先週の血統ピックアップ
・5/29 日本ダービー(GI・東京・芝2400m)
後方を追走したドウデュースが直線で外から抜け出し、イクイノックスの追撃をクビ差抑えて3歳馬の頂点に立ちました。
勝ちタイムの2分21秒9は昨年の2分22秒5を更新するダービーレコード。
父ハーツクライにとっては2014年のワンアンドオンリーに次ぐ2頭目のダービー馬で、朝日杯フューチュリティSの優勝馬が制覇したのは1993年のナリタブライアン以来29年ぶりです。
母ダストアンドダイヤモンズは現役時代、ダート6.5ハロンの米G2を勝ち、ブリーダーズCフィリー&メアスプリント(米G1・ダート7ハロン)で2着となりました。ハーツクライ自身はスタミナに恵まれているので、母が短距離タイプ、という配合パターンは成功しています。バランスが取れてちょうどいい、というわけです。
これまでにクラシックを勝ったワンアンドオンリーとヌーヴォレコルト(オークス)や、今週の安田記念で上位人気に推されそうなイルーシヴパンサー(東京新聞杯)もそうです。
母の父ヴィンディケーションはブリーダーズCジュヴェナイル(米G1・ダート9ハロン)の勝ち馬で、中距離向きの適性がありました。脚質はシアトルスルー系らしい先行タイプで、これは娘のダストアンドダイヤモンズも同じでした。
にもかかわらず、ドウデュースは芝向きの素晴らしい切れ味を備えています。このあたりは遺伝の不思議といえるでしょう。5月生まれのダービー馬は2012年のディープブリランテ以来10年ぶりです。
・5/28 葵S(GIII・中京・芝1200m)
中団を追走したウインマーベルが楽々と抜け出し、後続に2馬身半差をつけました。他馬よりも1kg重い別定重量(57kg)を背負いながらこの着差ですから、内容的に高く評価できます。函館2歳Sで2着となったウインジェルベーラの全弟。
母コスモマーベラスは愛知杯2着馬です。アイルハヴアナザー産駒は、ダートの勝ち星が芝の3倍以上あるので、地方競馬で多くの重賞勝ち馬を出しており、JRAでこれまでに獲得した重賞もダートのアンタレスS(勝ち馬アナザートゥルース)です。芝の重賞は今回初制覇となります。
「アイルハヴアナザー×フジキセキ」の組み合わせは、出走12頭中9頭が勝ち上がり、レース前の段階で連対率32.1%、1走あたりの賞金額350万円。アイルハヴアナザー産駒全体は連対率13.8%、1走あたり107万円なので明かなニックスといえるでしょう。
アナザートゥルースもこの組み合わせから誕生しています。5月8日生まれなので、まだまだ伸びしろがあるはずです。
今週の血統注目馬は?
・6/4 由比ヶ浜特別(2勝クラス・東京・芝1400m)
東京芝1400mに強い種牡馬はロードカナロア。2012年以降、当コースで産駒が20走以上した107頭の種牡馬のなかで、連対率26.3%は第2位。
当レースには産駒のキミワクイーン、ソウテン、メイショウゲンセンの3頭が登録しています。
注目は3歳勢のキミワクイーンとソウテン。前者はフィリーズレビュー7着馬で、後者は1勝クラスを勝ち上がってここに臨みます。過去10年間に3歳馬が5勝を挙げているレースなので期待できます。
今週の血統Tips
今週行われる安田記念は、安田伊左衛門(1872-1958)を記念して創設されました。彼は足掛け16年にわたる馬券禁止時代を終わらせて日本競馬を救い、東京競馬場の用地を選定して目黒競馬場から移転させ、東京優駿(日本ダービー)を創設するなどクラシック体系を築き、晩年には日本中央競馬会の初代理事長に就任するなど、まさに「日本競馬の父」と呼ぶにふさわしい偉大な業績を残しました。
東京競馬場のオッズ板の脇に、パドックを眺めるように彼の胸像が置かれています。人間味あふれる人物だったようで、さまざまなエピソードが伝わっています。大食漢だった、というのもそのひとつ。肉料理を12人前たいらげた、という目撃談があります。大福が好物で、食事が終わったあとにいくらでも食べてしまうとか、調教を見学したあと、知り合いの厩舎に寄って朝食をごちそうになると際限なく食べ続けるのでおかみさんが閉口した、といった話もあります。
今年は生誕150周年なので、安田記念は「安田伊左衛門生誕150周年記念」という副題がつきます。彼がいなければ日本競馬の繁栄はありませんでした。競馬そのものが存続していなかったかもしれません。
東京競馬場へ行った折、胸像を眺めつつ心の中で手を合わせたとしてもバチは当たらないでしょう。