▲昨日の有馬記念を制したエフフォーリア (撮影:下野雄規)
JRAは11月18日、2022年度の事業計画と予算案を経営委員会で議決した。予算総額は3兆1303億3540万4000円で前年比5.5%増。馬券の売り上げが好調に推移している一方、新型コロナウイルス感染問題を考慮して、21年度予算が9年ぶりの減額とされた“反動”もあって、5%を超える規模拡大となった。
馬券の売り上げは3兆20億4800万円と想定。予算ベースで年間売り上げが3兆円を上回ったのは01年度以来、実に21年ぶりだが、今年12月19日時点での売り上げは2兆9508億5461万2400円で前年比3.2%増。このペースで行けば、最終的には3兆800億円前後に達する見通しで、22年度は今年より3%減らない限りは予算割れを回避できる。
地方競馬や他種公営競技も好調で、コロナ禍の渦中に注目された「巣ごもり需要」は、社会全般が段階的な日常回復に向かう中でも消えていない。
こうした中で、JRAが各種支出拡大の方向に動くのは、ある意味で当然の流れだ。JRAは売り上げの約75%を馬券的中者に払い戻し、10%を国庫納付(第1国庫納付金)した上で、残った約15%で事業を運営する。利益(剰余金)が出た場合は、50%を改めて国庫納付(第2国庫納付金)する。
必死で経費を切り詰めても、50%は国が持って行く構造であるため、剰余金の極大化は競馬界全体にとっては賢明な策とは言えない。業界内で循環すべき資金が国に吸われるからだ。その意味で、レースの賞金に代表される運営費の増額は、基本的には合理的な姿勢といえる。
JC、有馬記念は北半球の芝最高に
特に、賞金・手当は馬主や厩舎関係者の懐を暖め、馬主にとっては馬への再投資の原資となるため、増額は肯定的な流れには違いない。ただ、中央競馬では非競走的な手当が分厚く設定されており、これらの膨張はともすれば競馬界全体の構造を歪める結果を招きかねない。今回は22年度の賞金・手当増額の具体的内容を見た上で、問題点にも触れる。
賞金・手当の総称である競走事業費は22年度の総額が1492億6700万円で、前年比4.9%増。まず、目玉と言うべきGIの賞金増額の内容を見ると、ジャパンC、有馬記念の両看板レースが、21年までの1着3億円から4億円に増額となった。世界的に見て、4億円の優勝賞金はどの程度の位置づけか。