▲コメント力の秘密は幼少期にあった(撮影:桂伸也)
重賞初騎乗初制覇を果たし、勝ち星でも同期トップを走るなど注目を集める今村聖奈騎手。短期連載「エモーショナル」では彼女の生い立ちから現在の思考まで、徹底解明します。
第2回のテーマは「ジョッキーを目指すまでの歩みと、コメント力」について。重賞初制覇となったCBC賞の勝利騎手インタビューで「本来であれば、国分恭介さんがずっと丁寧に調教をつけてくださった馬で、斤量の関係でたまたま私が乗せていただくことに」と、ハンデの関係で騎乗が叶わなかった主戦騎手への言葉が出るなど、18歳とは思えないコメント力にはたびたび唸らされます。
その根底にあるのは、幼い頃から競馬が大好きだったからこそ自然と身についた視点。そして、メディアを通してファンに少しでも、馬のことを伝えたいという強い思いがありました。
(取材・構成=大恵陽子)
「騎手になる」と言った時、父は反対していました
ジョッキーをしていた父(今村康成調教助手)がよく小倉に滞在していたので、家族でウィークリーマンションを借りて一緒に行っていました。平日の朝から競馬場に調教を見に行って、ナタデココジュースを飲みながら、馬場保全の方に「あそこで乗っているのがお父さんです!」と話していました。多くの厩務員さんにも声をかけてもらいました。
土日になると競馬場に行って、1レースから12レースまでひたすらパドックと馬場を行き来していました。父がレースに乗っていたら母や妹たちも来るんですけど、私はそれが終わっても1人でずっと残っていました。
とにかく馬が好きで、馬に乗るのがすごく好きで、「馬に携わる仕事をしたい」と思っていました。栗東トレセンの乗馬苑で小学5年生から乗馬を習っていたのですが、中学校1年生ぐらいの時に転勤で新しい先生が来られて、「選択肢を2つあげる。ジョッキーになるか、馬術の道でご飯を食べるか、どちらか選びなさい。それによって教え方を変えるから」と言われました。
ジョッキーになるなら、女性で足りない筋力もあるからみんなと同じようにやるし、馬術なら馬と向き合う競技だから、また違うやり方を勧めると言われて。半日ぐらい考えたのかな? 乗馬も大好きだし障害を飛ぶのも好きだけど、競馬も好きだし、「どっちなんだろう?」と。