▲競走馬へのアプローチ方法を語る(撮影:桂伸也)
今村聖奈騎手の生い立ちから現在の思考まで徹底解明する短期連載「エモーショナル」。第1回では重賞初騎乗初制覇となったCBC賞について詳しく振り返っていただきましたが、そこで発せられたのが「テイエムスパーダとお友達になれればいいなと思いました」という言葉。
「馬と友達になる」とは、どういうことなのでしょうか? 小さい頃から馬に親しんできた今村騎手ならではの「競走馬」へのアプローチが見えてきます。
(取材・構成=大恵陽子)
「走るの嫌やんな。私も走るのめっちゃ嫌いやねん」
小さい頃から「馬の1馬力には敵わない」と教えられてきたこともあり、馬には寄り添うようにしています。
ホースマンにはいろんなタイプの人がいると思うのですが、父が所属する飯田祐史厩舎によくついて行っていた頃、「この厩務員さんは牝馬が得意なのは何でだろう?」と考えることがありました。すると、父が「この人は優しいから、牝馬がうまいね」と。
同じ馬でも、感情的になる人が乗ると、馬は常にピリピリして苦しがるけど、人が冷静になって馬を落ち着かせて、友達になるように寄り添いながら乗る人を見ると、馬も納得してくれているように感じます。
馬は生き物でそれぞれ性格も違うので、担当されている方に性格を聞きますし、実際に跨った時のフィーリングで決める部分もあります。
跨った瞬間に「我が強すぎるだろう」という馬もいて…もうね、意思を曲げないんですよ(笑)。こちらが左に行きたいって言っているのに、「私は右に行くっ!」って。けど、そこで強引にするのではなくて、ちょっと待って馬に考えさせる時間を作って、馬が「あ、左に行ってもいいかな」と思った時に、ちょっと心を開いてくれたかなって感じます。
そういう時、ふっと力が抜けるのを背中で感じます。声をかけることでそうなる馬もいて、私は馬によく喋りかけます。走るのが嫌いな馬には「走るの嫌やんな。私も走るのめっちゃ嫌いやねん」とか、気負っている馬には「そんなに頑張りすぎんでいいよ。自分が疲れるから」って。
こうやってだんだん心を開いてくれて、寄り添ってきてくれた時に「馬と少し友達になれたかな」って思います。