堂々とした気配からの順当な勝利
GIタイトルを獲得したダノンスコーピオン(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規
大外18番枠と、4月に移ったアーリントンCが中2週の日程になった2018年以降、この日程は最高が3着。その傾向を反映して4番人気にとどまったダノンスコーピオン(父ロードカナロア)が、中団から抜け出してGIのタイトルを獲得した。
確かに18番枠は有利ではないが、多頭数の激戦で馬群にもまれる不利は少ない。
まして広い東京コース。朝日杯FSを0秒2差3着。高速馬場だったとはいえ、1600m(阪神のアーリントンC)の1分32秒7の持ち時計はNo.1。順当な勝利だったろう。心配された体調は堂々としたパドックの気配、リズム満点の返し馬からまったく問題なかった。前走の差し切り勝ちで自信を深めた川田将雅騎手は、道中なだめて進みつつ、直線は追い出しを待つ余裕があった。これでマイル戦【3-0-1-0】。今回の自身の中身は「58秒0-34秒3」=1分32秒3。レースレベルも低くない。
陣営の明言はないが、6月5日の「安田記念」の定量は4歳以上の牡馬58キロに対し、3歳牡馬は4キロ軽い馬54キロ。秋のマイルチャンピオンシップは、4歳以上馬57キロに対し、3歳馬も56キロ。体調しだいで挑戦の可能性はある。
父ロードカナロアの3歳時はまだ成長の途上で1200m中心だったが、母Lexie Louレキシールー(CAN)はタフなカナダ年度代表馬で、通算24戦10勝。3-4歳時にカナダ、北米のマイル戦を中心に数多く出走している。
外から届いたか、と見えたマテンロウオリオン(父ダイワメジャー)はクビ差2着。
スタートで馬が横を向いていたため、少し出負け気味。そのため後方に控える策に出たのだろう。直線は大外一気。自身の中身は「58秒8-33秒5」=1分32秒3。レース全体のバランスは「45秒6-46秒7」。決して先行馬壊滅の猛ペースではなく、上がり最速の33秒5の追い込みは強烈だった。
ニュージーランドTをステップに、ここに目標を定めた仕上げには少しのスキもなかった。トップマイラーとすると少々すっきり映るので、まだ完成途上の体つきなのだろう。ダイワメジャー産駒のマイルGI(格)勝ちは、アドマイヤマーズの香港マイル、ノーヴァレンダの全日本2歳優駿を含めて全9勝。すべて2-3歳時に限られるという気になる記録はあるが、マテンロウオリオンのファミリーはタフな一族。これからの成長に期待したい。
現地のオッズ最低20番人気のRich Strikeリッチストライク「日本の現3歳牡馬バハルダールの母ラナモン(CAN)の半弟」が勝ったケンタッキーダービーの波乱と呼応するかのように、最低18番人気のカワキタレブリー(父ドレフォン)があわやの3着に突っ込んできた。種牡馬ドレフォンは侮れない。
トウカイテイオーの皐月賞を16番人気で2着したシャコーグレイド。その半弟で1998年の日経賞を単勝35570円で勝ったテンジンショウグンの一族である。そんなことだけで買えない。まして前走、ダノンスコーピオンに1秒0も負けている。今回はマイナス12キロの420キロ。しかし、大穴を生む一族は確かに存在する。東京1600mのGIをまぐれで1分32秒4では乗り切れない。またいつか、がある。
1番人気のセリフォス(父ダイワメジャー)は少し差のある4着。好位のインを追走し、直線は内ラチ沿いに突っ込んだ。外差しも決まる芝だったが、この日、最内を通って粘った馬も複数いたように、ラチ沿いは決して悪くなかった。ただ、坂上から他馬が近くにいず、1頭だけになってしまったのが不運。「58秒0-34秒6」=1分32秒6の中身は、決して凡走ではない。当初からの予定のスケジュールだったと思えるが、4カ月半ぶり。こういう日程がどの馬にも合うわけではないことはある。
右回りだとジュニアCのように外にふくれ気味になるインダストリア(父リオンディーズ)は、ここまで東京芝【1-1-0-0】。さらに、鞍上はD.レーン。期待が高まったのは当然だが、ここまで1600mは1戦して1分34秒9の楽勝のみ。今回は伸び脚一歩だったが、1分32秒7「58秒1-34秒6」で乗り切っている。
半兄のケイデンスコール(父ロードカナロア)は、2019年のこのGIを1分32秒5でアドマイヤマーズの2着。流れは異なるが、ほぼ同じような時計だった。弟には高速の1600mの経験がなかったのが響いた気がする。
5番人気のアルーリングウェイ(父ジャスタウェイ)は、少しも男馬に見劣らない好馬体。動きも鋭かったが、レース前半に馬群の内で揉まれたのが痛い。桜花賞で接触の不利があった牝馬だけに、少し他馬を気にしたかもしれない。