先週はワンダーブレットとグレアミラージュに騎乗した小牧騎手。どちらの馬も期待十分だっただけに、ガックリと肩を落として帰ってきたとのことですが、「ケガなく乗れているだけでも幸せなこと」と心を持ち直した様子。そう思い直したきっかけは、現在脊髄損傷により療養中の藤井勘一郎騎手とのメールでした。また、唐突に爆弾発言が飛び出した今回の『太論』。小牧騎手のある覚悟が明らかに。(取材・文:不破由妃子)
※このインタビューは電話取材で実施しました。
久しぶりに藤井くんとメールでやり取りをして…
──土曜日(中京2R・3歳未勝利・ダ1400m)のワンダーブレットは4着。いい脚で伸びてきましたが…。
小牧 脚は使ってくれたけど、相手がちょっと強かったね。でも、2着がほしかった…。
──2着馬とはコンマ1秒差でした。
小牧 うん。いつでもチャンスがある馬やと思うけど、なんか歯痒いね。調子がよかったし、チャンスやと思ってたんやけどなぁ。なかなか勝てんわ。1勝するのがこんなに難しいとはね。先週はなんかショックやったわ。グレアミラージュ(中京6R・4歳上1勝クラス・ダ1400m)もダメやったし。折り合いがついて上手いこと乗れていたのに、直線は耳を絞って全然脚を見せんかった。
──耳を絞っていたということは、ご機嫌斜めだったんですね。
小牧 そうなのかな。なんか嫌々走っているような感じで、ちょっとモタれてた。今年7戦目やから、ちょっと疲れがあったかもしれんね。このあとはたぶん放牧に行くでしょう。帰ってきて改めてやね。先週は2頭ともいい競馬をして、日曜日はいい気分でゆっくりするつもりだったのに…。おかげで飲み過ぎたわ。
──やけ酒…。
小牧 いっつもやけ酒や(笑)。まぁケガなく乗れているだけでも幸せやけどね。久しぶりに藤井(勘一郎騎手)くんとメールでやり取りして、改めてそんなことを思ったりして。
──藤井さんのケガの具合はどんな感じですか?
小牧 「どんな具合や? 」ってメールを入れたんやけど、まだ大変みたい。とりあえず半年は、このままできる範囲でリハビリを続けていくって。「暗闇を歩いているような状態です」って返事がきてね。よう言葉を返せんかったわ。ホンマにつらいねぇ。でも頑張ってほしい。いや、一番頑張ってるのは彼やから、頑張っては違うか。メールでしか連絡できんけど、少しずつでも復帰に向けて前に進めるように、これからも応援していこうと思ってる。
彼のことを思ったらね、勝ち負けどうこうより元気やしね、僕は。1頭でも2頭でも乗せてもらっているだけでもありがたいなと思って。このまま一鞍でも多く乗り続けて、元気なまま引退したいわ。
──引退とかサラッと言わないでくださいね、小牧さん。
小牧 今年1勝もできんかったら引退するよ。実際はね、1勝もしないっていうことはないと思っているから、言えるんやけど。でも、ホンマに1勝もせんかったら……。だからみなさん、今まで以上に応援してください(笑)。まぁたとえ0勝で終わっても、もうちょっと続けたいと思えば、あっさり前言撤回するけどね(笑)。厳しいけど、プロの世界はこんなもんやて。そう簡単にはいかん。なにかきっかけがつかめればいいんやけどね。
──では、最後に質問をひとつ。「オークスのサウンドビバーチェは、ラブパイローに蹴られたことが放馬の原因とのことですが、ラブパイローは尻尾に印がついていました。尻尾に印を付けている馬がいる場合、小牧騎手はどういうことに気をつけますか? 小牧騎手は、蹴ったり蹴られたりした経験はありますか? 」
小牧 僕は尻尾に印が付いている馬には近寄らへんし、付いていない馬であっても、蹴られる位置にはいない。それでも寄ってくる馬はどうしようもないけどね。
──輪乗りのときなど、近寄らないということがなかなか難しくないですか?
小牧 それでもみんな蹴られんように細心の注意を払ってるよ。いつでも逃げられるように、というかね。そうやって注意しているから、みんな蹴られへんねん。普通に回っていたら、簡単に蹴られるよ。とにかく気をつけておかなアカンねん。最低限のことや、それはね。
──印が付いている馬って、けっこう多いですよね。
小牧 多いね。蹴られんまでも、よう尻っぱねしてるでしょ。レースに行ったら、ジョッキーは馬場に出てから落馬せんことが第一。放馬させたら、もうそれでお終いでしょう。僕もあるやん、東京で。
──クラレントの東京スポーツ杯2歳Sですね。
小牧 レースには出られたけど、あのときはショックやったもん。いまだに落ちた瞬間のことを覚えてるわ。それくらいショックやった。オークスの細かい状況はわからんし、どうしようもないこともあるけど、とにかく油断しちゃアカンね。
──蹴ったり蹴られたりした経験はありましたっけ?
小牧 あるよ。天皇賞(秋)の前の日に京都で乗ってたんやけど、鞍を外すときに蹴られたことがあった。あのときは3針縫ったんかな。で、次の日は天皇賞でローゼンクロイツに乗る予定やったんやけど、東京に行くのをやめたんやわ。あのときはね、けっこう離れて立っていたつもりなのに、馬の脚が届いてしまって。ただでさえ馬力がある上に轍を履いてるから、ちょっと蹴られただけでもそうなるねん。