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楽しみながら引退馬支援ができる! 引退馬たちの“競馬ごっこ”「ソフト競馬」って?(2)

  • 2022年03月15日(火) 18時00分
第二のストーリー

ソフト競馬での優勝経験があるキョウエイボーガン(C)netkeiba.com


より多くの馬たちに生きる道を…


 前回のコラムで述べたが、『ソフト競馬』は動画で参加するイベントなので、どこにいても出走することができるのが大きな特徴だ。ソフト競馬代表の福元弘二さんによると、オーストラリアからご自分の愛馬とともに参戦する人もいるという。馬に騎乗せずに曳き馬でも参加できる。そういう意味ではソフト競馬ならほぼ誰でも騎手になれるということだ。

 馬柱には、馬名と騎手名(ニックネーム可)も記載される。騎手の夢が叶えられなかった人も、ソフト競馬ならその夢は実現可能なのだ。

 ルール上、どの馬が勝ってもおかしくないというのもソフト競馬の魅力なのだが、中には勝負運の強い馬もいる。去年はジョージ(競走馬名カラスカミカゼ)というアングロアラブの33歳馬(今年で明け34歳)が4勝。もう1頭ハセノビリーブ(父ステイゴールド)という元競走馬も4勝したが、2着の回数の差で参加馬中最高齢馬のジョージが年間の1位に輝いた。

 今年1月1日に亡くなった、認定NPO法人引退馬協会のフォスターホースのキョウエイボーガン(チカコ・デブーコ騎手)も、2018年のソフト競馬『第二有馬記念』で優勝している。福元さんは、ボーガンが亡くなった翌日、群馬県の乗馬クラブアリサに弔問に訪れている。

■2018年の第二有馬記念

「現役時代のボーガンのレースを見ているので、そういう馬が名を連ねてくれたのは嬉しかったですね」

 とボーガンへの感謝の気持ちを口にした。

 出走馬は常連のほか、少しずつ新しい馬が増えてきた。

「最近は観てくれている人が知り合いにソフト競馬を紹介してくれるというパターンがありますね」

 以前は引退馬支援ということで出走馬は元競走馬メインだった。

「でも今は馬事文化の支援を含めた形にしているので、元競走馬ではなくても出走できます。ポニーの参加もありますよ」

 昨年の前半からYouTubeの収益化も実現した。

「収益化するには、チャンネル登録者数が1000人以上、トータルの視聴時間が4000時間以上という条件があるのですが、それをクリアしたので、『おひねり』をいただくことができるようになりました(おひねりは出走手当として、おひねりをもらった出走人馬に付与される)。実は今回の取材の前日に登録者数が2000人になったのですよ」

 福元さんは嬉しそうだった。

「『おひねり』はライブ配信を観ている方が、応援したい馬にコメントと合わせてクレジットカードなどでお金を入れられる仕組みです。支援いただいた『おひねり』のうち、75%はその馬の関係者にお送りし、残り25%はソフト競馬の運営資金等に充てさせていただいています」

『おひねり』のほか出走馬の『ばけん』(100円)も販売しており、こちらも売り上げの75%を出走手当として出走関係者に渡るようになっている。

 ウマ娘効果も感じるという。

「先ほどお話ししたキョウエイボーガンが勝った第二有馬記念には、ナイスネイチャやハルウララも出走しているんですけど、ウマ娘をされている方がウマ娘に出ている馬を検索するとたまたまソフト競馬にヒットすることがあるみたいなんですよね」

 福元さんに今後の目標を尋ねた。

「最終的な目標は中央競馬、地方競馬、ソフト競馬というように、ソフト競馬を第三の競馬という位置付けにしたいです。そして1回の出走手当を各馬50000円以上にしたいと考えています。現在『おひねり』と『ばけん』から支援に回すのが1頭につき3,000円から5,000円平均なのですが、今年1月5日に公開された第5回愛馬(あいま)記念は全馬出走手当が10,000円以上になったんですよ。今後金額を増やしていって、ゆくゆくは50,000円平均にしたいんですよね。

 地方競馬は月2回走れば、預託料はペイできると言われています。ソフト競馬も同じように月2回出走できれば手当が50,000円×2で100,000円になるので、預託料分くらいになると思います」

 ソフト競馬出走で月100,000円が付与されれば、もしオーナーの経済状況が苦しくなっても、愛馬を手放さなくて済むかもしれない。競走馬を引退しても、乗馬の適性がなくても、ソフト競馬なら馬が自分の食い扶持を稼ぐことができる。これが可能なら、もっと多くの馬たちに生きる道が与えられるはずだ。

 そして最後に福元さんは感謝を伝えた。

「仕事をしながらソフト競馬を配信できているのは、参加してくださっている皆様、観てくれている皆様、そしてボランティアで私のお手伝いをしてくださっている皆様(『ソフトスタッフ』数名)のおかげです。本当にありがとうございます」

 参加する人も観る人も、ほのぼのとした気持ちにさせてくれる『ソフト競馬』。

 お気に入りの馬を見つけて応援するのもまたよし、『おひねり』や『ばけん』を購入して楽しみながら引退馬支援をするのもいいのではないだろうか。

(了)

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北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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