▲5月7日に自厩舎の馬で初勝利を挙げた鷲頭虎太騎手(撮影:大恵陽子)
今年3月にデビューした新人騎手の人となりを履歴書風にご紹介する「わたしの履歴書」。今回は5月7日中京5レースをヤマニンゼストでハナ差勝ちし、初勝利を挙げた鷲頭虎太騎手です。
実家はパン屋さんで、15年間たくさんのパンを食べ続けても細い体を維持できたほど、超絶元気な少年だったといいます。小学校低学年時代は空手の北海道大会で毎年優勝。その後、冬には道路がホワイトアウトする北海道で、函館競馬場まで送り迎えをしてもらいながら乗馬に励み、ジョッキーデビューにたどり着きました。
(取材・構成:大恵陽子)
【出身地】
北海道の七飯町です。函館の近くで、りんごが有名で自然が多いです。高速道路ではたまに鹿を見かけます。
【経歴】
実家がパン屋で、オレンジの皮の入ったパンが大好きでした。照り焼きピザは1人で1枚食べるなど15年間パンをたくさん食べていたのに、この体型って奇跡だなと思います(笑)。食べた分すごく運動していたので、競馬学校に入る時に減量はしていませんでした。
【運動歴・乗馬歴】
両親はパン屋という仕事柄、朝が早いので、夜は18時くらいに就寝だったのですが、幼い頃から元気がありすぎて動きたくてしょうがなくて全然寝ない子だったみたいです。そこで両親が「どうにか体力を消耗させる方法はないか」と探した結果、空手にたどりついたようで、4歳から競馬学校に入るまで習っていました。乗馬に軸足を移すまでは北海道の大会で毎年優勝していました。
乗馬は小学5年生から函館競馬場で始めました。小学4年生の終わりに「騎手になりたい」と僕が言い、ちょうど乗馬スポーツ少年団が募集しているのを親がインターネットで見つけて応募しました。Jドリーマーズという騎手育成チームにも入って、週5日通っていました。
【志望動機】
父が競馬好きで、夏には家族で函館競馬場に遊びに行っていました。ずっと父から「騎手になれ」と言われていて、ある時、オルフェーヴルが圧勝した有馬記念を見て感動して、騎手になりたいと思いました。それからは毎週末、父と一緒にテレビで競馬中継を見ていました。興味を持つと、とことん調べるタイプで、過去のレースをたくさん見るようになって、父と競馬の話ができてすごく楽しかったです。
父はすごく応援してくれていて、「初勝利の写真が欲しい」と届くのを楽しみにしています。千田先生も「初勝利のゼッケンもご両親に渡しなさい」と言ってくださって、送る予定です。
▲オルフェーヴルの有馬記念を見て騎手を目指したという(撮影:大恵陽子)
【趣味・特技】
音楽鑑賞です。ONE OK ROCKが好きで、気分が上がるのでトレーニング中に聴いたり、オフの時間にもよく聴きます。
特技は開脚が180度できることです。昔は体がバッキバキに硬くて90度しか開かなかったのですが、空手をやっている時に父に特訓されて180度にべったり開くようになりました。
【所属先】
千田輝彦厩舎
【所属先の紹介】
千田先生は僕のことをよく見てくださっていて、疑問に思ったことを聞くと丁寧に教えてくださいます。僕には「アメリカンスタイルの騎乗フォームが合っている」と、色々な資料を持ってきてくださり、厩舎実習中から木馬でずっと教えてくださっています。
厩舎スタッフの方々はとても話しやすくて、馬について助手さんがすごく教えてくださいます。
【兄弟子】
竹之下智昭騎手
【兄弟子の紹介】
日曜日に競馬が終わって寮に帰ってくるとアドバイスをいただいたり、お話をよくさせてもらっています。
【自己PR】
現役の競走馬の力や、実際のレースで必要とされる体力に対応できない自分が情けなさすぎて、今は体をケアしながらスタミナに意識を置いてトレーニングをしています。
3月には藤原英昭先生のご厚意で、ドバイでシャフリヤールの調教に乗せていただき、すごくいい経験をさせていただきました。海外に行って「こういう世界があるんだ」と視野が広がりましたし、いつか海外に行く機会ができた時に今回の経験が役に立つと思います。
そうした中、同期がいいペースで勝っていたので、初勝利をまだ挙げられていない自分が情けなくて、早く結果を残したいというのが率直な気持ちでした。だから1着をとった時はまずホッとして、「これからだな」と思いました。でも、ゴールした時は勝ったかどうか分からなくて、ひたすらモニターを見ていたのですが、それを見ている僕の姿がずっと映っているだけでした(笑)。
▲ドバイでシャフリヤールの追い切りに騎乗した様子(C)netkeiba.com
【本人希望記入欄】
千田先生へ
「まだまだ未熟者ですが精一杯精進しますので、よろしくお願いします」
先輩ジョッキーへ
「騎乗面ではまだまだ足りない部分がありますが、先輩ジョッキーの騎乗を勉強して少しでも早く近づけるようがんばります」
実は、初勝利を挙げる数日前にお風呂で古川吉洋騎手と一緒になって、「焦らなくてもいつかは勝つチャンスが巡ってくるから、その時にしっかりとモノにできるよう日々の騎乗を濃くいいものにしなさい」とアドバイスをいただいていました。とても心に刺さって、焦らず頑張ろうと気持ちを切り替えて臨んだ週に初勝利を挙げられました。本当に嬉しかったですし、他にもいろんな先輩方にたくさん教えていただいています。
▲古川吉洋騎手のアドバイスを元に初勝利! (C)netkeiba.com
ファンのみなさんへ
「初勝利におごることなく、これからもどんどん結果を出せるようにがんばるので応援よろしくお願いします。『コタくん』と呼んでもらえると嬉しいです」
■師匠からの推薦文■
ジョッキーとしても人としても、まだまだというレベルです。しっかり精進させますので、一歩ずつ成長できるよう馬主さんや調教師さん、厩舎スタッフの方々に少し追い風を吹かせていただけたらと思います。
まだレースでは先輩ジョッキーの邪魔をしてしまっているので、もう少し落ち着いて乗れるようになればいいと思います。先輩ジョッキーたちに好かれる人間になってほしいです。
▲初勝利を挙げた日の鷲頭騎手と千田調教師(C)netkeiba.com