ジャングルポケットの斉藤慎二さん(撮影:福井麻衣子)
競馬番組のMCを務め「競馬なしでは生きていけない」と公言するなど、大の競馬好きとして有名なお笑いトリオ・ジャングルポケットの斉藤慎二さん。5月にYouTubeチャンネル『ジャンポケ斉藤、ジャングルポケット産駒を買う』を立ち上げ、その後実際にジャングルポケット産駒を購入! 夢の馬主デビューを果たした斉藤さんにご自身の“競馬愛”について語っていただきました。
(取材・文=松山崇)
とんでもない名馬の名前をつけてしまったな、と
──まずは、YouTubeチャンネル『ジャンポケ斉藤、ジャングルポケット産駒を買う』を立ち上げた経緯から教えてください。
斉藤 もともと競馬のYouTubeを始めたいという構想があって、周囲に相談していました。そのタイミングでジャングルポケットが亡くなってしまい、「このままでいいのかな、(ジャングルポケットの)名前を残せないかな」と考えるようになったんです。そして行き着いた結論が、「ジャングルポケット産駒を買って馬主になる」でした。
──ジャングルポケットが亡くなっていなかったら、この企画は生まれていなかったわけですね。
斉藤 はい。競馬に関するYouTubeは始めていたと思いますが、馬主になるという企画は絶対になかったですね。
──現役時代からジャングルポケットのファンだったのですか?
斉藤 実はジャングルポケットが現役の頃、僕は演劇に夢中だったんです。舞台か恋愛かという感じで、正直、少し競馬から離れていた時代でした。ジャングルポケットと名乗るようになってから改めて戦績を振り返って、「とんでもない名馬の名前をつけてしまったな」と。僕らが壮絶に滑ったら、競馬を知らない人には「ジャングルポケットって弱い馬だったんだ」となりかねないので。
ダービー、ジャパンカップを制したジャングルポケット(撮影:下野雄規)
──どういう経緯で、ジャングルポケットというトリオ名になったのですか?
斉藤 僕はトリオ名の候補として、大好きだったドリームパスポートを挙げていました。ただ、今では信じられないかもしれませんが、当時の序列は、おたけ、太田、ちょっと離れて僕だったので、即、却下されてしまったんです。あの二人がコンビをやるというところに僕が加わった形なので、おたけが権力を持っていたんですよ。1か月でそれが全て覆りましたけど(笑)。
──ジャングルポケットというのは、おたけさんの案だったんですね。
斉藤 そうです。おたけが「ジャングルポケット。略してジャンポケっていいよね。そしていつか、ネットの検索で競走馬よりも上にくるようにしよう」と。その時ばかりは、おたけが素晴らしい意見を言ってくれました。それから15年間、これを超える意見を聞いたことはありません。
──その言葉通り、今や検索最上位にお笑いトリオのジャングルポケットが表示されるようになりました。
斉藤 トリオ名がジャングルポケットに決まった後、とある取材の相手が競馬に詳しい方で、「ジャングルポケットは東京競馬場で強い馬でしたよね。ジャングルポケットというトリオ名は『東京で負けないぞ』という気持ちでつけられたのですか?」と聞かれて、3人揃って「はい」と即答していました(笑)。今では体を張った仕事も多いですし、僕以外の2人はめちゃくちゃ体を鍛えていますから、「密林を生き抜く」みたいな意味でもピッタリだったなと思っています。
おたけの立ち位置のホクロだけ小さかったのが気に入った(笑)
──ここからは馬主としての活動について伺います。『ジャンポケ斉藤、ジャングルポケット産駒を買う』の初投稿が5月1日で、直後の5月11日のHBAトレーニングセールに参加されましたよね。いきなりのセリ、しかもオンラインビッドということで、かなり緊張されたのでは?
斉藤 そんな大きな買い物をしたことがないですし、パソコンの操作も苦手なので緊張しましたね。そして何より、生配信での視聴者数が18000人というのを観た瞬間、怖くなりました(笑)。ライブの視聴者数がどんどん増えていって、「落とせませんでした」ではシャレにならないぞ、と。
──その思いも虚しく、狙っていたミフユの19(牡)は、途中まで競ったものの、最終的には480万円(税抜き)で別の方が落札されました。
斉藤 どんどん競り上がっていって、あたふたしているうちにハンマーが落ちてしまい…本当に、一瞬の出来事でした。正直な話、予算もオーバーしていたので、色々な考えが頭を駆け巡っているうちに…。
あたふたしているうちにハンマーが…。(撮影:福井麻衣子)
──テンパっている斉藤さんを観て、視聴者は爆笑だったと思います。ちなみに、これは台本ではないですよね?
斉藤 一切、台本無しです。スタッフの方とも、「企画が動き出した以上、絶対に落とさないとね」と話し合っていたので、落とせなかったのは、ひとえに僕の準備不足、根性不足です。
──予算もオーバーしていたということですが、競り負けたことが分かった時の心境は「ホッとした」ですか? それとも「やっちゃった」ですか?
斉藤 「やっちゃった」ですよ。こんなにたくさんの人が観てくれてるのに、大変なことになったな、という。その後、コロナに罹患して、予定していたサマーセールにも参加出来ず、「どうやって巻き返していこうか」と頭で考えるけれど体がついていかない、そんな辛い時間もありました。
──最終的には庭先取引でハロウィーンの20(牝)を購入されました。こちらの経緯についても教えてください。
斉藤 一目惚れですよね。かわいらしくて、馬格もある。そして何より、あのホクロ。
──顔面に3つのホクロがあるんですよね。
斉藤 はい。しかも、おたけの立ち位置のホクロだけ小さかったのが気に入りました(笑)。先日、門別競馬場の田中淳司厩舎まで会いにいきましたが、最高でしたね。僕が今まで取材に行った中で、あんなに懐いてくれた馬は初めてで、その瞬間に「この馬にしてよかったな」と再確認しました。
斉藤さんと愛馬ハロウィーンの20(提供:村上卓史)
「地方と中央の壁を壊したい」
──今後のスケジュールは決まっていますか?
斉藤 既に入厩して、トレーニングを開始しています。順調なら4月デビューを目指して、まずは3月の能力検査を受けられれば。デビュー戦は、スケジュールが合えば現地観戦したいと考えています。
──門別デビューなら、認定競走を勝ってJRAで出走という可能性もあります。目標とするレースなどはありますか?
斉藤 ウイニング競馬のMCをさせてもらっているので、JRAで走るところを放送できたらという夢はあります。あと、船橋で走らせたいですね。初めて行った競馬場が船橋競馬場で、営業マン時代には船橋のららぽーとにしょっちゅう足を運んでいました。それぐらい地元なので、(みどりのマキバオーの)サトミアマゾンのように船橋を盛り上げたいですね。
──サトミアマゾンも船橋を盛り上げるという使命を背負っていましたもんね。
斉藤 僕がYouTubeをやるうえでの目標の一つとして、「地方と中央の壁を壊したい」があるので、まずは、この馬をきっかけに門別競馬場に興味を持ってもらえれば嬉しいです。もしかしたら注目を集めて1倍台の人気になるかもしれないし、それに対して逆張りをする人がいるかもしれない。そうやって馬券の売上にも貢献できたら最高ですよね。
「この馬をきっかけに門別競馬場に興味を持ってもらえれば嬉しいです」(撮影:福井麻衣子)
──では、最後に競馬ファンの方へメッセージをお願いします。
斉藤 この企画が立ち上がった時、「途中で投げださないでくださいね」「最後まで面倒みれるのですか?」というコメントをたくさんいただき、そのコメントに、皆さんの競馬愛を強く感じました。もちろん僕自身、最初からそのつもりなので安心してください。
おかげさまで半年でチャンネル登録も7万人を超えました。それだけの人と夢を共有出来るのであれば、けっして安くはないけど、意味のある買い物だったと思っています。この体験を通じて、より競馬を好きになってもらえると嬉しいですね。
(文中敬称略)