国内だけでなく、海外でも日本馬が大活躍し、盛り上がりをみせる春競馬に、ワクワクの常石さん。今回はご自身が通っている「びわこみみの里」で取材を敢行したようです。
いよいよ春のGIシーズンがスタートです。競馬場にもお客さんが少しずつ戻ってきて、ワクワクしてきましたね。
先日、第52回高松宮記念(芝1200m)が中京競馬場で行われました。
桜の花が迎えてくれる中、ナランフレグ号、優勝おめでとうございます。
宗像義忠厩舎、丸田恭介騎手ともにGIレース初制覇。ゴールドアリュール産駒も芝GIレース初制覇。初の3重奏が素晴らしく響きました。丸田騎手の必死で涙を拭う姿、やっぱりいいなぁ…。感動です。
▲高松宮記念を優勝した丸田騎手とナランフレグ(C)netkeiba.com
そして、ドバイワールドカップデーも日本馬の素晴らしい活躍があり、26日は眠れない夜になりました。全馬無事に快走してくれて、うれしいです。
そして少し前になりますが、阪神大賞典(芝3000m)を優勝したのは、ディープボンドでしたね。連覇達成おめでとうございます!
ディープボンドは中団の前を進み、外から追走。思わず「わっ君(和田竜二騎手)、行けー!わっ君!」と、テレビの前で叫んでいました。
1番人気に推され、確実に勝利に持ってくることを皆さんはよくご存じでしたね。すごいわ。私にも情報ください。
和田騎手に早速お祝いメッセージ「わっ君、おめでとう。すごいな、めちゃ応援したわ(笑)」
すると和田騎手からは「ありがとう。春の天皇賞、本番でもがんばるわ。応援よろしく。常ちゃんの応援があると頑張れるよ(笑)」と。
同期の活躍は、うれしいです。
新人騎手の皆さんも力を発揮されていますね。顔なじみの騎手もいるのでこれからの活躍が楽しみだな。ファイトー。藤田菜七子騎手もいまは栗東トレーニングセンターに来て調教されているので、取材できる日が楽しみです。
女性騎手4人がそろって調教する様子は華やかでしょうね。もちろん常に危険が伴うので、そんな甘いことは言わず、皆さん真剣に取り組まれていますが。
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私にもちょっといいことがありました。
公益財団法人兵庫県障害者スポーツ協会、スポーツ優秀選手賞の表彰式に参加してきました。
▲スポーツ優秀選手賞の表彰式に参加した常石さん
パラリンピックの出場は叶わなかったけど、障害者乗馬は続けています。
夢をあきらめないでトライしています。このような賞をいただき、感謝と共に次へのエネルギーになりました。
ところで、何で兵庫県? 疑問でしょう…。
私が所属している乗馬クラブは、明石乗馬協会といい、兵庫県明石市にあるんですよね。毎週2時間半かけてレッスンに通っています。
2004年8月に小倉競馬場で落馬し、脳挫傷、クモ膜下血腫、硬膜下血腫等、意識不明の重体で約1か月昏睡状態でした。2007年2月に阪神競馬場にて異例の引退式をしていただき、病院でのリハビリやリハビリ専門の施設など転々としましたが、高次脳機能障害の患者を受け入れてくれる施設は、ありませんでした。
2008年4月、病院や自宅(社宅)をうろうろしているときに、netkeibaの方に声をかけて頂き「トレセンであい馬SHOW」のコラム連載が始まりました。私のたどたどしい取材に応じ、協力していただいた関係者の皆様には本当に感謝しています。恵まれた環境にいることがうれしいです。いまはコラム「日々是好日」とテーマがリニューアルして、続いています。
そんな今月のコラムでは、紹介したい貴重な品があります。
みなさん、ゼッケンバッグってご存知ですか?
私が今通所している障害福祉サービス事業所『びわこみみの里』。社会福祉法人滋賀県聴覚障がい者福祉協会です。守山市水保町にあります。
みみの里では、流通や販売を防ぐために廃棄処分されていた競走馬の使用済み調教用ゼッケンを、きれいに洗ってバッグに加工したものをゼッケンバッグとして商品化し、販売しています。
▲トレセンから回収したゼッケンはこのように汚れているので、きれいに洗います。
ゼッケンの色と番号を生かした、自分だけの1つしかないバッグです。貴重ですよ。
JRAの調教用のゼッケンは丈夫で、馬に負担がかからないように軽く、とっても丁寧に工夫して作られています。色は、2歳は緑、3歳は黒、4歳以上は白です。このゼッケンはペットボトルをリサイクルして作られているそうです。
馬の成長に合わせ毎年10月に交換していますが、勿体ないので何とか商品化されないかと多くの方が考え、ゼッケンバッグを思い立ったそうです。またまたリサイクルなんですね。
▲リサイクルでうまれたゼッケンバッグたち
JRAにとっては、CSR(企業が果たすべき社会的責務)活動として、企業活動が見込めます。
障がい者施設にとっては、商品化すれば働く機会と収益につながります。もちろん福祉としての活動だけではなく、品質とデザイン性をしっかり見て商品化していますよ。
よりクオリティーにこだわり、2009年に『Steed(スティード)』というブランドとして、正式に商品化しました。
ロゴの印刷は、いしずみ作業所。洗濯は若竹作業所。縫製・販売インターネットも含む包装はみみの里。障がい者が分担して、洗う、マジックテープをほどく、縫う…と、障がい者の個性と特技を生かし、さらに他大阪のバッグ会社の協力も得て、チームとして品質向上を目指しています。
▲ゼッケンバッグの縫製の様子を見学する常石さん
トートバッグ、リュックサック、ボディーバッグ、ショルダーバッグなど、種類もたくさんあり、色や数字のデザインからもお好みの商品が選べるので楽しいです。みなさんもぜひ自分だけのオリジナルバッグを見つけてください。
社会貢献事業として栗東観光協会の協力で草津市にある近鉄百貨店に展示即売会や滋賀県内のイベント会場なども協力していただいています。滋賀銀行トレセン前支店でも展示していただきました。
通所するスタッフの個性や特技に合わせて、菓子工房(バームクーヘン・焼き菓子等)や、バッグ、マスク、マスコット人形、畑、リサイクル、ドッグラン…そして聴導犬の訓練もしています。
聴導犬は、耳の不自由な方のために、音を知らせる大切な役割を果たし、生活を共にしています。
聴導犬、盲導犬の他に、介助犬もいるそうです。介助犬は衣服の着脱の手伝いなどをすると聞いて、犬の持つ能力は凄いんだと思いました。
人は、馬や犬などのたくさんの動物に助けられているんですねぇ。私も動物愛護に徹していきたいと思います。
ちなみに、みみの里で私は何をしているのかというと、特技を生かして宣伝活動(所外での販売等)、畑仕事、内職など…模索中です。自宅で出来るアルミ缶集めもしています。
みみの里は聴覚障害者の施設なので、高次脳機能障害を持つ私は、最初はなかなかなじめずに迷惑ばかりかけていました。いまは少し手話を覚え会話もできるようになったので、気持ちが通じ合えた時は嬉しいです。左側の麻痺があるので、最初は手話もキチンとできずになかなか通じなかったですが、頑張って左手を使い「ありがとう」を表現しています。手真似口真似のようにジェスチャーで表現したり、得意の笑顔と笑いでトライです!
B型支援は、福祉就労は年齢を問わず年数も問いません。求める方がいれば受け入れています。就労支援・生活訓練は約2〜3年で卒業を目指します。職員のきめ細かい支援に感謝します。
そんなみみの里でお世話になってもう7年になります。そろそろ卒業を目指していきたいと思いながら、とっても居心地のいいみみの里なので、つい甘えてしまっています。
今回はみみの里の副所長、田中さんに詳しいお話をたくさんお聞きしました。お忙しい中ありがとうございました。
▲副所長の田中さん(右)に取材中…。
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母 落馬後、多くの病院や施設でお世話になりましたが、高次脳機能障害のことが認められず脳損傷と判断。理解してもらえませんでした。5年後にやっと認定されました。
みみの里でお世話になるきっかけは、左手が動くのに使わないから。いつも口うるさく「左手はどこにあるの?」と。末端に神経がいかないので血行も悪く、黒ずんでしもやけにもなっています。自然に使えるといいなと思いつき、手話を覚えていますが、両手を使って表現しないと意味が通じない。
高次脳機能障害は傷めた頭部の箇所により症状が違い、幼稚になるか、乱暴になる症状が出るそうですが、勝義は幼稚な症状が出ています。幼い子どものように、「なんで? どうして? これは?」と質問攻め。首をかしげながら誰にでも声をかける。挨拶をする。
例えばバス停に座っている方に、勝義が「おはようございます」と声をかけると、知らない人から急に言われたことで驚かれ、誤解され、犯罪者扱いされることも多々ありました。でも最近は、少しわかってきてもらえているように思います。
交通事故などで高次脳機能障害を持つ患者が多くなっています。夏・冬のパラリンピックを通して、障害があるとかないとかではなく、人としてどう生きるのか、前を向くしかない強さがあたりまえになる日常を感じました。
時々「障害を持つ息子さんがいて大変ですね」と声をかけていただきますが、息子が大変ではなく、不便なことが多いので困ることがあります。
引退競走馬のイベントや施設訪問の活動も始めました。いまはどこへでも一人で行けるので行動範囲が広くなっています。自分の好きなことや視野が広がり勝義自身の枷になってくれることを願っています。
そして、明日は我が身だと思い、日々健康に気をつけて暮らしたいと思います。
いっぱいいっぱい競馬を楽しんで応援しましょう。
つねかつこと常石勝義&オカン
次回の更新は5/2(火)を予定しています。