープインパクトには及ばないものの、それに迫る優秀なもので高く評価できます。新種牡馬は他にもシルバーステートが67戦11勝と、初年度の種付け料が80万円だったとは思えない活躍ぶり。ドレフォンだけでなく今年の新種牡馬は粒ぞろいです。