牝馬唯一の出走となるフェアリーポルカに注目したい(c)netkeiba.com
前週、第58回の開催となった七夕賞と並んで、同じく第58回目の開催を迎える函館記念。七夕賞と同じくハンデ戦での芝2000m、この並びが続くと本格的な夏の到来を感じますね。中央主場とはメンバーもコースも違う、ローカル開催のハンデ戦は能力以上に適性が重要。
単純な能力比較だけでは判断できない難しさが際立つ場面ですが、適性予想を掲げる者としては是が非でも盲点を突くような予想見解を披露したいところでもあります。
■サンレイポケット
昨年の天皇賞(秋)殊勲の4着から、ジャパンカップ4着、京都記念3着など、GI、GIIで安定して走れている馬です。今回はローカル開催でのGIIIということで、今までより圧倒的に楽なメンバー構成、2つ目の重賞勝ちに大きな期待がかかる場面でしょう。
しかしその天皇賞(秋)にしても、その前の重賞勝ち・新潟大賞典にしても、瞬発力が生きる流れでの好走ではありました。直線の短いローカル初参戦となる同馬ですが、ローカルでの厳しい流れは向かない可能性も考えられます。
■マイネルウィルトス
不良馬場の2021年福島民報杯(新潟外回り芝2000m・オープン特別)を大差で圧勝したあと、GIIのアルゼンチン共和国杯や目黒記念(共に東京芝2500m・良馬場)でも2着に好走し、単なる重馬場巧者ではないことを証明しています。
しかしこの函館記念は、前年にも福島民報杯勝ち直後に参戦し、特に見せ場もなく8着。東京の長距離GIIでの好走にしてもローカル重賞での利点に結びつくようなものではなく、この馬が持つイメージほどに得意なコースとは言えないかも知れません。
■スカーフェイス
晩成傾向のスカーフェイスは派手な連勝こそないものの、地道な努力で末脚に磨きをかけ続け、ついに前走は大阪杯での上がり最速。GIで6着の好走を見せ、重賞戦線でも注目の存在になってきました。ただ、脚質的には後方一手。この函館記念は意外と追い込みの利かないレースで、1986年以降の過去32年、4コーナーを10番手以下で回った馬は延べ166戦【0-2-2-162】。
同グループの成績が延べ136戦【1-6-4-125】の七夕賞をもはるかに下回り、ここでも末脚にすべてを賭けるのか、それともレース傾向を気にしてポジションを取りに行くのか、陣営の判断が気になるところです。
■アラタ
昨年夏には1勝クラスから2勝クラス、3勝クラスとオープン特別の4連勝。遅れてきた大物ではないかと一時期は話題にもなりました。その後連勝の勢いは途絶えたものの、強い相手に差のない競馬は続いており、引き続き人気を集めることになるでしょう。函館競馬場は2戦2勝であり、その辺りもセールスポイントになってくるかもしれません。
■フェアリーポルカ
今年の函館記念に出走を予定している唯一の牝馬、“夏は牝馬”の格言からも注目に値する1頭だと思われます。この函館記念にしても格言通り牝馬の好走率は高いのですが、過去に函館記念を好走した牝馬のほとんどは、それ以前にも牡馬を相手にしてきた馬たちでした。
ここまで22戦中18戦が牝馬限定戦という戦績のフェアリーポルカは、それを割引材料とするべきか否か、ここがひとつ思案のしどころになりますね。
ウマい馬券では、ここから更に踏み込んで函館記念を解析していきます。印の列挙ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論にぜひご注目ください。
■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、『ラップギア』と『瞬発指数』を構築し、発表。2008年、単行本『タイム理論の新革命・ラップギア』の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。『ラップギア』は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。