マイル重賞勝ちの経験を持つイルーシヴパンサー(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規
真夏のマイル決戦、関屋記念。新潟競馬場外回りの直線は約659m。向こう正面の直線距離も550mほどあり、都合1200m、75%以上が直線で構成されるコース。そのせいか毎年のように速い時計での決着が続いており、それに対応できる頑強さが求められるレースとなっています。
“頑強なスピード”と言えばGI・安田記念にも通ずるものがあり、同年の安田記念を使われた馬の好走が目立つレースとも言えるでしょう。安田記念での着順問わず、このパターンの勝ち馬を挙げるだけでも、ざっと7頭。コース改修の2001年以降、延べ出走頭数30頭で【7-3-3-17】、勝率23%、単勝回収率278%の好成績となっているのです。
しかし“安田記念出走馬が良い”という事実でとどまらず、“安田記念に出走できるような馬が良いのではないか”と考えた場合どうでしょう。もう一歩思考を進めてみたほうが、考え方の幅を広げられるのかもしれません。下の表は2001年以降の関屋記念勝ち馬一覧で、該当年の 関屋記念以前に 1600m以上の重賞を勝っていた馬には○、1600m以上の重賞勝ちがなかった馬には×を付けてみました。
■関屋記念勝ち馬一覧
2001年 マグナーテン ×
2002年 マグナーテン ○
2003年 オースミコスモ ×
2004年 ブルーイレヴン ○
2005年 サイドワインダー ○
2006年 カンファーベスト ○
2007年 カンパニー ○
2008年 マルカシェンク ○
2009年 スマイルジャック ○
2010年 レッツゴーキリシマ ×
2011年 レインボーペガサス ○
2012年 ドナウブルー ○
2013年 レッドスパーダ ○
2014年 クラレント ○
2015年 レッドアリオン ○
2016年 ヤングマンパワー ○
2017年 マルターズアポジー ○
2018年 プリモシーン ○
2019年 ミッキーグローリー ○
2020年 サトノアーサー ○
2021年 ロータスランド ×
2001年以降、1600m以上重賞勝ち馬は 延べ112戦17勝、勝率15%の単勝回収141%。それに対して1600m以上重賞未勝利馬は 延べ221戦4勝、勝率2%の単勝回収37%。これほどの差が見えているなら、今年もこの“重賞勝ち経験組”を重視していくべきなのではないでしょうか。ちなみに今年の関屋記念・出走馬で、1600m以上の重賞に勝ち鞍を持つ馬は イルーシヴパンサー、ザダル、ダノンザキッドとリアアメリアの4頭だけという状態です。
闇雲にデータだけを見るのではなく、まずは仮説を立てて、そこから裏付けとしてのデータ・リサーチ。ウマい馬券では、ここから更に踏み込んで関屋記念を解析していきます。印の列挙ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論に ぜひご注目ください。
■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、『ラップギア』と『瞬発指数』を構築し、発表。2008年、単行本『タイム理論の新革命・ラップギア』の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。『ラップギア』は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。