ボートレース(競艇)の2021年度の売上げが、先週土曜日、3月5日までに2兆2168億3216万1100円となり、過去最高を更新したという。これまでの年度売上げ最高額は1991年度の2兆2137億4629万900円。バブル経済がピークを迎えたと同時に終わりに向かっていたころのことだ。その後は減少に向かい、2010年に8434億円と底を打ってから、再度右肩上がりに成長してきた。
昔からギャンブルは不況に強いと言われているが、それにしても、コロナ禍のなか、バブル期を超えてしまったことには驚いた。
2兆2000億円台というと、JRAで初めてそこに乗せたのは1988年。タマモクロスとオグリキャップの芦毛対決がヒートアップした年だった。その後、1997年に4兆円を突破してピークを迎えてから、緩やかな減少に転じる。2011年に2兆2935億7805万3600円まで下がり、そこからまた少しずつ売上げが増えていく。東日本大震災が発生した2011年は、オルフェーヴルが史上7頭目のクラシック三冠馬になった年でもある。
競艇は4月から翌年3月までの年度単位の集計で、JRAは1月から12月までと時期にズレはあるものの、タマモとオグリが激突した年や、オルフェが三冠馬になった年の中央競馬と同じくらい舟券が売れているわけだから、やはりすごい。
地方競馬は競艇と同じく年度単位の集計で、1991年度の9862億円強が過去最高。2021年度は初の1兆円超えが期待されている。十分以上に立派な数字だが、それでも競艇の半分以下の規模である。地方競馬が苦戦しているわけではもちろんなく、とにかく、競艇の売上げ上昇が著しいのだ。私のアンテナが鈍くなっていて気づかなかっただけで、今、競艇ブームが来ているのかもしれない。いや、とっくに来ていて、それが明らかな数字となって目に見えるようになってきた、ということか。
なぜ、競艇がこれほど人気を集めているのだろう。
最近、テレビで好感度の高いタレントを起用したCMをたびたび目にするが、それだけで売上げが伸びるのなら苦労しない。それをきっかけとして競艇に目を向けさせ、興味を持って参加してみた人をリピーターにしてしまう魅力があるのだろう。
私はここに「競艇」と記しているが、ネットでは「ボートレース」というカタカナのほうが多く使われている。サイトを見ると、綺麗なボートレース場が多いし、平和島の牛もつ煮込みなど、メシも美味そうだ。舟券はそのまま「舟券」のようだが、若い人に受け入れられるよう、横文字を上手く使って、新しいレジャーであることをさりげなく強調している。何よりいいのは、1レースが6艇だけで争われるので、当たりやすいことだ。
「登場人物の少ない推理小説ほど優れた作品である」
たぶん20年ほど前のことなので記憶があやふやだが、キャスターの徳光和夫氏が、そう言いながら競艇場で舟券を買っている様子をテレビで見たことがあった。例外的に、横溝正史作品のように登場人物が多くても質の高い推理小説もあるが、確かに徳光さんの言うとおりである。
6艇という少ないボートによる競走だからこそのドラマや意外な結末があることも想像がつく。1号艇から6号艇までのカラーは、競馬や競輪(6番車までは同じ)などと同じだから、ほかのギャンブルから流れてくる客を取り込みやすい。
巨人、箱根駅伝、そして競馬と、徳光さんの好きなものと私のそれには重なるものが多いので、やってみたらきっとハマるだろう。考えてみたら、すべてのギャンブル場で自宅兼事務所から一番近いのは平和島競艇場(ボートレース平和島)である。なのに、2〜3回しか行ったことがない。
ボートのメカニズムなども勉強して、競艇ミステリーを出すことを目標にしてもいいかもしれない。真保裕一氏や風見玲子氏、たけなかただかつ氏が競艇を題材とした小説を書いているようだが、今やることにも意味があるはずだ。
さて、先週、JRAの新人騎手がデビューし、角田大河騎手が初陣から2連勝という華々しいスタートを切った。藤田菜七子騎手が今週から栗東を拠点にすることになり、新人の今村聖奈騎手を含め、JRAの4人の女性騎手はみな関西をベースに騎乗することになったわけだ。彼女たちの活躍にも期待したい。