ダービー馬マカヒキ(牡8歳、父ディープインパクト、栗東・友道康夫厩舎)が、先週の京都大賞典で2016年のニエル賞以来約5年1カ月ぶりの勝利を挙げ、感動を呼んだ。
8歳での勝利は、ダービー馬による史上最年長勝利記録である。また、これは、GI馬による最長勝利間隔記録でもある(1984年のグレード制導入以降。以下同)。
では、すべての馬が対象となる「JRA最長勝利間隔記録」を持っているのはどの馬なのか。
2014年12月13日の2歳未勝利を勝ち、次の勝利が2021年7月11日の障害3歳以上未勝利となったブルーガーディアン(牡9歳、父マーベラスサンデー、美浦・鈴木慎太郎厩舎)である。勝利間隔は6年6カ月28日。
第2位はペルーサ(牡、2007年生まれ、父ゼンノロブロイ、美浦・藤沢和雄厩舎=データは現役時、以下同)で、5年3カ月6日。
3位は5年2カ月16日のアドマイヤセナ(牡、2003年生まれ、父アグネスタキオン、栗東・友道康夫厩舎)で、以下、リュートハーモニー(5年2カ月3日)、アドマイヤコマンド(5年1カ月25日)、ゲネラルプローベ(5年1カ月21日)、ダブルイーグル(5年1カ月17日)、ルー(5年1カ月11日)とつづき、マカヒキ(5年0カ月28日)は、総合では第9位となる。
3位と9位が友道厩舎の馬というのは、この厩舎の、簡単には諦めない姿勢を示していると言えよう。
これを「JRAのレース」に限定すると、マカヒキは2016年の日本ダービーから5年4カ月10日の間隔で京都大賞典を勝ったので、ペルーサを抜いて第2位になる。
しかし、ニエル賞を勝ち鞍から除外して評価するのはどうかと思うので、やはり、ここは総合9位と見るべきだろう。
もうひとつ、今回の勝利でマカヒキが書き換えたのは、「重賞勝利間隔記録」のランキングである。
これのトップ、つまり、「最長重賞勝利間隔記録」を持っている馬は、2014年11月15日のデイリー杯2歳ステークスで重賞初勝利を挙げ、次の重賞勝ちが2020年9月19日の阪神ジャンプステークスとなったタガノエスプレッソ(牡9歳、父ブラックタイド、栗東・五十嵐忠男厩舎)である。勝利間隔は5年10カ月3日。
第2位は、2005年のスプリングステークスから2010年の福島記念まで5年7カ月30日の間隔が開いたダンスインザモア(牡、2002年生まれ、父ダンスインザダーク、美浦・相沢郁厩舎)。
マカヒキは3位で、以下、エーシンホワイティ(4年5カ月9日)、メジロマイヤー(3年11カ月24日)、クルーガー(3年11カ月10日)、エルウェーウィン(3年11カ月2日)とつづく。
しかし、1位のタガノエスプレッソは、上記の2つの重賞の合間に、平地の準オープンとオープン特別、障害未勝利と障害オープンを勝っているし、2位のダンスインザモアは、前記2つの重賞の合間にオープン特別を勝っている。
それに対して、マカヒキは、ニエル賞から京都大賞典までまったく勝利がなかった。マカヒキの3位は、特別な3位と言っていいだろう。
マカヒキは、8歳になった今なお現役ということで、ずいぶんキャリアを重ねたようなイメージがあるが、京都大賞典を終えた時点で通算24戦6勝。歴代のダービー馬には、もっと走った馬が何頭もいる。
1984年以降のダービー馬だけでも、通算33戦4勝のワンアンドオンリー、通算27戦6勝のエイシンフラッシュ、通算26戦10勝のウオッカ、通算27戦9勝のメイショウサムソン(年代の新しい順、以下同)が、マカヒキより数多くのレースを走っている。
それより前も、通算41戦4勝のオペックホース、通算30戦9勝のタニノハローモア、通算25戦18勝のキーストン、通算35戦6勝のコマツヒカリ、通算49戦21勝のハクチカラ(海外を含む)、通算37戦16勝のゴールデンウエーブ(地方を含む)、通算28戦16勝のボストニアン、通算28戦9勝のクモノハナ、通算31戦16勝のヒサトモ(公営を含む)、通算27戦9勝のトクマサ、通算29戦12勝のカブトヤマ――といったダービー馬が、マカヒキより多くのレースを走っていた。
「最長GI勝利間隔記録」を持っているのは、1998年の朝日杯3歳ステークスのあと、2002年の安田記念を勝ったアドマイヤコジーン。間隔は3年5カ月19日だった。
「記録更新に期待する」などと言うと「無理だ」という声が聴こえてきそうだが、思いを重ねるのは自由だ。
もう1度、いや、2度でも3度でも、「強いマカヒキ」を見てみたい。