アカイトリノムスメと福田好訓助手(撮影:下野雄規)
秋華賞を制し、エリザベス女王杯へと向かうアカイトリノムスメ。2010年に牝馬三冠を達成した母アパパネと母娘での秋華賞制覇は史上初の快挙となりました。そんなアカイトリノムスメを担当するのは、現役時代のアパパネも担当していた福田好訓助手。“ムスメ”の成長を感じたことや、母娘の共通点などを伺いました。
(取材・文=赤見千尋)
※このインタビューは電話取材で行いました。
ムスメは母より父似!?
──秋華賞制覇、おめでとうございます。勝った瞬間はどんなお気持ちでしたか?
福田 ありがとうございます。ゲートに行っていたので、そこから戻る車の中で見ていました。勝った時はすごく嬉しかったです。この馬自身がGIを勝ったことも嬉しいですし、自分が担当させていただいたアパパネの仔で勝てたというのも嬉しいです。ファンの方々も喜んでくれたと耳にしましたし、本当に良かったなと思いました。
──アカイトリノムスメ、というお名前ですが、普段は何て呼んでいるんですか?
福田 ムスメです。そのままですね。
──アパパネに似ている部分はありますか?
福田 顔はそっくりですよ。競馬場ではメンコをしているのでわかりづらいかもしれませんが、本当にそっくりです。あと人懐っこいところもよく似ていますね。どっちもとても可愛いということが共通点です。
性格は真逆で、アパパネはいつも落ち着いていて堂々としているタイプ。どちらかというとどっしりとした男馬のような雰囲気で、競馬場に行ってもピリピリするようなところがあまりなかったです。逆にムスメの方は繊細で女の子らしいタイプ。何か気になることがあると一気にテンションが上がったり、音に敏感なので新馬戦からメンコを着けています。アパパネそっくりの顔なのに、競馬場では素顔を見せられないんですよ。
左がアカイトリノムスメ、右がアパパネの秋華賞(C)netkeiba.com
──以前アパパネのお話を伺った時、馬房でよく寝ていると仰っていましたが、そういう部分はいかがですか?
福田 性格と同じく普段のしぐさもあまり似ていないですね。お父さんのディープインパクトの方がより強く出ているのかもしれません。どちらかというとアパパネは女の子としては珍しいタイプなんだと思います。レースを使ってもしっかりご飯を食べてくれたので、牝馬によくある食の細さに悩まされることもありませんでした。ムスメは繊細な分、食べさせることにも気を使いますが、この仔なりに成長していると感じます。
──性格の違いがあっても母娘でのGI制覇ということで、能力の高さは遺伝していますね。
福田 GI馬の子供だからといっても重賞を勝つことも簡単ではないですから。その中でGIを勝つというのはなかなか出来ることではないので、いい経験をさせていただいて本当に感謝しています。
自分のペースで成長していってくれたら
──デビューから振り返って、特にどの辺りに成長を感じますか?
福田 最初の頃は全体的にひ弱なイメージだったのですが、デビュー戦を使った後に3連勝して、徐々に体幹がしっかりしていったと感じます。この秋に戻って来た時には体重自体はそこまで春と変わっていないのですが、ひと夏で横に幅が出て、馬体に伸びが出ました。体が成長したことで、さらに体幹もしっかりして来ましたね。まだまだ良くなる余地はあると思います。
体が成長して体幹もしっかりしてきた(C)netkeiba.com
──次走はエリザベス女王杯ということで、現在の状態はいかがですか?
福田 長距離遠征であれだけのレースをしてくれましたし、エリザベス女王杯まで間がないですから、しっかりとケアをしつつ仕上げている段階です。一週前追い切りはWコースで3頭併せで行いました。今回も順調です。
──母アパパネが勝っていないエリザベス女王杯にムスメが…と思ってしまうのですが、福田さん自身はどんなお気持ちで挑みますか?
福田 お母さんが偉大過ぎるのでね、どうしても比べられてしまうんですけど、この仔はこの仔なりにいつも一生懸命頑張ってくれて、徐々に成長していますからね。アパパネは完成するのが早かったですが、ムスメはこれからさらに成長していく余地があると思います。レースに関してはアパパネや他の馬たちでいろいろな経験をさせていただいたお陰で、人間がプレッシャーを感じることは少なくなりました。ムスメには今まで通り自分のペースで成長していってくれたら、という想いが一番強いです。
(※文中敬称略)