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今年のサラブレッド市況はどうなるか?

  • 2022年03月10日(木) 18時00分

競走馬生産への影響が懸念されるウクライナ侵攻


 我が国のサラブレッドとアラブを合わせた軽種馬生産頭数がピークに達したのは、世の中が空前のバブル景気に沸いた直後の1992年のこと。この年は合わせて12874頭に達し、うちサラブレッドだけでも1万頭を超えていた。

 今ではおよそ考えられない数字だが、当時は競馬場の数も今よりずっと多く、それだけ需要を見越しての生産頭数であった。だが、その後、バブルは崩壊し、中央競馬こそ1997年まで馬券売り上げは伸び続けたものの、地方競馬は徐々に売り上げが下降線を辿り始め、やがていくつもの主催者が競馬事業から撤退し、廃止される競馬場が続出した。

 それに伴い、軽種馬需要にも陰りが見えるようになり、思うように売れない時代に突入する。生産頭数の推移を見ると、馬券売り上げや世の中の動向が大きく反映していることが分かる。

 2012年〜2016年の5年間、サラブレッド生産頭数は6000頭台で推移していた。その後、需給バランスが均衡してくるにつれて徐々に生産頭数も少しずつ増加に転じ、2017年には6年ぶりに7000頭台まで回復した。

 さらにその後、市況が好転するのに伴い、サラブレッド生産頭数はじわじわと増え続けており、2020年には7556頭まで数字を伸ばしてきている。2015年が6858頭だったので、5年間でおよそ700頭の増加ということになる。

 おそらく、2021年の生産頭数は、これよりもさらに増えているだろう。正確な数字は血統登録の最終締め切りである1歳12月末まで待たねばならないので、来年1月になるだろうが、おそらくは7700〜7800頭くらいにもなっていそうだ。

 ところが、ここに来て、競馬のみならず、日本経済の根幹をも大きく揺るがしかねない事態が勃発した。ロシアによるウクライナ侵攻である。

 今日の時点では未だウクライナの首都キエフは陥落していないものの、周知のように国内各地にロシア軍が侵入し、ウクライナ軍との間で壮絶な戦闘が繰り広げられている。一般市民への被害も増大する一途である。国外に避難したウクライナ国民はすでに200万人を超えると伝えられる。

 第二次大戦後最大の危機とも言われ、多くの資源を海外からの輸入に依存する日本にとっても大きな影響が及ぶのは必至だ。核の限定使用なども取り沙汰されるほどの事態である。

 親しい生産者の1人は「馬の売れ行きに陰りが出てくるのでは?」と心配する。「ガソリン、軽油のみならず、配合飼料もその他の生産資材も価格が上がり、生産コストは確実に上昇すると思う。百歩譲ってそれは何とか我慢できたとしても、この先、サラブレッドの需要がどうなって行くのかが見えない」と憂慮する。

 新型コロナ禍による影響は、少なくともサラブレッド生産に関する限りは、最小限度に抑えられた。それどころか、逆に巣ごもり需要にも後押しされて馬券売り上げは絶好調で推移し、新たな馬主層による旺盛な購買意欲にも支えられて、昨年、サラブレッド市場の取引成績は史上最高の数字を残した。

生産地便り

生産地では多くの当歳が誕生している


 すでに生産地では数多くの当歳が誕生している。また総じて例年以上に種付け開始時期が早まっているとも聞く。3月に入って国道を行き交う馬運車を随分見かけるようになった。

 今誕生している当歳馬がレースにデビューするのは2024年のこと。それまでには、新型コロナもウクライナ紛争も何とか終息していることを願わずにはいられない。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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